DISCOMPO with 泉茉里 - コロナ禍に誕生した新時代オンラインユニット、待望の初シングルをCDでリリース!

1月20日(水)13時30分 Rooftop

毎週木曜日の会議は(M)otocompoからの流れ

──本題に入る前に、昨年の10月14日にLOFT9 Shibuyaで開催した「短編映画『DISCOMPO』公開記念イベント」のことから聞かせてください。結成以来初の集客イベントをやってみていかがでしたか。

Dr.Usui:メンバーが全員集まったのはあのイベントで4回目だったのでぎこちなさはありつつ、毎週木曜日の夜にYouTubeで配信している「DISCOMPO ZOOM会議」にコメントを書いてくださっていると思しき人たちとお会いできたのが新鮮で面白かったですね。ああ、こういう人たちだったんだ、みたいな。

絢屋:Dr.Usuiはメンバー3人とそれぞれ面識がありましたけど、僕はまだ数回しか会っていなかった茉里ちゃんや名嘉真監督と話をすること自体がすごく新鮮でした。それを皆さんの前で聞いてもらえるのがこんなにも嬉しいことなんだなと思ったし、それを体感させてもらえたことは個人的にとても有意義なものでした。

──当日は短編映画『DISCOMPO』のディレクターズカット版を上映されたそうですね。

Dr.Usui:そんな大それたものでもなくて(笑)、ファーストテイクにあったCGのミスを修正した程度のものなんです。

絢屋:僕のCG内での立ち位置がちょっとズレていたみたいで。

Dr.Usui:もはや名嘉真監督にしか分からないレベルで、われわれが何回見ても分からなかったし、別にズレてておかしいことでもなかったんですよ(笑)。

──お客さんの前でトークをすればリアクションも当然あるでしょうし、いつものZOOM会議にはない手応えがあったのでは?

Dr.Usui:目の前にお客さんはいるものの、皆さんマスクをして声をなるべく出さないようにする状況だったので、オンラインの状況とほぼ一緒だった気がします。むしろオンラインのほうが見てる人もコメントを言いやすいし、賑やかな感じはしないけどコメントがあったほうがコミュニケーションはしやすいですね。

──今回の経験を踏まえて、また映画の製作やそのお披露目となる集客ありきのトークライブをやりたいと考えていますか。

Dr.Usui:映画はいつかまたやってみたいという気持ちが僕にも芽生えましたけど、スタッフや予算の兼ね合いをもっと勉強しなきゃですね。今回は短編で、限られた時間と制約の中で無我夢中でやりましたけど。トークライブに関してはそういうご縁があればというか、話して面白いテーマがあればやりたいですね。あと、毎週やっている木曜日の配信を集まってやる、それをイベント化するのも意義があると思います。あのZOOM会議は誰かがお休みしながらも、今まで特番を含めて35回ほどやり続けてきたし、今年も引き続き木曜日の夜に必ずやるつもりなんです。毎週そのZOOM会議のために時間を空けてくださっている方が全国にいらっしゃいますしね。

──そもそもなぜ木曜日の夜なんでしょう?

Dr.Usui:週の真ん中の水曜日や週末の金曜日だとみんな何かと予定が詰まっているので。あと実は、前身バンドである(M)otocompoのメンバーが毎週木曜日の夜9時に必ず集まっていたんです。練習だったりミーティングだったり、表に出る形ではないにせよ必ず顔を合わせていて、今もZOOM会議を木曜日の夜にやるのはその流れもありますね。金曜日だと一般的に飲み会とかイベントも多かったし、木曜日はいろんな予定と被りにくいので好都合だったんです。

絢屋:もともと僕たちは木曜日の体が整っていたので(笑)、毎週木曜日に会議をやるのを茉里ちゃんと名嘉真監督に提案したところ大丈夫という返事をもらったんです。

──毎週会議を休みなく続けて、話し合うテーマが尽きることはないものなんですか。

Dr.Usui:茉里ちゃんが企画を考えてくれて、それを試してみた時期もあったんですよ。今月は見てる人の質問に何でも答えてみたりとか。それと10月14日のイベント以前は、メンバー同士のコミュニケーションを図るためにメンバー総当たりの対談シリーズというのもやりました。選ばれたメンバー2人だけで対談して、あとの2人は抜けたりオフってずっと話を聞いてるみたいな。お互いに知らないことを話せばお互いの理解も深まるし、視聴者の皆さんも新鮮に感じてもらえるんじゃないかと思って。(絢屋に)メンバーがリアルに会った回数は、イベントの後に2回集まったからまだ6回?

