菅官房長官に大臣らは不満持つが睨まれること怖れ意見できず

1月14日(木)7時0分 NEWSポストセブン

 菅義偉・官房長官は、その絶大な権力から「影の総理」と呼ばれてきた。しかしいまや、その言い方は適切とはいえない。もはや安倍首相こそが、「官房長官の影」なのだ。国民の気づかないうちに、官邸のパワーバランスは完全に逆転した。


 菅氏は昨年10月、グアムを訪問し、米太平洋海兵隊司令官と会談した。本来、政府の危機管理の責任者でもある官房長官は「留守居役」であり、一朝事あればすぐに官邸で指揮をとらなければならないことから、外遊はもちろん、選挙応援のための地方遊説さえ原則行かないものとされている。


 しかし、菅氏は橋本内閣の官房長官として普天間米軍基地返還の日米合意を結んだ故・梶山静六氏を「政治の師」と仰ぎ、師の悲願を自分の手で成し遂げることをライフワークにしている。そのため安倍政権では、沖縄の米軍基地移設に関しては首相でも外相や防衛相でもなく、菅氏主導で反対派の翁長雄志・沖縄県知事との交渉にあたっている。


 グアム視察はその一環で行なわれたものだ。このとき、「留守居役が留守」の官邸で珍しい光景が出現した。


 政府の最高意思決定機関である閣議は首相が決裁役で、官房長官が議事進行役を務める。だが、菅氏の外遊中に開催された閣議(10月30日)は、他の大臣ではなく安倍首相が自ら議事進行役を代行したのだ。19年ぶりの“異例事態”だった。


「小泉内閣で1年間官房長官を務めた安倍首相は進行役には慣れている」


 そう説明されたが、日米安保にかかわる課題で菅官房長官が訪米し、外遊好きの安倍首相が留守居役を務めたのだから“菅首相、安倍官房長官”という役割の逆転だ。さすがに自民党内には、「菅さんは将来の総理の座をにらんで、“ネクストバッターボックスには、私がバットを持って待機しています”と米国にアピールするためにグアムに行った」(外交族議員)という見方が流れた。


 この沖縄の基地移設問題は菅氏にとって軽減税率問題以上に真価が問われるテーマといっていい。それだけにより強引なアメとムチの手法を発揮している。


 アメは大規模テーマパークだ。菅氏はこれまで沖縄へのユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のテーマパークの誘致に力を入れ、本部町や名護市が具体的な候補にあがっている。そこに割り込むように今年1月24日投票の宜野湾市長選を前に、普天間基地の跡地に「ディズニー・リゾート」誘致構想が急浮上、菅氏はこちらも「政府として支援をできることはしっかり支援していきたい」と後押しした。


 政府がテコ入れして沖縄に2つの世界的テーマパークを誘致するなど、リップサービスにしても大風呂敷過ぎる。


 一方で、反対派には容赦なくムチを振るう。辺野古の基地予定地の埋め立て承認を取り消した翁長知事を相手に法廷闘争を展開し、来年度予算編成で「沖縄振興予算の減額」をちらつかせて揺さぶった。自民党閣僚経験者が「絶対オレが喋ったとわからないようにしてくれ」と念押しして語る。


「菅さんは軽減税率や沖縄の予算だけでなく、埋め立て承認取り消しの法廷闘争などでも役所に圧力をかけ、関係部局は相当怒鳴られた。それほどの力を持つと、役人は怖がるだけではなく、官房長官に擦り寄って、上司の大臣より菅さんのいうことを聞くようになる。各省の局長クラスはいまや総理より菅さんの顔色を窺っている。


 関西の議員は大阪ダブル選挙でおおさか維新を支持した菅さんに不信感を持ち、軽減税率では公明党案丸のみして党執行部が蔑ろにされた。大臣たちには不満がたまっている。それなのに誰も表だって意見できないのは、総理より菅さんに睨まれるのが怖いからです」


 まさに下剋上の「菅独裁」である。党内にはいま、“戒厳令”が敷かれているといっても過言ではない重い空気がたちこめている。


※週刊ポスト2016年1月15・22日号

NEWSポストセブン

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