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世界的な人気を確立したジャーニーの傑作アルバム『デパーチャー』

OKMusic1月15日(金)18時0分
画像:Journey『Departure』のジャケット写真 (OKMusic)
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Journey『Departure』のジャケット写真 (OKMusic)
ジャーニーは、サンタナに在籍したスーパーヴォーカリストとして知られるグレッグ・ローリーと、15歳の若さで同じくサンタナに加入し、天才の名をほしいままにしたスーパー・ギタリストのニール・ショーンが中心となって1973年に結成されたグループ。ヴォーカリストのスティーブ・ペリーが加入してから、世界的な人気を得るようになるわけだが、今回は日本でも大きなヒットとなった「Any Way You Want It(邦題:お気に召すまま)」を含む6th アルバム『デパーチャー』にスポットをあててみたい。

文句なしのスーパーグループ

70年代初頭、日本でのサンタナの人気はすごかった。パーカッションを多用したラテン風味の暑苦しいロックは、僕らロック少年たちを大いに熱狂させ、サンタナが嫌いな奴は周りにいなかったほどだ。特にデビューの『サンタナ』(‘69)から『サンタナIII』(’71)の3枚は、今聴いても素晴らしい作品だと確信している。

そのサンタナのデビューよりもっと前の1966年(半世紀前!)、カルロス・サンタナと一緒にサンタナ・ブルース・バンドを立ち上げたのが、ジャーニーのオリジナルメンバーのひとり、グレッグ・ローリーだ。彼はキーボード奏者であるが、特にヴォーカリストとして絶大な支持を集め、サンタナ在籍時には何曲ものヒットを生み出している。同じく、ジャーニー創立時のメンバーであるニール・ショーンは、15歳でサンタナに参加し、天才ギタリストと騒がれたが、本当に『サンタナIII』での演奏は天才的だと言い切ってしまおう。

プログレハードの流行

この天才ふたりが在籍するグループだけに、ジャーニーは結成当初から大いに注目されたのだが、デビュー作の『Journey(邦題:宇宙への旅立ち)』が意外とプログレハード(1)だったので、アメリカではあまり支持されなかった…というか、このアルバムは、パンクロックやAOR(2)等が登場する時期(ロック界の変革期にあたる)の1975年リリースで、その頃はまだプログレ系が冷遇されていたから仕方ない面もある。ただ、日本ではサンタナのファンが多かったからか、結構売れていたと記憶している。

アメリカでプログレハード系のグループが脚光を浴びるのは、もう少し後の77〜78年ぐらいからだ。ちょうど、TOTO、フォリナー、スティクスら、プログレハードのグループが増え、注目が集まった頃である。僕は、このプログレハードがヒットするきっかけとなったのは、世界中でメガヒットしたボストンの『Boston(邦題:幻想飛行)』(‘76)ではないかと推測している。

スティーブ・ペリーの参加

プログレハードな音楽性は、2nd『Look Into The Future(邦題:未来への招待状)』、そして3rd『Next(ネクスト)』と続き、次作『Infinity(インフィニティ)』ではレコード会社のテコ入れ(売上を伸ばすため)があり、新人ヴォーカリストのスティーブ・ペリーが加入、プレグレ色を抑えるなどの工夫もあってビルボードのトップ40に食い込む成果(最高位は21位)となった。ところが皮肉なもので、ドラマーのエインズレー・ダンバーは音楽の方向性に疑問を抱き脱退、代わりにスティーブ・スミスを迎えることになる。

ここからが、新生ジャーニーのスタートと見ていいだろう。次作の『Evolution(エボリューション)』(‘79)は20位まで上昇し、ここまでで、後の爆発的人気への準備は万全となった。

オーディエンスの嗜好

興味深いのは、彼らが人気を得たのは、演奏の巧いスーパーグループとしてではなく、新人ヴォーカリストのスティーブ・ペリーが加入し、抑制された大人のロックバンドへと変化してからだというところ。時代が要求していたのは、ひとりのスーパースターのいるグループではなく、均整のとれたサウンドを持つ大人が聴けるロックであった。これは若者だったロックのリスナーがロックとともに成長し、多くが社会人となっていたことが大きい。逆に、パンクが台頭してきたのは、70年代中期には若者が聴くべきロックが存在しなくなっていたからだ。とは言うものの1〜2年でパンクロックは商業的には失速、その精神だけが残る結果となった。