絢屋:両手(の指の数)以内ですよね(笑)。

Dr.Usui:だけど毎週ZOOMで顔を合わせているし、今や普段からよく会っている人みたいな感じにはなった気がします。

「シャドウ・ヴィーナス」の仮タイトルが「三四郎」だった理由

──Usuiさんが「(CDの)発送先リストを見ると全国各地に散らばっていて、オンラインユニットの面白さが可視化されたような気分になります」とツイートされていましたが、40回近く会議を続けてきたからこその成果と感慨もあるでしょうね。

Dr.Usui:全部の回を見てくださっている皆勤賞の方はおそらく数十人だと思うんですけど、そういう人たちが今回のCDリリースを発表してすぐに注文してくださったんです。リストを見ると、いつものハンドルネームと違うから誰が誰だか分からないけど、自分が思っていた以上に女性のリスナーが多かったりして驚きました。ハンドルネームだけだと性別は分かりませんから。それと、あえてコメントを残さない方も大勢いらっしゃったことがリストで分かったし、CDをリリースすることになっていろんなことが判明して面白かったですね。最初は茉里ちゃんのファン、名嘉真監督のエイプリルズのファン、(M)otocompoのファンがそれぞれ興味を持ってくださったと思うんですけど、ZOOM会議を半年ちょっと続けてきたことでDISCOMPO with泉茉里のファンが徐々に増えて、そういう人たちが集える場がだんだんできてきたことがすごく嬉しいです。

──去年の11月21日、結成半年で初めて全員揃っての練習が行なわれましたが、それはシングルのレコーディングに備えたものだったんですか。

Dr.Usui:シングルのレコーディングはすでに終えていて、あれはオンラインでライブをやるために何ができるかを模索する会だったんです。一度みんなで会って、音を鳴らしたり唄ってみたりしながらどんなことができるか試してみようっていう。名嘉真監督にはカメラを持ってきてもらって、こんなふうに撮れば画になるかな、とか。雰囲気のあるスタジオを借りて、こういう所で撮ればいい画が撮れるんじゃないかとか、みんなでああでもないこうでもないと半日くらい話し合ったんです。

──ああ、1月21日に配信されるというファーストライブセッションのための集まりだったわけですね。

Dr.Usui:そうなんです。実は12月末にみんなで集まってライブをやりまして。

絢屋:初めての練習のときは簡易的にギターを一本持ち込んだだけだったんですけど、そこで感触を掴めたので、ライブセッション収録の際はアコギとかいろんな楽器を持ち込んだりしたんです。

Dr.Usui:どんなライブに仕上がっているかは見てのお楽しみですね。過去のZOOM会議ではどういうことをやろうかと話し合っていて、かなり白熱した議論もしたんです。それを見ていただければおおよその内容が分かるかもしれませんが、あまりイメージできないというか、ちょっとイメージを裏切る感じにもなるんじゃないかと思います。

──今回のCDですが、「シャドウ・ヴィーナス」と「輪郭」の2曲だけというのがもったいない気がして。結成当初にミュージックビデオで発表した「Boys, Boys, Boys.....」や「Another Century」といった名曲もあるわけですし、ミニアルバムの体裁でも良かったのではないかと思ったのですが。

Dr.Usui:あえてシングルにしたのは、スピード感を優先したかったことが大きいですね。いずれはアルバムも出したいし、「Boys, Boys, Boys.....」と「Another Century」もちゃんとした形にしたいです。あの2曲はオンラインでラフに録ってラフミックスした状態で上げてあるので、ちゃんとした音源にするときは録音し直したいです。

──「シャドウ・ヴィーナス」のほうはZOOM会議のデモ楽曲ファン投票から選ばれて制作されたそうですね。

Dr.Usui:候補にあった4曲から選ばれた曲ですね。僕がラフなスケッチの曲を毎週木曜日に提出するという過酷なことをやりまして(笑)。

絢屋:Dr.Usuiが毎週1曲デモを上げていって、それを1曲ずつ聴いていただいて、4曲揃った時点でこの中からどの曲を採用するかを投票で決めていただいたんです。その得票数1位が「シャドウ・ヴィーナス」の原曲ですね。

