松也、巳之助ら歌舞伎平成世代 次々と繰り出す新たな取り組み

1月15日(月)7時0分 NEWSポストセブン

若手の活躍により10代20代のファンが増えている(尾上松也HPより)

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 二代目松本白鸚(75才、元・松本幸四郎)、十代目松本幸四郎(44才、元・市川染五郎)、八代目市川染五郎(12才、元・松本金太郎)の三代同時襲名に加え、市川猿之助(42才)、尾上菊之助(40才)ら、市川海老蔵(40才)世代の活躍など、注目を集める歌舞伎界。次世代の台頭も目立つ。


 その筆頭格が、前田敦子(26才)との熱愛で一躍、世に名が知れ渡った尾上松也(32才)である。血縁を重視する歌舞伎界で、松也はいわゆる“御曹司”ではなく、弟子筋の家系に生まれたため、その時点で大きなハンディを背負うこととなる。


 そんな幼き日の松也に目をかけたのが海老蔵だった。松也の母・河合盛惠さんが語る。


「海老蔵さんは昔から華があって無邪気ないい人ですよ。松也は小さい頃から海老蔵さんが大好きで、楽屋で『新之助のお兄ちゃん』と言っては海老蔵さんを追いかけ回してました。海老蔵さんからは『ずっと松也がくっついてきてうるさい』と言われましたけど、私が『それぐらい大好きなのよ』と伝えると、『そっか』と笑ってかわいがってくれました」


 子役時代こそ舞台に出ずっぱりだったが、周囲からは「良い役がもらえるのは子役のうちだけ。大人になったら厳しい」と心ない言葉が耳に入ることも。その言葉通り、2005年、松也が20才の時に父・松助が亡くなると不遇の時代を迎える。


「芸の虫だった主人も、いつも回ってくるのは脇役ばかりで、ストレスを溜め込んでいるように見えました。そんな主人の苦悩する姿を目の当たりにしていますから、役が付かず悶々としている松也に“大川橋蔵さんは映画に出てスターになった。あなたも歌舞伎座の外で名前を売ってみなさい”と発破をかけました」(盛惠さん)


 くすぶっている松也の飛躍のきっかけを与えたのも海老蔵だ。2008年のこんぴら歌舞伎で海老蔵が座頭を務めた際は、松也を一座に同行させ、大きな役に抜擢して、女形だけでなく立役も演じられることを世に示した。母の言葉や海老蔵に刺激された松也は2009年から自主公演『挑む』を年1回のペースで続けている。


 歌舞伎役者が自主公演を行う意味について、ネットメディアで『恋する歌舞伎』などの連載を持つ歌舞伎ライターの関亜弓さんが解説する。


「自主公演は若い役者が自らお金を出して企画を立て、普段はできない大きな役を先輩がたに教えを請いながら演じる。その中で“自分がなりたい役者”像を創り上げていくのではないでしょうか」


 松也は忙しい仕事の合間を縫って、自らスポンサーを探して資金をかき集め、自主公演を実現させたという。


「松也は自分の力で周囲に実力を認めてもらおうと必死でした。親友の七之助くんから“自主公演におれも出してくれ”と頼まれても、“まだ世に出ていない、自分が見出した役者と一からやってみたい”と断った。それほど自主公演に懸けていたんです」(盛惠さん)


◆斬新な取り組みを次々と成功させた中村勘三郎



 その甲斐あってか、松也は2015年から“若手の登竜門”とされる『新春浅草歌舞伎』で、リーダーとして坂東巳之助(28才)や中村隼人(24才)など御曹司たちを引っ張っている。彼らの活躍が客層にも大きな影響を与えている。


「若手の活躍により、劇場に足を運ぶ10代や20代の若い女性が増えています。なかでも、『スーパー歌舞伎II「ワンピース」』で存在感をみせた巳之助さん、隼人さん、坂東新悟さん(27才)、尾上右近さん(25才)の人気はめざましく、楽屋口で出待ちする女の子まで。『新春浅草歌舞伎』も世代交代がなされた当初は、みなぎるエネルギーが印象的でしたが、近年は“興行として成功させる”“お客様を楽しませる”という気概が伝わってきて非常に頼もしく感じます」(関さん)


 彼らは「平成世代」らしく、SNSを活用してセルフプロデュースしたり、写真集を発売したり、積極的にテレビドラマやバラエティー番組に出演したりと、これまで歌舞伎を見たことのない層に歌舞伎の魅力をアピールして舞台に呼び込む。こうした軽やかな活動も若い世代の特徴だ。


 歌舞伎界の慣習にとらわれることなく、斬新な試みを次々と成功させた先駆者といえば、亡くなった中村勘三郎さん(享年57)である。彼は生前、テレビの密着番組で弟子に対して「このお弟子さんは、一生主役をやることはできない」というナレーションに激怒したことがあった。そして勘三郎さんはこう言ったという。


「こいつが主役を張れるような時代をつくるのが、おれたちの仕事だ」


 残念ながら勘三郎さんは志半ばでこの世を去ったが、その魂は海老蔵に受け継がれている。『歌舞伎 家と血と藝』(講談社)の著者である中川右介氏が言う。


「歌舞伎界の頂点に立つ市川宗家の御曹司が、門閥外の実力ある不遇な役者を積極的に登用することで、家系重視の歌舞伎界が大きく変わる可能性があります」


 新・染五郎を襲名した金太郎を中心に孫世代も活気づいている。特に海老蔵の息子・勸玄くんが母・麻央さんの死から約2週間後の『七月大歌舞伎』で史上最年少の宙乗りを披露した姿は、多くの人々の涙を誘った。


※女性セブン2018年1月18・25日号

NEWSポストセブン

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