「高齢者は75歳から」は国家の謀略である

1月18日(水)11時0分 NEWSポストセブン

高齢者の定義が変わる?

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 今年1月5日に発表された日本老年学会等でつくるワーキンググループ(WG)の提言内容は衝撃的なものだった。まず、65歳以上を高齢者とする従来の定義を「医学的根拠はない」と全面否定したうえで、


〈現在の高齢者においては10〜20年前と比較して加齢に伴う身体的機能変化の出現が5〜10年遅延しており、「若返り」現象がみられています〉──とし、今後は「75歳以上」を高齢者と区分することを提言したのだ(90歳以上を超高齢者、65歳から74歳までは准高齢者)。


 なぜこうした提言が出てきたのか。今回の発表のベースになったとされる2015年の日本老年学会総会の研究報告には以下のような内容がある。


●現在の70代の知的機能は10年前の60代に相当。60代は40代〜50代に接近。


●65歳以上の通常歩行速度は男女とも11歳の若返り、握力は男性4歳、女性10歳の若返り(1992年と2002年の比較)。


●歯の数が20本(咀嚼に最低限必要)に減る年齢は1957年には男50歳、女45歳だったが、2011年には男女とも65歳になった。


 そうした研究を踏まえて、提言では〈特に65〜74歳の前期高齢者においては、心身の健康が保たれており、活発な社会活動が可能な人が大多数を占めています〉と分析している。


 誰でも「まだまだ現役、隠居する年じゃないですよ」といわれたらお世辞だとしてもうれしいものだ。だが、いきなり“高齢者の定義そのものを変更します”という話になると喜んではいられない。


 現在、日本の65歳以上の高齢者は約3393万人、高齢化率(人口に占める高齢者の割合)は約27%と過去最高になった(2015年国勢調査)。少数の現役世代が多くの高齢者を支え、年金財政は危機に瀕し、医療費も年々増大の一途だ。


 そこで高齢者の定義を見直し、65〜74歳の約1752万人を「高齢者」から外せば、高齢化率は一気に約13%へと半分に減る。まさに数字のマジックである。その上で「まだまだお若い」と74歳まで働くようにすれば高齢化に伴う財政コストを大きく減らせるうえに、“現役”の増加で税収アップまで可能になる。


 現在の法令では、65〜74歳が「前期高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と定めている。生物学的に日本人が平均5〜10歳若返っているとしても、高齢者の定義をいきなり10歳引き上げるのは乱暴すぎる。


 寿命制御遺伝子やアルツハイマー病などの研究でノバルティス老年医学賞を受賞した白澤卓二・白澤抗加齢医学研究所所長が語る。


「今回の高齢者の定義見直しは政治的な背景を意識した提案と考えていい。今後高齢者の医療費や介護費用が増えていく一方で、支え手となる生産年齢人口は減っていく。このままでは社会・経済的に成り立たなくなるだろうから、高齢者の定義を見直すというのが学会の議論のスタートだったはず。学会は財政上の理由とは言いにくいでしょうが、そう理解していい」


 今回の提言は“国策”に沿った動きだという指摘である。


※週刊ポスト2017年1月27日号

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