──オフィシャルサイトにデモ音源の投票結果が発表されていましたね。曲のタイトルは仮の状態で。得票数35%で1位になった「三四郎(仮)」が「シャドウ・ヴィーナス」になったわけですね。

Dr.Usui:その通りです。「三四郎(仮)」は3週目にできた曲なんですよ。3週目の提出直前で、その前に作っていたアイディアがどうしても形にならないと思って、配信の数時間前にゼロから作り直したんです。配信が夜の9時からで、夕方の6時くらいから1、2時間でサラサラっと書き上げたのが「三四郎(仮)」なんです。

絢屋:3週目に出たけどアイディアは4つ目だったんですよね。曲を聴いた後にDr.Usuiがそんな話をして、確か茉里ちゃんが「じゃあ『三四郎』だ!」と言って仮タイトルになったんですよ。

──ということは、得票数27%で2位になった「南国ラガマフィン(仮)」が「輪郭」になったんですか?

絢屋:いや、デモ投票から勝ち上がったのは「シャドウ・ヴィーナス」だけです。「輪郭」はその時期に並行して作っていた短編映画の主題歌なので。

Dr.Usui:あの時期は短編映画のことを伏せていたんですよ。東京都の「アートにエールを!」の企画だったので言うに言えなかったんです。ちなみに「南国ラガマフィン(仮)」は最初の週に提出した曲で、タイトルも張り切って募集したんですよね。募集して投票で決めたんですけど、2週目は茉里ちゃんが「もうタイトルの募集はしなくていいよ」と言い出して(笑)。

それぞれの得意技を掛け合わせる試み

──短編映画『DISCOMPO』公開時のインタビューで、UsuiさんがDISCOMPO with泉茉里としてやっていきたい試みとして「4つ打ちのエレクトロポップを現代風にアップデートする」と話していましたが、「シャドウ・ヴィーナス」はまさにその試みを具体化した曲と言えますね。

Dr.Usui:24年前に始めて2010年までやっていたMOTOCOMPOの後期の曲の続きをやりたくて、どんなことをやればいいのか考えていたんです。それとアイドルをやっていた茉里ちゃんのファン、茉里ちゃんと同世代の人たちのことを意識したときに、この10年くらいで日本のポップスがだいぶ進化してきたし、そこから自分なりに受け取ったものをやってみたいと思ったんですね。そうした日本のポップスの要素と、僕がもともと好きだった海外のインディーポップの要素を掛け合わせたものというか。海外のインディーポップも近年はすごくエレクトロに寄ってきたので、そういうダンサブルなアプローチを参考にしながら「シャドウ・ヴィーナス」は作りました。

──「シャドウ・ヴィーナス」は歌詞もUsuiさんが手がけているんですか。

Dr.Usui:いえ、歌詞は名嘉真監督です。監督はこれまでも広告系の動画を作る際にニーズに合う歌詞を書いていたらしいんですけど、今回初めてアーティスト名義で作詞者としてクレジットしたんです。「輪郭」のほうも名嘉真監督とDr.Usuiの2人でテキストのやり取りをして書いたんです。ちなみに「シャドウ・ヴィーナス」の歌詞は、名嘉真監督がいきなり書き上げてきたんですよ(笑)。

絢屋:ZOOM会議で「シャドウ・ヴィーナス」の歌詞をどうするかという話が出たんです。その会議の終わり頃に名嘉真監督が「実は書きました」と突然名乗りをあげて(笑)。そこで読ませてもらったら、すごくしっくりくる歌詞だったんです。すごい話ですよね、歌詞の完成をメンバーも会議中に知るわけですから(笑)。

──「シャドウ・ヴィーナス」というタイトルも詩的でいいですよね。

Dr.Usui:それまでの会議で、雑談としていろいろ話していたんですよ。夏の高校野球がなくなって球児たちは可哀想だねみたいな話を僕がしていて、会話が盛り上がった回があったんですよ。それで「砂に消えた夏のヴィーナス」というサビの書き出しが生まれたんじゃないですかね。