旧ジャーニーの魅力は、グレッグ・ローリー、ニール・ショーン、エインズレー・ダンバーという天才ミュージシャンたちが丁々発止のプレイを繰り広げるところにあったのだが、70年代中期における混沌としたロックの変革期の中では、スターがスーパープレイを繰り広げるだけで売れるというような、それまでのロックの定義が通用しなくなっていた。そんな時代だけに、ジャーニーもまたバンドのアンサンブルを核とした、新時代の音楽へと舵を切らなければ生き残っていけないことは分かっていたはずだ。

別の言い方をすれば、それまでのロックはミュージシャン側が並み外れた技術や反社会性を主張するだけで良かったのだが、70年代半ば以降のロック変革期や変革期後では、オーディエンスの嗜好を汲み取れないと生き残れない時代になっていたのだ。これは、“ロックが死んだ”という意味でもあるのだが、これについては本筋からそれるので、ここまでにしておく。

『Departure』でのサウンドプロデュース

さて、本作『Departure(デパーチャー)』の録音にあたり、メンバーたちはこれまでの2作がヒットしたにもかかわらず、プロデューサーをロイ・トーマス・ベーカーからケビン・エルソンに交代させている…それはなぜか。推論でしかないが、前2作がその時代に沿った「音」ではないとメンバーが判断したためだろう。60年代からこの世界で生きてきたグレッグとニールだからこそ分かる、“時代の感覚”みたいなものを感じていたのだと思う。それは賭けに近いものだったかもしれないが、それが本作で見事に当たることになる。

アルバム『Departure』の印象

本作の1曲目に据えられた「Any Way You Want It(邦題:お気に召すまま)」は、シングルカットされ全米23位という結果であった。ファンからすれば「そんなに低かったっけ?」という思いが強いと思う。実際、今でもこの曲はいろんなメディアのテーマ曲として使われているし、長い間愛されてきた曲でもある。おそらく、ヒットするには早すぎたリリースだったのかもしれない。なんにせよ、この曲がアルバムの方向だけでなく、ジャーニーの立ち位置を決定づけたぐらいの名曲だ。

アルバム全編を貫くのは、ストレートでエッジの効いたサウンドと親しみやすいポップさである。シングルカットを見据えてか、どの曲も3分程度にまとめられ、その中で、言い足りず言いすぎずのスタイルを厳守しているような印象さえ受ける。スティーブ・ペリーの伸びやかなハイトーンヴォーカルを中心に、すっきりとしたコーラスワークや、当時急激に進化した録音機器の仕掛けなど、本作以降の飛躍を予感させるハイレベルの仕上がりとなっている。

本作のように完璧に近いサウンドプロデュースもあって、彼らのようなグループが後年「産業ロック」というように否定的に呼ばれることになるのだが、その黎明期にある本作は、変革期を迎えたロック界を生き残るための方策を形にしたわけで、80年のこの時点では逆に革新的であったことも事実なのである。

『Departure』はジャーニーのアルバムとして、初めての全米ベストテン内に入る結果となった(最高位は8位)し、長い間のロングセラーにより1994年にはアメリカ国内売上だけで300万枚を突破、トリプルプラチナとなっている。

『Departure』以降の飛躍

本作以降は、7th『Escape(エスケイプ)』(‘81)が初の全米1位、続く『Frontiers(フロンティアーズ)』(’83)が全米2位(この年はマイケル・ジャクソンのスリラーが1位だったため仕方のない2位である)など、破竹の進撃だ。

しかし、メガヒット連発によってグループは多忙を極め、グループ内の抱えていた多くの問題が浮上、86年リリースの『Raised On Radio(Raised On Radio 〜 時を駆けて)』で、一旦は解散することになる。96年には再結成することになるのだが、ロック史の中でのジャーニーの役割は1986年で終わりを迎えたと言えるのではないだろうか。

(1)プログレハード
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%89

(2)AOR《Adult-Oriented Rock(アダルト・オリエンテッド・ロック)》
   https://ja.wikipedia.org/wiki/AOR
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