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ローザ・ルクセンブルグ最後の作品『LIVE AUGUST』は尋常ならざる演奏を聴くことができる歴史的ライヴ名盤!

OKMusic1月18日(水)18時0分
画像:『LIVE AUGUST』(’87)/ローザ・ルクセンブルグ (OKMusic)
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『LIVE AUGUST』(’87)/ローザ・ルクセンブルグ (OKMusic)
当たり前のことだが、毎年、1月28日はやってくる。不世出のミュージシャン、どんとの命日である。彼は1962年生まれだから、今年は生誕55年の年でもある。『55歳からのハローライフ』なんてタイトルの村上龍の小説があったように、当代で55歳と言えば定年間近になって人生の再出発を考え出す時期だろう。“たられば”は禁物であることを承知で言うが、もし今もどんとが健在であったとして、55歳になって何を歌い、どんな演奏を聴かせてくれたのか? 世界情勢や沖縄のことを併せて思いを馳せると、なかなか興味深くはある。まぁ、そんな詮なきことはともかく、昨年のボ・ガンボス『BO & GUMBO』に引き続いて、今年もどんとが遺した名盤を取り上げてみたいと思う。

雑多な音楽性を取り込み超進化

どんとの音楽活動のスタートは81年、京都大学入学後に組んだバンド、NANAであると公式プロフィールにもあるが、我々が知る最初のキャリアはローザ・ルクセンブルグ(以下、ローザ)である。アルバイトをしていた京都のライヴハウス拾得で玉城宏志(Gu&Vo)、永井利充 (Ba)と出会ったことに端を発する。その3人でキャラバンナイトという京都のディスコで演奏のアルバイトをしており、それが原型となってバンドが結成されたようだ。その後、玉城が三原重夫(Dr)を誘い、デビュー時のメンバーが揃ったのは83年だ。バンド名は玉城が付けたもので、ドイツで活動したマルクス主義の哲学者、革命家の名前“Rosa Luxemburg”から取った(ちなみにドイツ語での発音なら“ルクセンブルク”だそうで、そこは最大の後悔だと玉城は語っている)。結成の翌年、ローザはNHK主催のコンテスト『Young Music Festival』に出場して見事、全国優勝。このコンテストは細野晴臣、矢野顕子らが審査員を務めており、後に細野氏は「他に出ていた人たちのことはまったく覚えていないけど、ローザ・ルクセンブルグのことは覚えています。強く残っていますよ」と述懐している。今となってはそれも当然のことと思えるが、最初から強烈なインパクトを与えていた。

86年2月に1stアルバム『ぷりぷり』、1stシングル「在中国的少年」を同時リリースしてメジャーデビュー。同年12月には早くも2ndアルバム『ローザ・ルクセンブルグII』発売と──これは結果論以外の何物でもないが、バンドの歴史を象徴するかのような猛スピードでシーンを駆け抜けた。何しろ、以後のローザのスタジオ音源は2ndアルバムと同時発売だった2ndシングル「さいあいあい」と、87年7月のミニアルバム『STAY BUT EAT』だけである。しかも、『STAY BUT EAT』はどんと脱退発表後のリリースだ。5年間で5枚のスタジオ盤を出しているボ・ガンボスと比べるまでもなく、あっと言う間にバンドの活動を終えている。その間、バンド自体も急成長したと言ったらいいだろうか。音楽性も凄まじい速度で進化。デビュー前はニューウェイブの括りで語られていたが、R&R、R&B、ファンク、スワンプ、さらにフォーク、レゲエ、グラムロック、サイケデリックロック、ワールドミュージックと、あらゆるジャンルを雑多に取り込んでいった。

解散ライヴでの堂々たるサウンド

その雑食性は決して無造作なものではなかったのだろうが、後にボ・ガンボスへとつながるニューオーリンズを始めとするルーツミュージックに傾倒していくどんと&永井と、あくまでもロックを志向する玉城との間に音楽性の違いを生むこととなる。それがローザ解散の背景というのが一般的な見方だ。ウィキペディアによると、この時期のローザには《音楽性の相違を理由にする軋轢が生まれ》たとある。だが、ローザの後期が字義通りの状態であったとは想像しづらい。確かに『STAY BUT EAT』は作詞作曲はおろか歌唱までもどんとと玉城に分かれた分裂状態ではあったが、両者の仲が悪く、争っていたとはどうしても思えないのだ。その想いを強く後押ししてくれるのが『LIVE AUGUST』である。本作はローザの解散公演となった87年8月の渋谷エッグマンでのライヴを収録したライヴ盤。充実し切ったバンドアンサンブルと、それが生み出す圧倒的なグルーブが収録されている。Pro Toolsの前身のオーディオシステムはすでに世に出ていた頃だが、当時は間違いなく超高価な代物だったろうし、ライヴハウスで使われていたとはにわかに考えづらいので、個々のプレイは後処理のない完全な一発録りであろう。そのサウンドは「バンドの成熟とはこういうことだ」と言わんばかりの実に堂々としたものである。