──アレンジはどんな感じで詰めていったんですか。

Dr.Usui:「シャドウ・ヴィーナス」のほうはトラックを進めつつ、順くんに仮のギターを入れてもらって部分ごとに修正していきました。歌入れ以外、メンバーは全く会わずに作業を進めた曲ですね。「輪郭」のほうは順くんに僕のスタジオへ来てもらって、いろんなギターを弾いてもらいました。エレキとアコギ2本だったかな。

絢屋:ナイロン弦のガットギターと通常のアコースティックギター、それとエレキギターですね。「シャドウ・ヴィーナス」ではエレキギターしか使わなかったんですけど、僕はもともとソウル、ファンク、ディスコといったブラックミュージックがすごい好きで、プレイの素養としても深く掘り下げていたので、そのニュアンスをふんだんに入れられたらいいなと思いながら弾きました。

Dr.Usui:(M)otocompoの活動が続いていた頃からDISCOMPOのアイディアが自分の中にあって、こんなことがやりたいんだと順くんには話していたんです。実際にDISCOMPO with泉茉里が始まってからは自分たちの得意技の掛け合わせをやろうと意識するようになりましたね。各自の得意技をさらに伸ばしながら掛け合わせて、それまでできなかった所まで到達したいというか。そういう部分を極めていかないとリスナーの皆さんに聴いてもらえないんじゃないかという思いがあったんです。

──DISCOMPO with泉茉里の楽曲にダンサブルな要素が必ずあるのは、絢屋さんの得意技であるブラックミュージックのフレイバーがあったからなんでしょうね。

絢屋:そのテイストがだいぶ曲に染み出ているかもしれませんね(笑)。(M)otocompoのときからそうなんですけど、Dr.Usuiが僕のプレイの良さを汲み取って引き出してくれるんですよ。今回のシングルも同じように引き出された部分は多いと思います。

──Usuiさんの得意技とはどんなところなんでしょう?

Dr.Usui:僕は自分の演奏がどうしても好きになれないんです。誰かの曲を聴いて「お、いいな。こんな音が入ってるんだ?」「ここでこういうことをするんだ?」「この音はどうやって録音したんだろう?」みたいに感じる、リスナーの感覚が常に先にあるんです。だから自分でも得意技だと思うのは、コンピュータをベースにして自分がいいと感じるトラックを構築することですね。自分なりに作り込んだものでお客さんに楽しんでもらうことが好きなのかなと。ビートがあって、踊れて唄えるものを作りたいんですね。その中でさらに説得力を増す材料として順くんのギターが入ってくれるとうまくいくんじゃないかと思うんです。バッキングトラックを作る上で2人でそうやって作ればいいものが生まれる、そういう関係性なんでしょうね。フットワークは軽いけど何度も何度もやり直すし、作業には時間と労力をものすごく注ぎ込んでいるんですけど。

──泉さんの歌入れにはどんなディレクションをしたんですか。

Dr.Usui:スタジオに来てもらって軽いディレクションはその都度しましたけど、割と好きなように唄ってもらいましたね。強いて言うなら「シャドウ・ヴィーナス」は明るくポップに、「輪郭」は今までの茉里ちゃんにない大人っぽい感じに持っていきたいというのを最初に話しました。「シャドウ・ヴィーナス」は名嘉真監督から歌詞をもらったものの、譜割りが分からないのでこっちで勝手に作っちゃったところがあって、監督にZOOMで仮歌を唄ってもらったんです。音数に合わせずに歌詞を書いた部分があったので。その辺を調整しながら茉里ちゃんには唄ってもらいました。

自分たちが本気になれるものをやればオンリーワンに近づける

──「輪郭」は、Usuiさんが「MOTOCOMPOと(M)otocompo両方のマナーが融合したかもしれない新機軸」とツイートしていたように、ご自身としてもかなりの手応えがあったんじゃないですか。

