小籔千豊 「芸人がテレビでやったらアカンこと」を解説する

1月13日(水)7時0分 NEWSポストセブン

吉本新喜劇・座長の小籔千豊

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 イキる、とは調子に乗る、勢いづく、威張る、偉そうにするなどの意味。吉本新喜劇・座長の小籔千豊(こやぶ・かずとよ)は「イキる奴」が嫌いだという。その小籔が、テレビの「タブー」について語った。


 * * *

「最近のテレビはつまらなくなった」、「表現が弱腰だ」とのご意見を耳にします。時には「出演者は何らかの圧力をかけられてるんじゃないか」とタブーや闇の秘密結社の力も囁かれることもあります。


 期待を裏切って悪いんですが、テレビに出ている芸人として僕はそういったものを感じたことはありません。


 たしかに、昔の芸人は博打して借金漬けになったとか、女遊びして愛人同士がはち合わせしたとか、ケンカして相手をボッコボコにした、ある芸人さんは映画『スーパーマン』がやってる時に裸に赤いマントだけで舞台に登場したとか。昔の芸人さんはおもろく破天荒な話が多いですね。


 だからというのもあって大阪のオッサンなんかには「昔の芸人はムチャクチャやっとった。今の芸人はおもろないんじゃ。お前らヌルいぞ、もっとムチャせえ」とかホンマよく言われます。


 でもですよ、オッサンちょっと待って。今の時代、僕が街で誰かをボッコボコにしばいたり、ムチャクチャしたら、ホンマに芸人として認めてくれますか? 笑ってくれますか? むしろ絶対「小籔は酒飲んでケンカして最低やな。もうテレビ出んな!」とか言うでしょ? そんなん僕らはどうしたらええの?


 僕も芸人になる前は、特に吉本はそんなムチャクチャな人たちの巣窟だと思ってました。でも僕が入った時には、あの吉本が「バクチすんな」「借金すんな」「女遊びすんな」「街でケンカなんてもってのほか」と品行方正に生きろと言うんですよ。


 借金踏み倒したり、街の人をボッコボコにするのがアカンことなのは昔も今も変わらないから、やる側も見る側も許容する範囲が変わってきてるということなのでしょう。


「お笑い界のタブー」、しいて言えばお笑い芸人が政治の話をするのは基本的にタブーのような気がします。思想に関係なく大衆側に立った「風刺」ネタはいつの時代でもすごく受けます。でも、僕みたいな「アホな『芸人』が政治を『語る』」のはアカンことなのです。


 芸人が政治を語ることには、リスクが2つあります。


 ひとつは、僕がおもろいとか否かの前に、政治思想的な違いで「こいつわかってない、嫌いやな」と思われたら本分のお笑いでも笑いが取れなくなり、かなり大きなマイナスです。もうひとつは逆に「小籔の言う通りや、こいつよう勉強していて賢いな」と思われてもマイナスで、これも次の時に笑かしにくくなる。


 以前、民主党政権時代に大阪の番組で中国の漁船衝突事件の対応について、仙谷(由人)官房長官のことをボロカスに言うたんです。そしたらある時、大阪のスナックで知らんオッサンに「お前、テレビでエラそうに政治のこと言うてんな。


 だいたい仙谷官房長官に会うたことあんのか!」と言われてビックリしました。というか、そのオッサンも仙谷さんに会うたことないやろし、逆に会うたことあれば言ってええんか? そもそも俺のことよう知らんアンタが俺のことボロカス言うのはええんか? とかいろいろ思いました(笑)。


 それでも僕は、一芸人である前に一国民として政治については「甘噛み」せずに言っていこうと思います。ひいてはそれが日本のため、孫の孫の孫の代でも素敵な日本でいてほしいからです。僕が言うことでせめて「なんかずいぶん小籔が吠えとるけど、なになに?」と女子高生が5人でも関心を持ってくれたらいいですね。


 一流の芸人であれば、政治のことなど言わなくても一流の笑いを届けるだけで日本のためになるんでしょうね。いつか僕が一流になったら政治の話やめますわ。……ほな、一生せなアカンがな(笑)。

 

【PROFILE】1973年、大阪府生まれ。2006年吉本新喜劇の座長に就任。多数のレギュラー番組出演のほか、1月からはドラマ『マネーの天使〜あなたのお金、取り戻します!〜』(日本テレビ系)で主演を務める。


※SAPIO2016年2月号

NEWSポストセブン

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