まさにゲイあるある......新宿2丁目のオネエの目に『ボヘミアン・ラプソディ』はこう映った

1月18日(金)11時45分 耳マン

社会現象とも言える異例のヒットを記録している映画『ボヘミアン・ラプソディ』。“ゲイスターの先駆け”とも言えるクイーンのボーカリスト、フレディ・マーキュリーの生涯を描いた話題作だが、同作は新宿2丁目の住人の目にはどう映ったのか!? ドラァグクイーンとして活躍し、コラムニストとしても著書『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。新宿2丁目も愛した歌姫』を発売したばかりのアロム奈美江が話題作『ボヘミアン・ラプソディ』の魅力をつづる!

ゲイの友人知人たちの間でも賛否両論あったわ

1970年代〜1980年代に活躍したロックバンド・クイーン。そのボーカリスト、フレディ・マーキュリーさんの生涯を描いた伝記ミュージカル映画『ボヘミアン・ラプソディ』は、日本でも興行収入100億円に迫る大ヒット。先日開催された『第76回ゴールデングローブ賞』では最も栄誉ある作品賞に選ばれ、アカデミー賞最有力とささやかれる話題作でもあるのよね。

30代後半の私にとって彼らは世代が少し上のアーティストなので、いくつかの代表曲は聞き覚えがあるけれど、「ゲイゲイしいビジュアルを押し出しながらも、世界で評価されたゲイスターの先駆け」くらいの認識しかなかったのが正直なところ。あ、新宿2丁目にある老舗ゲイバー『九州男』に、来日したときには必ずといっていいほど来店していたとかで、オーナーママがフレディさんとムフフ♪なこともあったって話していたっけ。一緒に撮った写真が飾られているのを見ながら「ほんまかいな」って疑ってたけどね。

とにかくほんとにその程度のエピソードしかないくらいフレディさんとクイーンのことに関しては疎かったの。だけど、映画の大ヒットにともない、ゲイの友人知人たちの間でも映画の感想はSNS上で「純粋に、最後のライブシーンの余韻がすごい」とか「ゲイやHIVの描写が雑!」など賛否両論あって気になっていたので、腰の重たい私もやっとこさ観てまいりました。

彼のファッションの変遷はまさに「ゲイあるある」

あくまで映画作品なので現実のストーリーを脚色している部分は大いにあると思われるけれど……フレディさん、思っていた以上にゲイゲイしい人だったんだ! というのが率直な感想よ(語彙力無しかよ)。いろんな場面において、ゲイ当事者がうなったり、ニヤニヤさせられるポイントがあったんだもの。

まずはファッション面。デビュー前からブレイク直後の、レディースの服をタイトに着こなし、バンドメンバーの中央で毛皮のコートで歌いあげる姿はまさにユニセックスかつアバンギャルド。だけど歳を重ね、自分のセクシュアリティを受け入れた(と思われる)タイミングで、突如として長かった髪を短くしオールバックに。ヒゲを凛々しくたくわえ、白のタンクトップを着て肉体とモジャモジャの胸毛を見せつけた。そこにタイトなジーンズを合わせたのは、股間のモッコリ強調効果を狙っているとしか思えないわ。

劇中、バンドメンバーにそのファッションを「ゲイだ」とバッサリ言われていたけれど、完全にバレてる!! フェミニンなハイブランドの服で統一するスタイルも、男性性を強調したハードゲイ的な出で立ちも、どちらもイカニモなゲイファッションといえるのだけど、日本のゲイ業界においても、年齢やターゲット層によって途中でガラリと見た目を変えてしまう人がいるので、彼のファッションの変遷はまさに「ゲイあるある」なのよね。また、彼自身のアイデンティティの変わりようも表している気がして興味深かったわ。

ゲイと宗教、そして多くのゲイが抱える「男親とどうコミュニケーションをとるか問題」

次にフレディさんの恋愛。一度は熱烈に愛した女性・メアリーと結婚までしたものの、途中で男性にどうしようもなく惹かれてしまう自分に気づき離婚。その後の男性との性的接触に関しては、ぼんやりとしか劇中触れられていないけれど、「あ、この場所ってハッテン場だよね!?」と思わせるシーンがあり、フレディさんがおおいにゲイを謳歌したのであろうことが想像できたの。あ、ちなみに「ハッテン場」とは、ゲイの性的出会いの場のことよ(より具体的なことは、察してください)。ただ、自分のよき理解者としてメアリーをずっと手放したがらなかったことは、どんなに男たちと関係をもてたとしても心の拠り所を見つけられなかったからなのね……。

そして、フレディさんの生い立ち。世界におけるゲイの差別問題には、宗教がかなり影響しているのよ。同性愛を禁じている宗教はたくさんあるのだけど、フレディさんの肉親もまた同性愛には厳しいとされるゾロアスター教を信仰していた。そして父親との確執が描かれているけれど、これはフレディさんがロック歌手を目指して破天荒な行動をとっていたから、というだけではなく、同性愛者である自分に無意識レベルで気づいていて、親への負い目を感じていたからなのではないかしら? 男親とどうコミュニケーションをとるかという問題は、現代でも多くのゲイが抱えているし、私自身もまたその例外ではないだけに、妙に自分と重ねて観てしまったわ……。

ゲイでなくとも誰しもが共感できる「孤独」

この映画を観終わる頃には、この作品がフレディさんが抱える孤独を一貫して描いているのだと気づく。どんなにロックアーティストとして評価され成功しても、フレディさんは常に孤独なのよね。時代背景も相まって、ゲイであることで彼は孤独の底からなかなか這い出ることができなかったけれど、彼の孤独は同じゲイでなくとも、誰しもがどこかで必ず共感できる普遍的なテーマでもあったわ。だからこそ、最後の最後にフレディさんが「敗者になっている暇などない。なぜなら俺たちはチャンピオンだから」(『We Are The Champions』)と歌い上げるシーンで多くの人たちが涙するのだと思う。

歌詞が和訳されているので、クイーンの歌自体もまた破天荒でゲイテイストにあふれているものなのだと知ることができる作品よ。私、リピートして2回目観に行っちゃおうかしら!?

アロム奈美江プロフィール

ゲイをテーマにした電子書籍ライター、ゲイ雑誌『Badi』編集者を経て、2009年にドラァグクイーンデビュー。プライベートでは、30歳から女性ホルモン投与を始め、ゲイからトランスジェンダーの領域へ転向。2018年12月15日には安室奈美恵への思いをつづった書籍『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。新宿2丁目も愛した歌姫』を発売。
◎『永遠ていう安室奈美恵なんて知らなかったよね。新宿2丁目も愛した歌姫』
https://www.amazon.co.jp/dp/4845633329

アロム奈美江

ゲイをテーマにした電子書籍ライター、ゲイ雑誌『Badi』編集者を経て、2009年にドラァグクイーンデビュー。プライベートでは、30歳から女性ホルモン投与を始め、ゲイからトランスジェンダーの領域へ転向。現在は、流しの女装パフォーマー、ホステス、MC、イベントオーガナイザーとして節操なく小銭を稼いでいる。

耳マン

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