Dr.Usui:何週間か前に、リスナーの方が「輪郭」のことを「Chicみたいなディスコミュージックとジプシー音楽を融合させたような曲」とツイートしていたんです。自分としてはそこまで追求しきれていなかったんですけど、MOTOCOMPOのときにはディスコを、(M)otocompoのときにはジプシーや民族系を研究していたんですよ。自分としてはジプシー音楽というよりも東欧のほうの音階をポップスに織り込めないかと考えていたんですけど。それでいて、「輪郭」を録るときから順くんと話していたのは「自分たちのやりたいことや得意技や夢を入れていこう」ということで。僕らが本気になれるものを入れていけばオンリーワンのものに近づけるんじゃないかということで、バッキングの要にしたのはエレキでもなくシンセでもなく、順くんの弾く鉄弦のアコギを編集したループだったんです。それにガットギターのソロを乗っけてみたりとか。(M)otocompoでもそういうアプローチをやってみたくて、エレクトロにバンジョーを入れた曲とかもあったんですけど、そういうことをやろうとしていたある一部分が「輪郭」で混ざった気がするんです。それが結果的にDISCOMPO with泉茉里が今後武器にしていけるものなんじゃないかとほんのり感じているんですよ。実際、「輪郭」みたいな路線は反響がすごくありましたし。自分としては不思議なんですけどね。どこがサビなのかよく分からないし、J-POPのマナーではないですし。でもその辺のバランスが今はいいのかなと思います。今の日常のリモートワークをしている環境でリスナーの方に聴いてもらえるのなら、作業に邪魔しないポップスとしてはこれくらいの温度感がちょうどいいのかなと思いますし。

──「輪郭」は絢屋さんのマルチ弦楽器奏者としての持ち味が存分に発揮された曲でもありますよね。

絢屋:今まで僕が経験してきたり修練してきたものを遺憾なく発揮させてもらいましたね。僕の友達にラテンギタリストがいて、独特の奏法をしているんです。その友達の奏法を教えてもらうために食いついて、やたら一緒に遊ぶ時間を作ったのも無駄じゃなかったと今では思います(笑)。あと、自分がかつてブルースにどっぷり浸かった時期に習得したスライドギターを今回いいところに入れることができたのも良かったです。

Dr.Usui:「ここはスライドかな?」とか僕が半分冗談で言ったら「やれますよ」と順くんが応えてくれて、そう、これこれ! なんて感じでね。あれは面白かった。僕もブルースロックが好きだったので、そんな要素も入れてみようかと思いつきで提案したんですよ。僕がやってほしいことを順くんはすぐにできちゃうんですよね。

──短編映画『DISCOMPO』では「輪郭」のフル尺を聴けませんでしたが、今回のシングル発売に向けて完成させた格好なんですか。

Dr.Usui:短編映画の尺が先発ではあったんですけど、撮影終了までにミックスまで終わらせる必要があったのでフル尺は作ってありました。MVでフル尺は9月に発表済みでしたし。

絢屋:ただ、短編映画で使われているショートバージョンのほうはMVのフル尺にはないイントロがあるんですけどね。

Dr.Usui:名嘉真監督が「映画のエンディングは遠くから同じフレーズがやってくるような感じがいい」というイメージを話していたんです。同じ言葉のリフレインだったり、旋律が繰り返されるみたいな。僕は曲のイメージとしてはフル尺バージョンのようにジャンジャンジャン…とすぐビートが立ち上がる感じにしたかったんですけど、映画バージョンは監督の意見を活かしてフィンガープレイで優しく入っていくようなイントロを作ったんです。

──そういった曲調のニュアンスを含めて、「輪郭」は名嘉真さんとの共同作業で完成したように思えますね。

Dr.Usui:名嘉真監督のオーダーによってできたところもあるんです。最初にMOTOCOMPOのとある曲みたいな感じでと言われたので。自分としては「シャドウ・ヴィーナス」のように平歌があってサビがはっきりあるみたいな曲のアプローチに頭が向いていたので、監督のオーダーに従うとループベースのものになるからどうしようかなと思っていたんです。そこで順くんの弾くギターのフレーズでループを構築しようと思いついて、新たな可能性を見いだせたんですよ。だから「輪郭」は名嘉真監督のオーダーありきで生まれたようなものだし、この方向性をこれから極めていきたいと思っているところです。

──名嘉真さんは映像の世界一本槍ではなくバンド経験者でもあるので、理想とする音のイメージが自身の中で明確にあったんでしょうね。

Dr.Usui:そうですね。監督はこれまでMVをたくさん作ってきて、MVは曲があって映像を作る仕事だけど、今回はまず映画ありきの話だったから、監督が本来やりたいやり方をしたということでしょうね。

