「キネマ旬報ベスト・テン」日本映画部門の1位の『この世界の片隅に』、NHK『クロ現』が読み解いたヒットの理由とは!?

1月15日(日)21時0分 おたぽる

『この世界の片隅に』公式サイトより。

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 先日発表となった「2016年第90回キネマ旬報ベスト・テン」で日本映画部門の1位に輝き、アニメ映画ではスタジオジブリの『となりのトトロ』(88年)以来28年ぶりとなる快挙を達成した片渕須直監督のアニメ映画『この世界の片隅に』。昨年11月の映画公開時は公開館数63館という小規模上映からスタートするも、SNSや口コミでの評判が広がり、公開館数も徐々に拡大し、累計で200館を超える見込みのと、異例のヒットを続けている。

 一体なぜ、戦時下の日常を描いた作品が、今を生きる人々の心を打つのか。12日、ニュース・報道番組『クローズアップ現代+』(NHK)で同作についての特集が放送され、番組ではその理由をこの作品に魅せられた人々のコメントから検証。ネット上を中心に話題を集めている。

 この映画について、戦後のマンガ・アニメ界を牽引してきた『あしたのジョー』(講談社)で知られるマンガ家・ちばてつや氏は、戦争を描いたこれまでの作品とは全く違う表現方法を獲得していると感じたそう。「いつ爆弾が降ってくるようなそういう非常に緊迫した状態なのに、そこで冗談を言って笑ったり、こういう生き方をすればみんな人間は幸せになれるんだよという大事なメッセージが入っていると思いますよ」と、同作を評価した。

 以前インタビュー(参照記事)で片淵監督が語っていたように、徹底した時代考証のもとに、第二次世界大戦中の広島・呉市で前向きに生きる主人公すずたちの日常を描いたこの作品。劇場用パンフレットに寄稿している映画作家・料理家の大林千茱萸は、「今、映画って、CGとかいろんな合成で、銃声であるとか血の噴出し方とか、とてもリアルになっていて。その場に自分がいるかのように感じられるけど、そちらから、その中心を描くのではなく、その周り、片隅にいる人たちを丁寧に描くことでどんどん循環し、つながって、中心が見えてくるという物語の描き方が素晴らしかったし、みなさんの共感につながったのでは?」とヒットの理由を分析した。

 映画に声優としてゲスト出演している松竹新喜劇代表・渋谷天外は、台本を読んで、日常の生活の中で、いつの間にか“戦争”というものが体に沁みこんでいく、日常の中に戦争を感じるような、そんな怖さを感じたという。そして、普遍的なものを描くこの作品で、「普通の人が戦争に行って、普通の人が普通の生活をしていく。いかにも、『今から戦争が始まりますよ!』じゃなくて、スーッと入っていく。それが、この映画のおもしろさの裏にあるとっても怖いところ」と、コメントした。

 その他、番組では一般の人の声も紹介。原爆の実態を若い世代に伝えるため、ドキュメンタリーフィルムの上映に力を入れてきたという被爆二世の女性は、原爆の被害を直接訴えいる映像は敬遠され、上映の機会もほとんどなくなったというが、「こういう戦争、平和、原爆について伝える伝承の仕方がやっとできた作品」と、この映画が新たな伝承方法のひとつになりそうだ。

 ネット上の反応をみてみると、番組では、その他にもさまざまな劇中シーンが紹介されたため、中には「ネタバレ多すぎ」など批判的な声もあるが、「また見たくなっちゃうな〜」「これまでの紹介番組の中でも決定版というべき25分だった」「たっぷり見応えあって良かった〜」「再放送あるといいな」と視聴者からは好意的意見が多く、一時、映画公式サイトのサーバーがダウンするほど反響を呼んだようだ。

 今週発表された週末映画興行成績(興行通信社)では、スクリーンが公開初週から大幅に拡大したことにより、先週末には累計動員数86万人、累計興行収入11億円を突破した『この世界の片隅に』。今回の番組放送により、まだまだその数字を伸ばしそうだ。

おたぽる

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