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【シネマモード】60年以上の時を超えたロマンス…『フランス組曲』

シネマカフェ1月13日(水)21時0分
画像:『フランス組曲』 Photo:Steffan Hill (C) 2014 SUITE DISTRIBUTION LIMITED
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『フランス組曲』 Photo:Steffan Hill (C) 2014 SUITE DISTRIBUTION LIMITED
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初恋、片恋、悲恋、愛恋…。恋にもいろいろありますが、やはり最も燃えあがるのは禁断の恋。ご紹介する『フランス組曲』は、第二次世界大戦中、ドイツ占領下のフランスで、出兵した夫の帰還を待つフランス人女性リュシルと、作曲家のドイツ軍中尉ブルーノ・フォン・ファルクの恋を描いた、美しい作品です。

物語は、主人公二人が奏でる“禁断”のロマンスを、中尉が生み出す美しい旋律に乗せて描き出していて、もちろんそこも注目なのですが、本作の軸にあるのは、人間の在り様。ロマンスとは、文化や身分の違い、国籍や立場を乗り超えて、人は理解し合えるという可能性を証明する現象のひとつ。人の心と心が奥底から通じ合うときに、“禁断”などという概念は無意味だと感じられるのが、本作の魅力なのです。人間がどんな状況にあっても愛を信じられること、誰もが同じ人間であること、どんな隔たりをも超えて好意を交わせることができることを強調している物語だからこそ、二人をつい応援したくなるのです。

誰かに好意を抱くという素晴らしいことさえ、理不尽な尺度を用いて断罪することの愚かさといったら。それを強く感じさせるのが、敵も味方も関係なく、危機的な状況にこそ見えてくる人の本性を冷静に描写している細部。戦争中は弱者として描かれがちなフランス人たちが、ドイツ軍に隣人を密告したり、ドイツ軍人に媚を売ったり、食料を他者に内緒で必要以上に備蓄したり。もともと白黒つけられないのが人間というものですが、戦争という強者と弱者、勝者と敗者、善きものと悪しき者、敵と味方というラインを無理やり引こうとする行為の果てにある、矛盾が浮き彫りになるわけです。

物語が持つこの力強さは、原作者のイレーヌ・ネミロフスキーが、本作をドイツ占領下のフランスで書き続けていたという背景にも由来しています。彼女は、ドイツ軍から自らが実際に迫害を受けアウシュヴィッツで亡くなったユダヤ人作家でした。自らが受けた迫害をものともせず、人を信じ続けようとしたその精神には胸を打たれるばかり。劇中のさまざまなエピソードがとてもリアルなのも、彼女は実際に見たことを、後に忘れ去れないようにとつぶさに記録し、冷静に物語に反映させているからなのです。

作者は、あえてヒロインが好意を持つ紳士的なドイツ人を冷静に公正に描写することで、ドイツ軍のすべてを悪、フランス=すべて善(弱者の総てを善)とした方程式を否定し、人間性だけを見つめた物語を綴りました。その純粋な視点と心の強さが、二人の恋を比類なき人間ドラマへと昇華させているのです。この作品を観ていると、人間の本性を浮き彫りにするには、禁断の恋が最も適した題材だったのだろうと納得できるはずです。

とにかくパワフルな本作ですが、ファッションにもぜひご注目を。戦時下でも女性たちはきちんと装っていたことなどがわかりますし、TPOに合わせて、違うタイプの服を用いていたこともよく分かります。例えば、日常的には様々な色と柄のフラワーモチーフワンピースを着用し、ちょっとした活動の際はさっぱりとしたシャツにタイト&フレアなロングスカートを着ているリュシルですが、中尉への恋心を意識し家で密会する際には、真っ赤な口紅をひき、深紅のワンピースを身に纏います。リュシルの覚悟と押さえきれない女心が切なくも印象的なシーンでした。

映画の元になった原稿は、作家の死後、60年以上も娘に託され保管されていましたが、2004年にようやく出版されました。いまや全世界で350万部以上の売り上げを誇る大ベストセラーに。60年以上も秘められていた二人の恋に、ドキドキしてください。
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