組長が「すまん」とお年玉 ヤクザのポチ袋の中身が1000円

1月17日(水)11時0分 NEWSポストセブン

ヤクザのお年玉は不景気のまっただ中

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 暴力団は「親—子」の疑似血縁制度を基軸とし、家族を模した組織だ。子である若い衆は、“親孝行”として上納金を納め、ひとたび抗争になるや親のために命を張る。忠義を尽くす子に対し、新年を迎えた時に親は「お年玉」を渡す──そんな特有の“文化”に今年、確かな異変が起きた。フリーライターの鈴木智彦氏がレポートする。


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 最大組織の山口組では古くから“親”が“子”にお年玉を配っていた。司忍六代目組長も2005年の就任以来、新年にはお年玉を配っており、そのポチ袋には「つかさ」と名前がある。平仮名なのは、“子供にも分かるように”という配慮だという。裏側には配った年も記されている。


「中身は毎年5000円。金額云々は関係ない。親分が自分たちに気を配ってくれたということが、子には嬉しい」(某直参組長)


 六代目山口組から分裂した神戸山口組では“分裂抗争”という危機的状況を抜け出していないからか、お年玉が配られたという話は聞かない。ただ、中核組織の山健組などは新年会にお年玉を配っているようで、金額はこちらも5000円前後だ。


 第三勢力である任侠山口組では、織田絆誠代表と盃を結んでおらず親子関係が成立していないため、お年玉どころか正月行事が催されていない。


◆今年は8割減


 一次団体を支える傘下組織の親分たちがお年玉を配る例もある。同じく親から子への情を示す象徴的行事とされ、金額の多寡は問題にされないが、中にはけっこうな額を配っている親分もいる。


 今年、一人あたり30万円のお年玉を配った組織があった。当事者たちに感想を聞いてみると、「俺らが運んだ上納金の一部がキャッシュバックされてるだけで、少しも嬉しくない」と冷めていた。実際、この組織は会費が高いことで有名である。特別な者にだけ、お年玉を配っている組織もあった。


「若い衆全員に配るわけにはいかないけど、還暦を迎える者と、前年に頑張った数人だけ、多めのお年玉を渡している。具体的にいくらかって? それは想像にお任せする」(三次団体組員)


 粘って質問を続けたところ、どうやら10万円らしい。該当者が10人いれば100万円だから、結構な出費だ。


“現物”を配る組織もあった。


「お年玉代わりといっちゃなんだが、全員に餅を配っている」(二次団体幹部)


 なかには車をプレゼントする親分がいた。3年に1度の車検のタイミングで新車に乗り換える際、古い車をお年玉として若い衆に譲るのだ。お下がりとはいえ、親分の愛車だから高級車だ。しかし、当事者たちの評判は芳しくない。


「車をもらったら、必ず乗らなくてはいけなくなる。気に入らない、趣味に合わないから売るということもできない」(別の三次団体組員)


 景気の悪いここ数年、親分も車検の度に乗り換えることができなくなり、その習慣も途絶えた。今は組の新年会で、ポチ袋に入った現金がもらえるのだという。


「親分から『すまん』と言われ、袋を開けたら1000円札が1枚だけ。去年までは5000円だったから8割減だ。組員の士気に響くけど、500円に下げられた組もあるから、札なだけマシと思うしかない」(同前)


 全ての組に取材をしたわけではないが、今年は金額が下がった組織が多く感じられる。


◆ポチ袋1つが命取りに


 縮小傾向にあるヤクザのお年玉──。ある山口組傘下組織組長は「正直こんな習慣はなくなってほしい」と打ち明ける。


「昨年は3つに分裂したことで、警察もここぞとばかりに取り締まりを強化してきた。カネの流れは、我々にとって最も触れられたくない話。お年玉は大した額ではないが、警察に目を付けられてはたまらない。それに限られたシノギを3つで奪い合う収益構造はすでに限界で、(上部組織への)上納金だけでもつらい。組の出費は少ないに越したことはない」


 ヤクザからカネがらみの世知辛い話を聞かされることが多い昨今、気前のいい話は少ない。


 また、金銭的な厳しさとは別の理由で、お年玉を廃止する組織も少なくない。別の山口組傘下組織組長は、こんな本音を口にした。


「ヤクザの終わりが見えた以上、子に払う必要を感じられなくなった。一昔前とは違い、儲けるには一種の特殊技能が必要だが、まだ儲けている人間も多い。ただ、マスコミが『儲からない』と繰り返すため、優秀な人材が入らず先細りだ」


 子にとっても親分からポチ袋をもらえば、正式な組員として警察から認定される。


「たかだか5000円ぽっちをもらったせいで、マンションを追い出されたり、銀行口座が消滅するのでは割に合わない。渡すほうはいい気持ちになんだろうが、もはやヤクザのお年玉に恩義なんて感じない」(山口組系二次団体組員)


 誰よりも伝統を重んじるヤクザ界から1つの“慣習”が消えつつある。それはこの世界の衰退を表わす象徴的な一場面なのだ。


※週刊ポスト2018年1月26日号

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