MCを含めて全25曲収録。M1「さいあいあい」後の「こんばんは。ローザ・ルクセンブルグ。ありがとう。最後だよ。じゃんじゃん踊ってよ」や、M3「おいなり少年コン」後の「というわけで、ローザの最後のライヴがやってまいりました。こんなにたくさんの人が観に来てくれて、どうもありがとう。今日は泣かせに参りました。みなさん、じゃんじゃん泣くように」とのMCから、これが紛うことなきラストライヴであることがわかる。圧しの強いどんどの声は相変わらずというか、そのパフォーマンスを含めて当時から個性的だったことを確認できるが、その声質が──こう言ってはおかしいだろうが、分厚いギターサウンドと案外合っている。ボ・ガンボスやどんとのソロから入った人にとってはかなり新鮮に映るのではないか。ディスク1の序盤は疾走感あふれるリフものが中心で、どれも活き活きとしているが、とりわけ注目なのはM3だろう。どんと、玉城、永井が順にヴォーカルが取る様子、その躍動感は本当に素晴らしい。

以降、ミディアムM6「虹のまりちゃん」、ファンキーなM7「北京犬」をはさんで、M8「モンゴル放送局」、M9「不思議だが本当だ」という玉城楽曲から、永井利充がヴォーカルをとるM10「デリックさん物語」と続き、ボ・ガンボスの音楽性にも近いM12「ひなたぼっこ」へと、まさしく雑多なサウンドを聴かせてくれるが、この辺はローザが不世出のミュージシャンの集まりであったことを印象付ける。M9はエッジの立ったイントロ〜ルーズでブルージーなリフに加えて、サイケな音作り、レゲエ的なアプローチと、さまざまなギターのアプローチがこれでもかと詰め込まれており、玉城の独壇場であることは間違いないのだが、どんとのコーラスがソウルフルというか、彼が敬愛して止まなかった忌野清志郎的というか、お互いの個性をしっかりとぶつけ合って融合させていることが分かる。それはアコギ基調のグラムM13「だけどジュリー」、ブルースロックM14「眠る君の足もとで」でも大い感じられるところだが、個性の強い両者が拮抗しているのは、M9の歌詞を引用すれば、まさしく《不思議だが本当だ/本当なのだけれど不思議なのだ》──そういう妙味がある。

大作「ニカラグアの星」は必聴!

ディスク2は民謡のようなメロディー&リズムM1「おしり」、ジャングルビートのM2「いも虫まる虫」、パンキッシュなR&RであるM3「まったくいかしたやつらだぜ」、一見フォーキーだがチャイナ的なアプローチもあるM4「橋の下」と、冒頭からバンドの急成長、音楽性の進化を感じさせる楽曲が並ぶ。聴きどころは圧倒的にM5「ニカラグアの星」。9分を超える大作だが、歌もさることながら、イントロ、アウトロで確認できるバンドアンサンブルが凄まじすぎる。リズムは和テイストを感じさせつつも所謂ファンク系の横ノリで、グルーブが出やすいタイプなのかもしれないが、4つの音が折り重なっていく様子は尋常じゃない。率直に言って“こんな演奏ができるバンドが解散してしまったのか?”という驚きを覚えるほどである。ローザにそれほど興味がない人でも(その聴き方は本来あまりお薦めできるものではないが)『LIVE AUGUST』のこのスリリングなテンションは体験しておいて損はないと思う。こんな演奏ができるバンドは古今東西、そういるものではない。

ここからM7「おもちゃの血」でライヴ本編は終了。アンコールはM8「毬絵」、M9「在中国的少年」、M10「バカボンの国のポンパラスの種」という1stアルバム『ぷりぷり』収録曲が続き、「最後はこの曲しかありません」と紹介されるM11「少女の夢」で締め括られる(この楽曲も『ぷりぷり』の最後に収録されている)。M11のメロディーは分かりやすい上に大衆的で、ローザが決して音楽マニアだけに支持されるバンドではなかったことも分かるし、さまざまな意味でこのバンドの集大成と言える作品である。先ほども述べた通り、本作にはローザの雑多な音楽性が収められているし、それが解散の引き金になったと考えると、“この日が最後だったからこそ、これだけの演奏ができたのかもしれない”と考えられなくもないが、お互いにミュージシャンとしてのリスペクトがあったことは確実である。そうでなければ、こんなにもテンションの高い演奏が100分間以上も続くわけがないし、そもそも『STAY BUT EAT』を出した時点でバンド活動を止めていたはずである。メンバー間に音楽性の相違はあっただろうが、それが即ちミュージシャン同士の大きな確執にはなり得なかった。『LIVE AUGUST』はその事実がパッケージされた作品でもあると思う。
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