フェイクニュース作りの新手法 掲示板の意見を「情報」扱い

1月19日(土)16時0分 NEWSポストセブン

対立する意見を生み出すところから始まるフェイクニュース

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 フェイクニュースはなぜ生まれ、広まってゆくのか。その背景には、それが事実か否かに関わりなく、アクセス数が伸びる扇情的なものだけを求める作り手が存在する。ネットの海に漂うものを恣意的に集めてフェイクニュースを形作るまとめサイトのなかには、その漂うものを生み出すことにまで手を出している者たちがいる。ライターの森鷹久氏が、目先の利益のために元まとめサイト作成人に、フェイクニュースを生み出す方法を聞いた。


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 昨年話題になったキーワードの一つに「フェイクニュース」がある。2016年のアメリカ大統領選の頃から指摘されてきたフェイクニュースの存在は、昨年の沖縄県知事選挙をはじめ、国内の選挙の際には必ず取り沙汰される話題となってしまった。特に「フェイクニュース」の温床として指摘されているのがネット上の「まとめサイト」、さらには有象無象の「バイラルメディア」である。


 筆者もいくつかのまとめサイトやバイラルメディアの管理人、作成者にコンタクトを取り、それらが「カネのため」に、そして「集客のため」だけに極めて恣意的に作られている「偽ニュースサイト」であることを明かしてきたつもりだが、最近、フェイクニュースの作り方に新たな“手法”が生まれたという。筆者がウェブサイトに発表した記事を無断で動画サイトに転載していた、都内在住の会社員・S氏が明かす。


「まとめやバイラルサイトでは、ネット上の意見を“情報”として報じます。それが事実なのか間違っているのかは問いません。こうした意見がある、としてニュースにするだけで、あくまでも私やサイトの見解ではない、という姿勢です」(S氏)


 実はS氏、筆者の記事を丸パクリして動画に転載しただけではなく、筆者の記事に否定的なネット掲示板上の意見だけを抽出し、動画サイト上に記載していた。再生数はわずか数百回ほどで、数円に満たない収入しか得られなかったとするが、筆者がDM(ダイレクトメール)で無断転載を指摘すると、動画を取り下げ謝罪し、今回の取材を受けてくれる運びとなったのだ。


 S氏は昨年まで、複数のまとめサイトやバイラルメディアと運営していたが(現在はすべて閉鎖)、ニュースを作る際に、人目を集めそうなキーワードやネタまでも自作自演し「ネットにはこんな声もあります」の部分まで、ねつ造していたというのである。


「ネット上にある意見であればニュースになる、ということは、耳目を引きそうなネタを自ら匿名でネットに書き込めばいいのです。自分でネット掲示板などに書き込んだネタを自分のサイトで取り上げれば、それがニュースになるのです。ただ、長年の掲示板ユーザーには当然見透かされているのですが…」(S氏)


 実際に掲示板などに「まとめやすい」ネタのスレッドを立ち上げ、それをそのまま自身のサイトにまとめて記事を作っていたS氏。その過程で「自らネタを作る」手法を思いついたと証言する。


「ネットに書き込まれていた情報を転載しただけ」としつつ、個人への誹謗中傷のコメントばかりを掲載していた、とあるまとめサイト作成者が訴えられた裁判において、昨年末、最高裁はサイト作成者側に賠償を命じる判決を下したケースがある。自分が書き込んだ言葉でなくとも、ある方針に基づいてまとめて掲載すれば、まとめた人物にも責任が発生すると法的に認められたのだ。だが、そもそも「ネットの書き込み」そのものが作成者側の自作自演によるものであれば、まとめただけより悪質性はより際立っているではないか。


「最近は書き込みだけではありません。とあるまとめサイトでは“日本に否定的な人物”というユーザー像のツイッターアカウントを複数開設し、それらの書き込みをサイトでまとめてニュースにしています。これらはサイトの運営者や、時にはライターによって行われておりネタを無限に作ることができる…。韓国人や中国人風の名前のアカウントを作り、日本の悪口をツイートすると、それが“反日外国人の意見”としてニュースになる、という流れです」(S氏)


 S氏がこのように指摘するアカウントは、現在も複数確認できた。確かに一見すると「反日的な外国人」による日本への悪口の羅列に見えなくもない。しかし、ニュースを意図的にミスリードしていたり、個人への誹謗中傷、具体的に言えば右派系まとめサイトでウケそうなネタばかりを選んでつぶやいており、意図的に煽情的な言葉を使って発信しているように感じられる。


 これら「なりすましアカウント」の一つなど、設定では「日本に住む在日朝鮮人」だったが、アカウントのアーカイブには「東京在住の日本人」であることがわかる書き込みや、筆者も寄稿していたことがある保守系論壇誌のツイートのリツイートなども見つかった。


 各メディアがファクトチェック班を立ち上げるなど世界中で対策が叫ばれる中、フェイクニュースやその作り手たちは、次のフェーズに移行したと言えるだろう。ネットの登場で「様々な情報」に誰でも気軽にアクセスできるようになった反面、ますます「真実」が見えづらくなってしまった“高度情報化社会”が生まれたことは、皮肉というほかない。

NEWSポストセブン

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