冬ドラ 金曜テレ東の山田孝之と日曜NHKの鈴木京香に期待感

1月14日(水)16時0分 NEWSポストセブン

 ドラマが始まるこのタイミング、今期はどれを見るかと目移りしがちだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が注目の2作を挙げた。


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 ハンバーグから、人の歯が出てきた。かと思えば、大学のキャンパスでは恋人に衣服をはぎ取られた全裸の男性教員が出現。まさか、という出来事が、次々に現実の中で起こる。「ドラマの時代」と言われても、ちょっとやそっとのフィクションでは、この現実の迫力に負けてしまいそうです。


 冬ドラマがスタートするこの時期。そうした刺激的現実の中で、視聴者が「見続けたい」と思うドラマを作り続けるのはたいへんな努力を要するのでは−−と、制作陣のご苦労を察します。しかし、そうした刺激的な現実に対抗しようとして、ドラマの刺激をただ強めたり派手なフィクションにすればいい、というものではない。過度のドタバタやグロやおふざけは、ドラマの面白さを深めていく手法にはなかなかなりえない。


 思い返せばちょうど1年前。冬ドラマ「明日、ママがいない」(日テレ)の過激な台詞や舞台設定に、抗議が殺到しスポンサーがCMを取りやめるなど社会問題になったことは記憶に新しい。当コーナー「山下柚実 最新ドラマ時評」でも批評しましたが、テレビが刺激を志向すれば話題になる、といった時代ではもはやないということの、実例でしょう。


 今、ドラマの現場では制作陣が必死に独自のアイディアをひねり出したり、趣向を凝らしたりしている。そうした努力がヒシヒシと伝わってくるドラマが、1月9日に始まった「山田孝之の東京都北区赤羽」(テレビ東京金曜深夜)。


 何とも言えない不思議なタッチ。「連続ドキュメンタリードラマ」と銘打たれたその中身は……時代劇映画の撮影中に極度のスランプに陥った俳優・山田孝之の姿から始まる。山田はそのトランプから抜けだそうともがく。「ウヒョッ!東京都北区赤羽」(清野とおる著)という漫画に刺激を受けたと、実際に赤羽へ行き、漫画家・清野氏や赤羽の住人たちと交流していく……。


 街が舞台の、ドキュメンタリータッチ。しかし、どこか「虚構」じみている。いったいどこからがお芝居で、どこからがドキュメント? と探りたくなる。まさしく、リアルとフィクションの「あわい」がテーマであり、それを遊ぶ意欲作らしい。始まったばかりでまだ全体像はよくわからないけれど、少なくとも、ドラマという枠組みに対してとことん「ねらい」を持ちこみ、「趣向」を凝らそうと挑戦しているあたり、期待が持てます。


 もう一つ、チャレンジングなドラマが始まりました。1月11日にスタートした「だから荒野」(NHK日曜午後10時)。最初は、NHKお得意の「アラフォー女性」を狙った、いかにもドラマかなと思った。日常に疑問を抱いてしまった一主婦が、別の人生を模索して旅に出て……云々。


 ところがこのドラマ、そんな風合いをまといつつも、実は破壊的。ハチャメチャ。シリアスドラマというよりも、ハジケていたのです。主人公は、家族と家庭を一瞬にして捨て去ることを決める。葛藤は無い。ヒッチハイクで東京から九州まで逃げる。今どき、ありえない。私に言わせれば、現実性とかリアリティという枠組みをあっさりと捨て去った、中年「ファンタジー」ドラマです。


 ズブ濡れになり、水たまりの中で仁王立ちする鈴木京香がいい。ラヴェルの「ボレロ」がBGMに流れる。ご存じ「ボレロ」とは、同じリズムが延々と繰り返し、リズムと音量が次第に勢いを増していく、あの名曲です。リズムがどんどん早くなって高揚していく中で、鈴木京香はズブ濡れ状態で両手を広げて天を仰いだまま。その姿はコミカル。ふと、笑いが漏れてしまう。シリアスな現実を、突き放している。


「小さなリアリティに足をとられることなく、人間の生き様の劇的な変化と気持ちの高まりを自由に描くのだ」という高らかな宣言として、「ボレロ」が耳に響いてきました。独特の「ねらい」と「趣向」が、このドラマにも仕込まれていそうです。


 ちなみに、「ファンタジー」の定義とは−−「現実とは別の世界・時代などの舞台設定や、超自然的存在や生命体などといった登場人物の不可思議さに、物語の魅力を求めたもの」(ブリタニカ国際大百科事典)。不可思議とは言っても、荒唐無稽とは違います。奇妙だからこそ説得力が増す「リアル」というものも、あるのです。


 いよいよ、冬ドラマが一斉に始まる時期。それぞれが、どんな「ねらい」や「趣向」を見せてくれるのか。その点こそ、今期ドラマの人気の分かれ目になるのではないでしょうか。

NEWSポストセブン

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