──話を伺っていると、普段のやり取りはリモートでも関係性がしっかりとバンドになっているのがよく分かりますね。

Dr.Usui:うん、すごくバンドっぽいですよ。直接顔を合わせなくてもちゃんとコミュニケーションを取れていますし。

燦々と輝く太陽の横でこそ対照的な月でいられる

(※ここで泉茉里が遅れてインタビューに参加)

Dr.Usui:あ、茉里ちゃんがそろそろ大丈夫みたいです。

泉:遅れてすみません。皆さんの話はずっと聞いていたんですけど、出るタイミングを窺っていました。

──泉さんがご登場されたので、今回のシングル制作で感じたボーカリスト・泉茉里の魅力についてUsuiさんと絢屋さんに語っていただきたいのですが。

Dr.Usui:茉里ちゃんはDISCOMPO with泉茉里のフロントマンであり要ですからね。茉里ちゃんがアイドルをやっていた頃からライブを何度か観て、よく動画を見ていて魅力的なボーカリストだと思っていました。初めて茉里ちゃんに軽く挨拶させてもらったのは、阿佐ヶ谷ロフトAのトークイベントだったんですよ。茉里ちゃんは覚えてないかもしれないけど。

泉:ああ、覚えてますよ。

Dr.Usui:永原真夏ちゃんや竹下ジャパン[のちに(M)otocompoに竹下ショパンとして在籍]といった近しい界隈が出演したイベントで(2013年2月13日に開催された『甘噛みマガジンpresents「90年代女子解体新書」』)。あれは茉里ちゃんが大学に入ったくらいだったのかな? すごく威勢のいい子だなと思ったんですよ。ちょっと話をさせてもらったらとても頭がいいのが分かったし、ソロアイドルとして全部一人で背負ってやっている意識がそうさせているのかなと思って。一つ一つの発言に深さも感じて、この子は只者じゃないからもっと注目しようと思ったんです。今こうして一緒にユニットをやれることになって、レコーディングをしたり、ライブセッションをやってみて感じるのは、いつも茉里ちゃんが結果として中身を整えてくれるんですよね。このあいだのライブセッションにしても、他のメンバーのやりたいことがぼんやりしているところを茉里ちゃんが「こうすればいい」と判断してくれて、僕らも納得する。茉里ちゃんのジャッジに従ってやってみたライブも「ああ、こういうことか」と思ったし、想像以上の結果にもなったし。やっぱり茉里ちゃんはすごいし、“スーパー女”だなと思いましたね(笑)。人間力がすごくあるし、参りました。

泉:なんかコメントしづらいですね(笑)。

Dr.Usui:順くんからも一言どうぞ。

絢屋:僕は茉里ちゃんと面と向かって話したことがなかったので人間性まで分からなかったけど、同じグループに近しい人間がいたので茉里ちゃんがやっていたことや歌にすごく情熱を懸けている様は知ってたんですね。DISCOMPOを始めるにあたって誰にボーカルをやってもらうかというときに真っ先に挙がったのが茉里ちゃんで、それも納得でした。ただ、実際に一緒にユニットをやり出してからはいい意味で驚いた部分があるんです。まずちゃんと唄えるかどうかなんかはクリアして、そこからさらに何かこうしていきたいという自分の色を練り込んで前へ押し出す力があるのを茉里ちゃんから感じたので。打てば響くどころか、打ったら泉茉里という色をのせて最大限の力を発揮してくれる。僕はもともとボーカリストというフロントマンの横にいるサイドマン気質だし、フロントマンが輝く演奏をどれだけできるかに命を懸けるパートなので、茉里ちゃんが唄うとすごくやりがいを感じます。茉里ちゃんが燦々と輝く太陽のようにいてくれるので、僕はその対照として月でいられるというか。今回のシングルを足がかりとしてこれからどんどんクリエイティブなことができるのを考えるだけですごくわくわくするし、そのわくわくをくれたのが茉里ちゃんの歌だと思っています。

