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大量の謎と伏線を散りばめた大人ドラマのはじまり/『カルテット』第一話レビュー

messy1月20日(金)2時0分
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ドラマ『カルテット』公式webサイトより

 1月17日にスタートしたTBS火曜ドラマ『カルテット』。初回の平均視聴率は9.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)でした。妥当な数字ではないでしょうか。

 放送前に番組㏋を覗いてみました。夢が叶わなかった30代の弦楽奏者男女4人が“偶然”出会って軽井沢の別荘で共同生活を送ることになりますが、(もちろん)それは単なる“偶然”なんかじゃなく大きな秘密がある……という“大人のラブストーリ”דヒューマンサスペンス”だそうです。“ヒューマンドラマ”はわかりますが、“ヒューマンサスペンス”ってちょっとややこしい言葉だな〜。ちなみにタイトルに使われている“カルテット”とは、4人組あるいは四重奏という意味です。

 脚本は、「人間ドラマの名手」こと坂元裕二。『Mother』『それでも、生きてゆく』『woman』『最高の離婚』『問題のあるレストラン』など、社会問題含みのドラマを多く手掛けてきたベテランです。四重奏を組む弦楽奏者の男女4人を演じるのは、「30代を代表する実力派俳優」である松たか子(39)、満島ひかり(31)、高橋一生(36)、松田龍平(33)。なかなか濃厚な顔ぶれですな。個人的には、今から約20年前の90年代後半、小5の冬に見た月9ドラマ『ラブジェネレーション』でキムタクの相手役を演じていた松たか子と、“自分と同世代の女優”である満島ひかりが“30代実力派俳優”と同じカテゴリーに入れられていることに、ちょっとした衝撃を受けました……。確かに公式プロフィールではお2人とも30代なので、間違っちゃいませんが。

 第1話は、4人が“偶然”出会い、カルテットを組んで最初の演奏を披露するまでのお話。ある日、無職のチェリスト・世吹すずめ(満島ひかり)がストリートミュージシャン風に路上で演奏しているところに謎の老女(もたいまさこ)が現れ、1万円札を差し出しながら「すずめさんですよね? あなたにお願いしたい仕事があるんです」と声をかけてきます。老女は「この女性と友達になる仕事です」とすずめに1枚の写真を見せました。写っているのは元プロヴァイオリニストで現在はセレブ主婦の巻真紀(松たか子)。しょっぱなからきな臭い雰囲気です。HPの宣伝にもあった通り、出会いは“偶然”なんかではなく、仕組まれたものだということが視聴者にもわかるのですが、真紀、すずめ、ヴァイオリン奏者・別府司(松田龍平)、ヴィオラ奏者・家森愉高(高橋一生)は、“東京のカラオケボックスで偶然出会ってしかも4人とも弦楽奏者で、運命を感じて四重奏(カルテット)組むことになった”として、有名指揮者である司の祖父が所有する軽井沢の別荘に集まります。

 家庭があるから週末だけ別荘に来るという、結婚3年目、広告代理店勤務の夫を持つ真紀は、金持ちらしいのにじめっとした暗い女で、極度に声が小さく、目は泳いでいます。夫は「君の好きにしていいよ。君は君らしく」と週末のカルテットを理解している、と彼女は説明します。けれどいざ口を開けば核心を突くことを理論的に話しはじめる、謎多きキャラクター。

 トイレであろうがどこでだって寝られるすずめは、中途半端なハーフアップお団子のヘアスタイルで三角コーヒー牛乳ばかり飲んでいて、マイペースでやや不思議ちゃんの印象です。初めて4人が音を合わせる時は靴下を脱ぎ捨てて「はぁ〜、ミゾミゾしてきたぁ〜」とみすず用語も登場。クセが強いキャラです。



 愉高は軽井沢の美容室に勤務していますが、35歳にしてアシスタントでアルバイトの身。言動は理屈っぽいかチャラいかのどっちかで、どうやら面倒くさい男のようです。“唐揚げにレモンをかけるかけない論争”や「ノーパン」発言ですずめと小競り合いをしていますが、眠り込んだすずめを部屋に運んで寝かせた時は彼女のおでこをそぉっと撫でていました。愉高は何かしらの事情を抱えているのでしょう。怪しげな男(Mummy-D)から逃げている様子です。

 愉高とは対照的に、「ふくろうドーナツ」勤務の会社員である司は育ちがよさそうな真面目系。祖父が著名な音楽家であり、別荘を練習場所として提供した司は4人のまとめ役的存在で、真紀を何かと気遣っている様子が見られました。4人で撮影した画像をパソコンで見る時は真紀だけをズームアップ。もしかして以前から彼女のことを知っていた……? その一方で平日は会社の同僚(菊池亜希子)とも仲良さげです。

