このSMバー、うらやましい! 六反りょう『アフター5の女王たち』第1巻

1月20日(水)16時0分 おたぽる

『アフター5の女王たち』 (六反りょう/星海社)

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 六反りょう『アフター5の女王たち』第1巻(星海社)は、いろいろ世間には公表しにくい性的な趣味を持っている人を楽しく救ってくれる作品である。

 物語のヒロイン・まどかは、会社ではキラキラ系女子から物笑いの種にされているモサい眼鏡ブス。でも、アフター5になると彼女は、本当の自分をさらけ出す。高校生の時からなりたいと願っていたSMの女王様として!

 というわけで、本作はSMバーの見習い女王様となった、まどかの奮闘記である。作者はリアルにSM女王様の経験があるそうで、経験が作品中に存分に生かされている。その生かし方も、知識をひけらかすものではなく、物語の中で、そっと挿入してくれるので、読んでいるうちにSMの知識も増えてくるし(SM用の低温ロウソクは舌に垂らしてもまったく熱さを感じないとか)、リアルにSMプレイを試したことのない人にとっては、驚く部分も多いのではなかろうか。

 基本、ギャグテイストで描かれる物語ではあるが、その根底にあるのは登場人物たちがSMによって救済される姿である。物語の冒頭で、まどかの働くSMバーにやってきたのは、会社で一番のイケメン・村上。まどかが「ブス」などといわれ蔑まれ虐げられてきた人生を女王様になることで見返そうとしたのに対して、村上は支配されることを求めてSMバーへとやってきた男。そんな2人が、一人前の女王様と奴隷という関係を築くことができるかが、今後の物語の大きなテーマになりそうな予感がする。

 これが意味するところは、理想的なSMの関係は、たとえ金銭をやりとりしても即席で出来上がるものではないということだ。なぜなら、マゾ男が心も体も女王様に支配され、委ねることができるようになるには、まず信頼関係は必須。そのためには、自分もある種の悟りの境地に入らねばならぬのだ。

 作中に登場するベテラン(?)のM男・森田社長はいう。「M奴隷で何がよかったって自由でいられることだね」と。「M奴隷は生きるも死ぬも女王様次第。ただ身を任せていられる自由があるんだ」と。実際、自らがマゾと自覚した男性であっても、この境地に達するのは相当な修行、そして悟った者だけだろう。自らの性的欲求を最優先するというM男を脱して、その先の満足を得るようになるのは、なかなか困難であろう。

 そう考えると、本作は創作であるがゆえに、実に理想的なSM世界である。何しろ、登場する女王様もM女もM男も、既にSMの真髄を理解しているか、あるいは、その境地へ至ろうと努力を惜しんでいないからである。

 そしてもう一つ。リアルにSMを体験している人ならば「みんな理想的なSMパートナーを見つけることができていて、うらやましい」と感じるだろう。とりわけM男にとっては、理想的なパートナーを見つける行為は、新天地を見つけるための、あてどもない旅とも似ている。こうした作品を通して、SMとはなんたるかを知り、興味を持つ人が増えてくれるとよいものだと、節に願っている。
(文=ピーラー・ホラ)

おたぽる

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