伝統と革新に揺れる歌舞伎、今こそ現代・過去・未来全部揃う

1月17日(水)7時0分 NEWSポストセブン

新規開拓を続ける猿之助

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 役者だけでなく演目も時代とともに大きな変化を見せている歌舞伎。『スーパー歌舞伎II「ワンピース」』に代表される新作歌舞伎が今後も目白押しだ。


 今年8月からは、新橋演舞場で坂東巳之助(28才)と中村隼人(24才)が主演を務める『NARUTO』が上演。これも人気漫画を原作とした新作歌舞伎である。


 数ある新作歌舞伎のなかでも特に新たな可能性を示したのが澤村國矢(39才)だ。2016年4月に開かれた『ニコニコ超会議』で獅童、バーチャルアイドル・初音ミクとともに新作歌舞伎『今昔饗宴千本桜』を上演して大好評を得た。『恋する歌舞伎』などの連載を持つ歌舞伎ライターの関亜弓さんが解説する。


「國矢さんは、『ニコニコ超会議』 に出演したことによって、 普段は歌舞伎を一切見ないネット民から『紀伊国屋!』と屋号も覚えられ、注目されたようです。こういうかたちで実力のある役者さんの知名度が上がるなんて 、本当に新しい時代になったと感じます」(関さん)


 ほかにも新・幸四郎がフィギュアスケート荒川静香や高橋大輔とコラボした公演『氷艶hyoen2017〜破沙羅〜』をプロデュースするなど、人気俳優による新規開拓が続く。


 その第一人者である市川猿之助(42才)に話を聞いた。


「歌舞伎役者がやれることなら、何でも歌舞伎の新たな可能性につながっていくと思います。好奇心旺盛に日々を過ごして、これからも誰も思いつかないような作品を生み出したいですね」


 だがこうした試みは若いファンの獲得につながる一方、一部から異論も上がる。歌舞伎界の重鎮・中村吉右衛門もその1人である。2016年のあるインタビューで「若い人は新しいものを追うばかりでなく、古典をやらないと」と注文をつけている。


 古参の歌舞伎ファン(70代主婦)もつぶやく。


「『ワンピース』を観劇したけど、普段見ている古典と比べると、どうしても軽い感じがしてしまって…。私はあの世界には入り込めませんでした。やっぱり古典芸能である以上、昔ながらの技で胸にじんとくるような迫力ある芝居も見たい。またお客さんも若い人が多く、歌舞伎ならではの品のあるお客さんが少ないことにも違和感を覚えました」



 これらの指摘に前出の関さんはこう反論する。


「“平成世代”と呼ばれる若い役者さんたちは新しいことに挑戦しつつも常に古典作品のことを意識しています。新作歌舞伎が成功するのも、彼らが古典をしっかり勉強してきて引き出しがあるからこそと感じますし、お客さんの層を広げるため、役者としての可能性を広げるためなど、彼らが新作に挑戦するのには確固たる目的があると思います」


 まさに転換期を迎えている歌舞伎界。『歌舞伎 家と血と藝』(講談社)の著者である中川右介氏は「今こそ歌舞伎を見るべき」と力を込める。


「世代交代という『縦の物語』と、海老蔵による大改革という『横の物語』が交わるのが現在の歌舞伎の世界です。大御所の総仕上げ、円熟味を増す海老蔵世代、平成世代の台頭、孫世代のデビュー。すべてが同時に楽しめるのはこのタイミングだけ。今、劇場に行けば、歌舞伎の現在・過去・未来をすべて見ることができるんです」


 伝統と革新が織り成す歌舞伎界は新時代を迎える──。


※女性セブン2018年1月18・25日号

NEWSポストセブン

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