 主要登場人物の紹介が終わったところで、ストーリーを進めましょう。軽井沢にあるライブレストラン「ノクターン」では、“余命9ヶ月のピアニスト”ことベンジャミン瀧田(イッセー尾形)が定期的に演奏しているのですが、“余命9ヶ月”って言いはじめてからもう1年過ぎていて、お店側も困惑気味です。真紀によると、ベンジャミンは数年前から名前を変えて全国のあちこちで“余命9ヶ月”と宣伝して演奏しているらしいですが、「嘘ついて舞台に立って客を取るなんてあり得ない! 音楽やっている人間として絶対許せないし!」とブチ切れる者は4人の中に1人もいませんでした。愉高や司なんて「ご病気じゃしょうがない」と寛容なことを言います。自分の演奏を聴きに来てくれた4人をベンジャミンは歓迎し上機嫌、酔っぱらったまま彼らを自宅に招き入れますが、粗末で散らかったアパートの一室からは、好きなことで成功した人間の暮らしとは程遠い暮らしぶりが窺えます。4人は眠ったベンジャミンに布団をかけ、シンクに溜まった食器を洗ってやりました。

 ところが翌週、真紀は「ノクターン」に出向いてベンジャミンの嘘を暴露します。えっ、怒ってなかったじゃないですか。なんで……。結局、店側はベンジャミンの演奏を断り、空いた枠で4人は演奏できることになりましたが、愉高や司は真紀の行動が理解できません。ベンジャミンの部屋の壁には、栄光や幸福を手にしていた頃のポスターや家族写真もありましたが、それらはすべてマグネットやテープを使って貼られていました。ベンジャミンのように躊躇なく画鋲を刺せない人間(=賃貸住宅にしか住めない経済状況)が音楽を続けていくには嘘をつくしかなかった(そうでもしなければ演奏できる場所がない)、あの人は好きな音楽を続けたかっただけだと、ベンジャミンの立場に立とうとする愉高や司に真紀は「それはベンジャミンに対する思いやりではなく、ベンジャミンの姿に未来の自分を重ねているからだ」と容赦ない指摘をします。さらに「私たち、アリとキリギリスのキリギリスじゃないですか。音楽で食べていきたいっていうけど、もう答え出てると思うんですよね。私たち、好きなことで生きていく人にはなれなかったんです(中略)こっちだって奪い取るしかなかった」と饒舌に続ける真紀に圧倒された愉高、司は「ごめんなさい」と謝るしかなく……。



 坂本脚本ならではの長い台詞応酬シーンはまだまだ続きます。今度はすずめが「でも真紀さんには帰るとこあるじゃないですか。(中略)躊躇なく壁に画鋲させますよね」と真紀を執拗に攻撃します。喧嘩腰というより冷めた口ぶりながら、粘着質に夫のことを質問しまくるすずめに怯まず、真紀は再び饒舌に語り出します。結婚後、いつも夫の好きなものを探りながら料理をしていた真紀がある日唐揚げを作って出したところ、夫は今までにないくらい喜んで食べてくれ、以来唐揚げが定番メニューに。しかしある時たまたま居酒屋で夫を見かけます。夫は唐揚げを注文していましたが一緒に来ていた後輩にレモンをかけるか聞かれ、夫は「いい。俺、レモン好きじゃないから」と答えていました。でも、真紀は2年間ずっと、夫の目の前で、夫の食べる唐揚げにレモンをかけていたのです。そのことが許せなかったと言う真紀に、愉高と司は「それは夫さんの優しさ、気遣い、愛情」だと擁護するのですが、なんだろう……許せないというか、ショックですよね。「レモン好きじゃない」と教えてくれればいいのに、そうしないで我慢して食べている夫。真紀はもう夫の言葉の色々が、たとえば「美味しい」とか「楽しい」とかが彼の本音なのかどうかわからなくなって、何も信じられなくなったんじゃないでしょうか。さらに、居酒屋で真紀の夫は後輩に「奥さんのこと愛しているんですか?」と聞かれ「愛しているけど好きじゃない」とも答えていたそうです。

 そんな真紀の夫は、1年前失踪しました。「夫婦って別れられる家族」「人生には3つ坂があるんですって。上り坂。下り坂。まさか」「人生ってまさかなことが起きるし起きたことはもう元には戻らないんです。レモンをかけちゃった唐揚げみたいに」と、名言を吐きまくる真紀は、もう帰るところがないしここ(別荘)でみんなと音楽と暮らしたいと宣言しました。

 ほかの3人はというと、すずめはもうすっかり別荘に居着いている様子です。ドラマ冒頭、東京の路上で演奏していたすずめですが、詳しい過去は不明です。前から軽井沢付近に住んでいるはずの愉高も「一緒にいればカルテットの結束も固まる。僕はずっと暮らす」と週末以外も別荘で生活することにしたようです。すずめも愉高も、今まで住んでいた家は引き払ったのかそのままにしてあるのか、よくわかりません。2人ともお金に余裕はなさそうです。ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラといった弦楽器は、裕福な家庭の人間がたしなむ音楽のイメージがありますが……。別荘は司の祖父所有ですが、司はいつから別荘で暮らしているのか、カルテットを組む前のことはやはり不明です。ほかの3人も帰るところがないのでしょうか。

