「黒歴史」は抹消? 双日の神戸開港150年記念サイトで復刻されたマンガ『栄光なき天才たち』の改変が酷い!

1月19日(木)22時0分 おたぽる

双日「神戸開港150年」特別サイトより。

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 こんな堂々とした「黒歴史」の抹消を、誰も疑問に思わなかったのだろうか。

 日本でも指折りの総合商社・双日が2017年の神戸開港150年を記念して開設した特別サイトを見て、文字通り「開いた口がふさがらない」気分を味わった。

 このサイトでは「スペシャルコンテンツ」として、同社の源流である鈴木商店が描かれたマンガ『栄光なき天才たち』を復刻し、公開しているのである。

『栄光なき天才たち』は作:伊藤智義(一部)、画:森田信吾によって、1986年から「週刊ヤングジャンプ」(集英社)に連載された作品である。この作品の特徴は、一般の偉人伝とは異なり、異形を達成しながらも、生前は正当な評価を受けなかった人物や、栄光を逃したり一瞬の輝きだけで忘れ去られた人物を数多く取り上げている点である。

 連載当時は、話題になった作品であるが、現在は単行本は絶版。2014年にはイーブックで電子書籍化もされているのだが、どういう権利関係なのか、収録されているのが、ごく一部の作品だけになっているという、埋もれた名作なのである。

 そうした中で、読むことが困難になっていた鈴木商店編は、大正時代に第一次世界大戦に伴う好況で世界に名を轟かせながらも没落していった一大商社の姿を描いた、重厚な人間ドラマであった。

 それが再び、しかも無料で読めるとは、さすが大企業は太っ腹! そう思って読み始めた。

 物語は、明治時代に誕生した貿易商・鈴木商店が、番頭の金子直吉の采配の下で、発展していく姿を描く。とりわけ、第一次世界大戦の勃発と共に、当時ロンドン支店勤務だった高畑誠一によって手がけられた、日本を介さない三国間貿易によって、その売上は当時の日本のGNPの一割へと達していくのである……。

 しかし、栄光も長くは続かなかった!

 ……いや、長く続かなかったハズである。

 なぜ、そう記さなくてはならないかといえば、現在サイトで公開されているのは、栄光の部分だけだからである。

 そう、栄光の後にタイトル通り「栄光なき天才」となってしまった顛末が描かれるのだが、物語は「『栄光なき天才たち・鈴木商店』双日特別版は、こちらで終了となります」と、予想外の打ち切りになってしまているからである。

 ナンダ、コレは……と、驚きながらサイトの下部を見てみると「載された全てを掲載してはおりません。ご了承ください」と、連載当時を知る読者の怒りを、最初からわかっていたかのような断り書きが。

 本編では、この後、大戦の終了と共に好況が終焉。さらに米騒動を経て、昭和恐慌に飲み込まれる形で鈴木商店は倒産へと至るまでのドラマが克明に描かれていた。

 だが、そこは会社にとっては、なかったことにしたい部分であろう。なぜなら、倒産を前に、もう鈴木商店には先がないことを見切った高畑誠一が密かに社員に声をかけ、破綻後に設立した新会社が日商、双日となったことが描かれているからである。

 実業家としては評価すべき「見切り千両」の場面だけれども、読み方によっては会社を裏切ったと、とれなくもない。さすがに、そこまでを自社の歴史として公開してしまうのは、ためらいがあったのか?

 だったら、こんなサイトにしなければよかったのに……。幻の名作に再会した喜びが、一転裏切られた気分になった新年である。
(文=昼間たかし)

■双日 神戸開港150年 特別サイト
http://sp.sojitz.com/kobe150/

おたぽる

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