松本人志の発言は置いてけぼりの昭和世代ハラスメント?

1月19日(土)7時0分 NEWSポストセブン

松本人志の発言に指原はジョークで応酬

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 作家の甘糟りり子氏が、「ハラスメント社会」について考察するシリーズ。今回は、波紋を呼ぶ松本人志の発言に言及。


 * * *

 本当に驚いたし、あきれた。世の中のたいていの人と同じように。例の松本人志の「お得意の身体を使って〜」という発言についてである。


 ツイッターで知ったので、文字通り目を疑った。SNS、特にツイッターは文脈を無視して一文だけを切り取り、悪意を持って拡散されることが多いので、検索して動画を確認した。無責任に揚げ足を取られているわけではなかった。前後も含めて、何度も見た。あまりにも信じがたい言動だったから。


 アイドルグループの女の子がファンの男性から暴行を受け、それが本人の告発によって、一か月もたってから明るみに出た。それについて、グループのリーダー的存在である別の女の子が、松本人志が司会の番組に出演して、興行を運営する側を批判した。きっと勇気が要る行動だっただろう。コメンテーターの社会学者が「それならあなたが(運営の)トップに立ったらいいんじゃないですか」といい、一同がそれに賛同する。なるほど建設的な考えである。彼女は、運営とメンバーの間に立つ人間が必要だけれども、トップで束ねるのはそんなに簡単なことではない、というようなことを答えた。すると、松本人志は、「それは、お得意の身体を使ってなんかするとかさ」といったのだ。枕営業的な意であるのは明白だ。


 この流れのこの時期に、この話題で、この人に対して、そういうことをいうのか。彼も新聞を読んだりニュース番組を見ていないわけでもないだろうに。もしかしたら、自分は別の世界にいるとでも思っているのだろうか。疑問ばかりが頭に浮かぶ。「お得の身体を〜」がまさかおもしろいジョークのつもりだったのか。ジョークであっても許されるものではないけれど。


 今、世の中の意識が変わりつつある。2017年10月、ハリウッドの権力者がセクハラで告発されたことがきっかけで、世界中に大きな波が起こった。日本のそれは残念ながらそれほど大きなものとはいえないけれど、でも、起こった。セクシュアルハラスメントは、気にしないふりをして軽くいなすことでも、唇を噛み締めて耐えることでもなくなった。きちんと異議を申し立てるべき案件になった。


 セクハラだけではなく、パワーハラスメントや人種差別など、あらゆる立場の人の人権が尊重される時代なのだ。いや、時代になりつつある、ぐらいかもしれない。どちらにせよ、弱者の声が前よりは世の中に届くようになった(なりつつある、か)。


 ググってみたら、松本人志は1963年9月生まれ。1964年生まれの私とは一歳違い、ほぼ同年代である。最近、痛感するのは同世代の人たちの個人差だ。ハード面とソフト面の両方で、世の中の流れになんとかついていっている層と、まったくもって置いていかれている層の差が激しい。置いていかれている層はなんとなくおもしろくないから、ますます頑固になり、余計に置いていかれる。


 ハード面とはネット回り(例えばキャッシュレス、ダウンロード文化、連絡手段など)に対してであり、ソフト面とはこうした世の中の意識に対してである。両方とも、この2年ぐらいでがらっと変わった。少なくとも、昭和生まれはそう感じざるを得なかった。今の基準に照らし合わせたら、私も過去にハラスメント的な発言や行いをたくさんしてきていると思う。


 松本人志の立場だと、変化についていけなくもいらだちなど感じる必要がなかったのかもしれない。実際、例の動画の続きでは、社会学者も後輩の芸人も、「身体を使って〜」発言を無視したり咎めたりするどころか後押しをしているのである。ぬるま湯に浸かっているうちに、お湯の温度がわからなくなってしまったのだろう。哀れな気もしてきた。同世代としては、55歳の男性にまだ「老害」なんかにはなってほしくないなあと切に願う。


 さて、「身体を使って?」発言を浴びせられた件のアイドルが、ツイッターで「松本さん、干されますように」と絵文字を使って呟き、笑い話にしてしまった。こういう対応、昔はよく見かけた。男性側からはいい女扱いされることも多い。やさしい対応だし、彼女の立場では最善の策なのだろうが、これがスタンダードになるべきではない。

NEWSポストセブン

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