アイドルライターが語る"仮面女子" あるメンバーからの手紙に隠されたアイドルへの強い思い

1月15日(木)1時0分 おたぽる

仮面女子公式サイトより。

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——1月1日にリリースしたシングル「元気種☆」が、インディーズ女性アーティストとして初めてオリコン週間ランキングで1位をとり、1月7日には地上波での冠番組『仮面女子のやっぱ 全力だね〜!』(テレビ東京系)が始まった仮面女子。2015年、順風満帆にスタートをきった彼女たちだが、8日発売の「週刊文春」(文藝春秋)が衝撃的なニュースを報じた。内容は、事務所の社長がテレビ番組での"ヤラセ"やメンバーに対する性行為を強要したというもの。本稿は、この件に対して批判するわけでもなく、擁護するものでもない。仮面女子を取材し続けてきたいち記者が、彼女たちへの思いを綴ったものである。

 今でこそ、某国民的アイドルグループをしのぐ立派な常設劇場P.A.R.M.Sを東京・秋葉原に持っている彼女たちだが、筆者が取材を始めた頃は、常設劇場など想像もできなかった。当時はまだ、"仮面女子"という言葉もなければ、事務所を代表するユニットは、のちに仮面女子の核となるアリス十番だけ。東京・芝浦にあるライブハウスStudio Cube 326の2階で、「シバポップフェスティバル」と題したライブを定期的に行っていた時代だ。アリス十番が掲げる武器も、どこか安っぽい。一番見栄えのあるチェーンソーも、血をイメージしたペイントが手作り感を醸し出していた。

 数年前まではそんな状態だった彼女たちだが、今では事務所を牽引する姉妹ユニットも増え、常設劇場や地上波の冠番組まで持ち、今年の11月23日にはさいたまスーパーアリーナでワンマンライブを行うまでの規模に成長した。それは偏に、彼女たちがまっすぐ夢に向かって努力をしてきたからこそだ。

 アリス十番の候補生ユニットとしてOZ【編注:当時はOZの上位ユニット・スチームガールズはなく、OZがアリス十番の候補生ユニットという位置づけだった】がデビューしたとき、筆者はとあるアイドル誌で彼女たちのデビューを取材した。メンバー一人ひとりにデビューの感想を聞き、写真を撮り、紹介は1/2ページ。当時の筆者は、たまたまアイドル誌の編集をすることになっただけで、アイドルに詳しくなければ、興味もほとんどなく、ただ仕事として記事を作ったといっても過言ではないページだった。

 しかし、その雑誌が発売されてしばらくすると、事務所であるアリスプロジェクトの住所から、かわいらしい封筒で2通の手紙が届いた。それは、取材をしたOZのメンバーからのもので、デビューを取材してもらって本当にうれしい、この初心を忘れず、いつか表紙を飾れるアイドルになりたいといった、取材のお礼を綴ったものだった。後にも先にも、取材したアイドルから、感謝の手紙をもらったのはこれだけだ。この手紙を受け取り、筆者のアイドル取材に対する姿勢も変わった。どんな取材でも、彼女たちにとっては、夢が叶っていく軌跡。ファンが喜ぶものだけでなく、アイドルである彼女たちにとっても、成長の記録や思い出になる記事を作ろうと。おそらく、彼女たちからの手紙がなかったら、筆者は今、こんなにも熱心にアイドル業界で仕事をしていなかったかもしれない。

 しかし、そのときはまだ、新人の子が喜んでくれたという認識しかなく、その手紙の"本当の重み"は理解できていなかった! その後、仮面女子の取材を続けていく中で、手紙をくれたメンバーのひとり、桜雪の生い立ちをインタビューする機会に恵まれた。その中で、彼女は、アイドル活動をしたかったが、東大受験というもうひとつの目標のために、事務所創設期から所属していたにも関わらず、ずっとステージに立つことができずにいたジレンマと苦悩を語ってくれた。この話を聞いたとき、彼女がOZとしてデビューしたときのインタビューで、「ようやくステージに立てた」と笑顔で語ってくれた意味、そして、取材のお礼の手紙を書いた意味が、ようやくわかったのだった。

 桜雪に関しては、それ以前にも、彼女がトップユニットのアリス十番に昇格したときもお祝いを兼ねて取材に行き、OZデビュー時の記事やいただいた手紙も持っていったのだが(もちろん、懐かしんで喜んでくれたが)、まさかそんなにも深い思いがあったとは、そのときもまだ知らなかった。本当に、取材を重ねていくごとに、どういう思いで彼女たちが今、そのステージに立っているのかがわかってくるのだと思った次第......。

 ステージで見せる姿やメディアが伝える彼女たちの言葉は、彼女たちの思いや努力の氷山の一角でしかない。今でも、筆者はアイドルファンではないが、取材を通して彼女たちと触れ合うことで、メディアでは伝えない彼女たちの姿を客観的に知ったからこそ、仮面女子を応援していきたいと思うようになった。