 “ベンジャミンの嘘告発”と“真紀の夫さん”を巡って繰り広げられた4人のぶつかり合い。ですが、感情をぶつけ合っているように見えて、4人ともまだ本性を見せるには至っていないというか、どこか上っ面感があります。知り合ってカルテットを組んで間もないのだから当然かもしれませんが、デリケートで際どい話をしているにもかかわらず、みんな仮面をつけている感じで、視聴者側は4人それぞれの真意を捉えかねます。不気味だな〜、こいつら一体何を考えているんだ? という感じ。真紀にしても、ベンジャミンや夫のことでかなり饒舌になっていましたが、べらべら繰り出す言葉たちが彼女の本心そのものというわけではなさそうです。



 さて、口論しつつも練習を重ね、「ノクターン」での演奏本番を迎えた4人。4人のグループ名(?)は当初、「Quartet Doughnut(カルテットドーナツ)」でしたが、元地下アイドルで炎上経験豊富・笑顔だけど目は笑っていないアルバイト店員・来杉有朱(吉岡里帆)が“ベンジャミンから聞いた話”として「音楽っていうのはドーナツの穴(hole)のようなものだ。何かが欠けている奴が奏でるから音楽になるんだよねって。全然意味わかんなかったですけど。フフフフフゥ〜(嫌な笑い方)」と彼らに告げたことから、「カルテット・ドーナツホール」に変更になりました。ドーナツの食べられる部分じゃなくて、穴のほう。何もないほう。

 それにしても、4人はどうして“偶然”東京のカラオケボックスで出会ったのでしょうか。

 あくる朝、ヴァイオリンを弾きながら涙を流す真紀。愉高と司は仕事に行った後で、寝起きのすずめだけに見られてしまいました。「風邪かな」とごまかす真紀、すずめは愉高の高級ティッシュ『紫式部』(1個1,600円)を無断で持ち出して真紀に差し出します。愉高、安月給だと思うんですけど高級ティッシュ使いたがる男なんですね。プライド高そうな愉高がなぜ田舎の美容院で“こき使われる”アシスタントの仕事を続けているのかもまた気になる。

 1枚抜いたら2枚、2枚抜いたら3枚出てくるティッシュを「追い詰められた連続殺人犯みたいですね」と例えるすずめのブラックジョークに真紀は笑います。すずめはさらに「どうして曇っていると天気悪いって言うんですかね。いいも悪いも曇りは曇りですよね」「私は、青空より曇った空のほうが好きです」と言います。「ありがとうすずめちゃん、私も青空より曇った空が好きです」と真紀。世間一般から見れば屈折発言に分類されるような言葉で同調し、メンヘラと形容されるような女2人の距離が縮まったかのように見えましたが、すずめは間違いなく用意された“偶然”で真紀と出会ったのだということを忘れちゃいけません。すずめはリビングテーブルの裏側にボイスレコーダーをくっつけ、会話を録音していました。裏で糸を引く老女・巻境子は真紀の義母。「息子は失踪なんかしていません。この女に殺されたんです。必ずどこかで本性が出ます。それまで友達のふりを続けてください」と言う境子に、すずめは「ミゾミゾしてきました」と言って三角コーヒー牛乳をすすります。真紀が夫を殺した女だとしたら……すずめ、怖くないんですかね。誰も彼も得体の知れないこのドラマ、一体どこへ向かっていくのでしょうか。

 夢が叶わなかった男女だけあって4人とも屈折した心理が随所に垣間見られるうえ、メッセージ性がわかりやすいドラマでもなさそうで、万人受けする作品じゃないかもしれません。しかし謎が多く、真相が気になる展開でもあります。第1話で4人の正体が気になった方は見続けるのではないでしょうか。

 エンディングソングはDoughnut Hole(松たか子、満島ひかり、高橋一生、松田龍平)が歌う主題歌『おとなの掟』(作詞作曲/椎名林檎)。ドレスアップした4人が妖艶な表情で声を合わせます。松さんと満島さん、歌声に定評のある女優陣はさすがの迫力ですが、高橋一生さんのセクシーボイスも評判を呼んでいます。えろい。巧い。放送中、愉高が(見知らぬ女子大生と)キスしたりシャツのボタンを開けたりするたびに高橋さんのファンはTwitterで「キャー!」と悶絶・絶叫していましたが、確かに色気ありますね。エンディングムービーでは司が真紀に接近する場面も一瞬だけありますが、「全員、片想い 全員、嘘つき」4人の恋の行方はどうなるのでしょう。とにかくドラマ全体に靄がかかっているような印象で、4人がどこから来てどこに向かっていくのか見当もつきません。ここまで見当のつかないドラマも珍しい気がします。

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