蔓延する「残念和食」 外国人の理想とは程遠い日本の食卓

1月19日(金)16時0分 NEWSポストセブン

「Today’s menu is grilled mackerel!(本日のメニューはさばの塩焼です)」


 英国・ロンドンにある和食オンラインデリバリーサービス『WASO(和惣)』のオーナー・吉村俊宏さん(30才)が届けるお弁当を開けると英国人の常連客たちは恍惚の表情を浮かべた。だしやドレッシングもすべて手作りにこだわった『WASO』の“本物の和食”は現地の人々を虜にし、年間300食を注文するお得意さんもいる人気ぶりだ。今後は店舗も出していきたいと吉村さんは意気込む。


「英国人にもすっかり日本食は浸透していて、週に1回はランチで食べるという人は2割くらいいるんじゃないでしょうか。『WASO』では、みそ漬けしゃけの焦がししょうゆ焼きやさばのみぞれ煮、から揚げなどが人気です」(吉村さん)


 2013年に無形文化財に登録されて以来、留まることを知らない世界の和食ブーム。農林水産省によると、海外の日本食レストランはここ2年で約8.9万店から約11.8万店と、3万店近く増えている。しかし、そのお膝元である日本の食卓では、外国人の理想とはほど遠い光景が広がっていた。


 そんな食卓の危機を著したのが、現代の一般家庭の食卓を写真に記録した『残念和食にもワケがある——写真で見るニッポンの食卓の今——』(中央公論新社)だ。同著には、「白いご飯は味がないから嫌だ、と子供が食べないから出さない」「ラーメン以外はすべてスプーンで食べる。お子様プレートは盛りやすく片付けやすいから大人もよく使う」「ピザと刺身を組み合わせる日もある」「みそ汁は作らない。代わりに牛乳や麦茶を飲めばいいから」など衝撃のレポートが記載されている。


 共働きで2児の母である村上冬美さん(34才・仮名)は「うちも『残念和食』です」と言うが、そのことに恥ずかしさも罪悪感もないと話す。


「だって、ちゃんとした和食って、ご飯、みそ汁、主菜、小鉢と品数も多いし、洗い物がたくさん出るから、仕事と育児に追われる私にはとても作れないんです。うちの夕食はおかずをご飯にのせる『のっけご飯』が定番。おかずはアボカドと卵焼き、目玉焼きにマヨネーズとのり。カフェ飯みたいにスプーンで食べれば、洗い物も少なくて済む」


 主食の重ね食べも少なくない。主婦の佐野ゆきえさん(29才・仮名)は、子供が食べてくれるなら、とあっけらかん。


「5才になる娘の好きな定番メニューはフライドポテトと焼きそばにご飯。焼きそばは味がしっかりしているからおかずとして成り立つんです」


 なかには調味料を捨ててしまったというツワモノまで。めんつゆ信者の田所容子さん(43才・仮名)は笑いながら話した。


「“調味料のさしすせそ”は台所に1つもないですね。めんつゆとポン酢さえあれば、大丈夫。肉も魚も野菜も、それで味付けすればたいていはおいしくなる」


 情報番組『噂の!東京マガジン』(TBS系)の『やって!TRY』は、街頭や遊園地などで若い女性に声をかけ、料理に挑戦させる名物コーナー。昨年12月3日放送回は「かきあげ」作りにチャレンジする回だったが、ある女性は「かき」を油で揚げて、スタジオを唖然とさせた。


 長年同番組に出演し、和の食材を大切にしているフレンチレストラン『オー・ギャマン・ド・トキオ』の木下威征オーナーシェフが言う。


「もちろん昔から料理の手順がわからない若者はたくさんいましたが、できないにしても素材や料理そのものについては知っていました。しかし今の子は、例えば『かつおのたたき』を作るとき、さんまやさばを選んでしまう。魚の名前もわからない子が多いのは、昔は魚も魚屋で1匹買って自宅でさばくことが多かったけれど、近年便利になりすぎてスーパーに並ぶ魚も切り身パックのタイプが多く、魚の判別も難しくなったからでは…」


※女性セブン2018年2月1日号

NEWSポストセブン

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