 取材で訪れた際、P.A.R.M.Sのオープン前に、ロビーでひたすらダンスの練習している研究生の姿などを横目で見たり、夜遅くまで練習していてほとんど寝ていないという話をぽろっとしているのを聞いたり、そうした日頃からのひたむきな姿を見ているからこそ、この子たちは本気なんだと思うし、だからこそ、もっと大きいステージで輝いてほしいと思ってしまうのだ。

 また、最近はテレビ番組での露出も増えた仮面女子だが、筆者の印象に残っている番組といえば、やはり2013年6月に放送されたNHKのドキュメンタリー番組『ドキュメント72時間』だ。当時はまだ、アリス十番、スチームガールズ、アーマーガールズによる"仮面女子"という一致団結した複合ユニットの概念が存在しなかった時代。事務所の母艦ユニットとして位置づけられた古参メンバーによるアリス十番とその後輩ユニットで若手メンバーが集まるスチームガールズが、事務所のNo.1ユニットになるために競い合っていた【編注:当時はまだアーマーガールズは存在していない】。

 しかし、それまで事務所を代表するトップユニットとして大々的に活動をしていたアリス十番だったが、スチームガールズがデビューしてからは陰りが見え始めていたのだ。常設劇場のP.A.R.M.Sでは、毎日のライブごとに「ヲタク満足度」と呼ばれるファン投票が行われており、その投票結果で1位をとったユニットが、ライブのトリを務めたり、メディア露出の機会が与えられたりしている。この人気投票でアリス十番をいつも抜いていたスチームガールズ。ある時の"勝利特典"では、スチームガールズは、世界的に有名なハリウッドスターが主演する映画のジャパンプレミアで、ゲストとしてレッドカーペットを歩いたこともあるほどだった。

 そんな"ユニット格差"がついていたときに放送されたのが、『ドキュメント72時間』。番組内でも、アリス十番が直面している「スチームガールズに人気を追い抜かれている」という問題が取り上げられており、投票結果の数字を見て悩む彼女たちの姿が映し出されていた。正直なところ、スチームガールズがデビューしたとき、ここまで人気が出るとは筆者は思っていなかった。今まで、質の高いパフォーマンスで事務所を牽引してきたアリス十番を見てきたからこそ、その思い悩む姿から、彼女たちの苦悩が伝わってくる。あれは何度見ても泣けるシーンだと思う。NHKの番組内でもメンバーが語っていたが、筆者もその辺りのことをアリス十番のメンバーにさりげなく聞いたとこがあり、やはりスチームガールズには"若さ"や"勢い"があると、気にしていたようだった。

 また、当時のメンバーたちに「スチームガールズのメンバーは、もうアリス十番を抜いて、自分たちがNo.1ユニットだと思っているんじゃないの?」と嫌がらせっぽい質問もしたことがある。しかし、返ってきた答えは意外なもので、「人気はスチームガールズの方があるが、個々のパフォーマンスの高さはアリス十番の方が上だと、ファンからも言われる」というもの。スチームガールズからアリス十番に昇格したあるメンバーも「スチームガールズの時はトップクラスと言われていたが、アリス十番に入ってからは目立たなくなったとファンに言われる」と話す。日々、互いのパフォーマンスを見ている彼女たちは、ベテランのアリス十番の方が、レベルが高いことを知っているが、実際の人気は必ずしも比例しないという現実を突きつけられていたのだ。

 一方で、この『ドキュメント72時間』を見た後にショックだったことがあった。アリス十番の最年長メンバーだった月村麗華の卒業だ。当時の彼女は26歳。アイドルを続けるには、難しい年齢だ。筆者も彼女がいつまでアイドルを続けるのかが気になっていた。当時、何かで彼女と話していたところでは、年内は続けたいという様な話をしており、頑張ってほしいと思っていたのを記憶している。そして、NHKのドキュメンタリーで、やれるところまではやるという姿勢を見せていた彼女に、ちょっと安心をしていた矢先の卒業だった。

 彼女がアイドルを卒業したとき、その心境を聞く機会があった。常設劇場もでき、勢いがついてきたときだったが、逆にライブが毎日になったことで、体にガタがきたという。「アリス十番は続けたかったが、パフォーマンスが落ちたと言われる前に卒業したい」と胸の内を明かしてくれた。本当に毎日全力でステージに挑んでいるからこその選択だったのだろう。

 そして、彼女が語った中で特に印象的だったのが、"自分の芸に対してお金を払ってもらっている"ということだ。事務所ができたばかりの頃、初めてアイドルグループを作ったが、知名度も何もなかった彼女たちは、ポスターも無料で配り、お客さんもメンバーと話したい放題。それは自分たちに"お金を払ってもらうだけの価値"がなかったからだと彼女は当時を振り返っている。今でこそ、アイドルは多くのファンに応援され、ファンはグッズにもお金を出してくれるが、それは当たり前のことではないのだと、彼女は語ってくれた。

 こうしたプロ意識を明確に持っているアイドルはなかなかいない。筆者が仮面女子をすごいと思ってしまうことのひとつは、こうしたメンバーの強いプロ意識だ。ゼロからすべてを築いてきた彼女たち。自分たちの"芸の価値"を意識しているからこそ、仮面女子はつねに全力で、真摯にパフォーマンスをしているのだと思う。
(文/桜井飛鳥)

おたぽる

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