柴俊夫が倉本聰氏の合宿で学んだ大切なこと

1月14日(日)7時0分 NEWSポストセブン

柴俊夫が倉本聰から学んだものは

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 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、『やすらぎの郷』に出演した柴俊夫が、30年以上前に倉本聰ドラマに出演したとき、倉本による合宿に参加した思い出について話した言葉を紹介する。


 * * *

 柴俊夫は1983年、渡哲也主演のテレビシリーズ『西部警察PART—III』に「タイショー」こと山県刑事役で出演した。


「渡さんに『荒唐無稽の番組ですが、ひとつ協力してください』と言われて出ることにしました。


 撮影初日から物凄い量の火薬が使われて運転したり拳銃を撃ったりするものだから、芝居どころではなかったです。僕はアクション俳優でないから、そういう現場ってあまり知らなかったんです。でも、こういう純粋に楽しませる作品というのも大事だと思って、楽しみました。


 石原プロって体育会系のイメージがあるので、渡さんに『柴』とか『柴君』とか呼ばれるのかと思ったのですが、『柴さん』なんですよ。ですから、僕もたとえ年下でも出ている連中はみんな『さん』付けで呼びました。『舘さん』『峰さん』って」


 倉本聰のドラマには1975年の『6羽のかもめ』(フジテレビ)や1982年の『君は海を見たか』(フジテレビ)などに出演した。


「『君は海を見たか』では倉本先生が合宿をしたんです。ショーケンと僕と関根恵子(当時)と伊藤蘭とかを集めて。その時に自分たちでワンシーンの芝居を作るという課題を出されまして。


 僕が居酒屋の主人をやってそこにショーケンと伊藤蘭が客で来るという設定で芝居をしました。全てその場のアドリブで。そういうことを通して、普段の日常をどう見つめ、それをどう表現するのか、その大切さを教えられた気がします。


 ですから、よく西田敏行が山手線に乗って人間観察をしていると言いますが、僕も同じです。それを自分の芝居に引きつける技量が、西田はとてつもない」


 倉本ドラマでは、最新作『やすらぎの郷』にも出演している。


「大先輩ばかりの現場ですから、僕は絶対にセリフを間違えてはいけないと思って臨みました。ところが、皆さん『本当にシナリオ通りにやっているのかな』というくらい、それぞれに自分の間で、つっかえたりしながら演じている。セリフが出てこないんじゃないかと思うこともあるんですが、それがリアルに映るんですよね。僕はストレートに演じようと思ってやったのですが、ミッキー・カーチスさんとかがセリフにあるのか分からない感じでやっているのを見ると、やっぱり凄いですよね」


 NHK大河ドラマをはじめ、テレビ時代劇で武将役を演じることも多く、武人としての迫力を巧みに表現してきた。


「武将ってカッコ良いだけじゃダメなんですよね。美学を持っていないと。彼らは明日をも分からない命じゃないですか。その潔さを出したいと思っています。威張っているだけではなくて、癖といいますかね。そういうところに存在感を出したい。


 僕は上手い役者にはなれません。存在感の役者になりたい。そのためには、人間としてのヘソがきちんと根本にあるように役を捉えないといけないんです。


 ただ、今の現場はカット割が多いんで、計算ずくめの芝居になって存在感が消されちゃうんですよね。これも時流ですし、作品は監督のものなので仕方ないのですが──」


●かすが・たいち/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『鬼才 五社英雄の生涯』(ともに文藝春秋)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社)など。『週刊ポスト』での連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。


■撮影/藤岡雅樹


※週刊ポスト2018年1月12・19日号

NEWSポストセブン

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