──泉さんが今回の歌入れでこだわったのはどんな部分ですか。

泉:先に録った「輪郭」のほうは落ち着いた雰囲気というか、今まで唄ってきたイメージとは全然違う感じだったので自分でもどんな唄い方が正解なのか分からなかったんですけど、出来上がってみたら意外と私の声に合っているんじゃないかと自分でも思えた曲ですね。最初の「聴こえる〜」という印象的なフレーズがウィスパーボイス風な感じで最後にリフレインするんですけど、そういうウィスパーなところとか、唄っているときの声のこもったところが自分でも苦手だったんです。それをうまく引き出して最大限活かしてもらえました。今まで自分では嫌だった唄い方が全面に出てるけど、それが逆に良くなったという意外な曲ですね。次に録った「シャドウ・ヴィーナス」はいろんなキーを試して最終的にああなったんですけど、最初は低かったり高かったりいろいろ録った中で最大限の明るさを出せるキーを厳選できた気がします。いろいろ試して録れたのが逆に楽しかったですね。

──煌めきと明るさのある「シャドウ・ヴィーナス」、憂いを帯びた「輪郭」と、歌としては対照的な2曲になりましたね。

泉:二面性が出せたのは結果的に良かったですね。曲調も構成も唄い方も全く違う2曲が揃ったのが面白いと思います。このあいだライブセッションを収録したときも、つなげて撮ってはいるけど曲ごとに気持ちを変えて唄えたのがすごく面白かったんです。今後ライブをやるときもそうやって1曲ずつ気持ちを切り替えて唄えるのかなと思うと楽しみですね。

──シングルの販売は今のところ通販のみというのもあえてのこだわりなんですか。

Dr.Usui:オンラインユニットなので販売に関してもオンラインでどこまでできるか実験してみたいところがあるんです。今後ユニットを続けていく上で今やっておくべきことを考えると、オンラインでリスナーの方々とつながっておくことが最初のコアな部分で重要なので、今はこの形でいきたいと思って。これが普通のバンドならライブハウスでCDを手売りして、お客さんにアンケートを書いてもらって意見や感想を聞くのがコロナ以前のバンドのコアな部分だと思うんです。それをオンラインに置き換えるとしたらこういうことなんじゃないかなと。もしCDを置いていただけるショップがあればそれはそれで有り難いのでぜひお願いしたいですが、今はなるべくオンラインで新たな試みをしていきたいんですよね。僕らDISCOMPO with泉茉里とリスナーの方々のいい関係と環境を整えるためにも。

できるときにできることはどれもしておきたい

──オンラインユニットだから音源は配信限定でも良さそうなのに、あえてCDとしてリリースするのもこだわりなんですよね?

Dr.Usui:僕自身、CDというメディアを進んで購入するかといえばCDでしかない音源なら購入する程度だし、別にサブスクでもいいのかもしれないけど、サブスクだとリスナーの方の顔が見えませんからね。それにサブスクはSpotifyやApple Musicなど選択肢がいろいろあって、今はまだどこで何が聴かれるかというほどの規模でもないし、総合的に考えると一番最初の出し方はCDという形態がいいと考えたんです。

──いわゆるレコ発にあたる1月21日のファーストライブセッションを生配信ではなく収録済みの動画配信にしたのはなぜなんでしょう。

Dr.Usui:ZOOM会議でも生配信するべきかどうか議論したことがあったし、オンラインで見るライブがリアルタイムであることにどれだけの意義があるのか? という問題提起を主に名嘉真監督がしていたんですね。クリエイターチームとしての側面もあるわれわれのライブの在り方としてどういうことをやったら面白いかというところでみんなでアイディアを出し合った結果、生配信ではなく事前収録の動画配信がいいだろうと判断したんです。

絢屋:これがコロナ禍以前の活動なら「毎週ライブをしているバンドだよね」と言われるところが「毎週会議を配信しているオンラインユニットだよね」と言われる状況ですけど、われわれもユニットとして音楽を作っている以上はしっかりとライブができるところを見せたいとずっと考えていたんです。じゃあわれわれならではのライブ、今の時代ならではのライブとはどんなものなのかという議論やアイディア提起をZOOM会議でしてきたんですが、今回のライブセッションの動画は間違いなくライブの一種だと僕は思えるんです。DISCOMPO with泉茉里はちゃんとライブができるユニットであることがこれで広まってくれたらいいなと思います。

泉:私はライブはずっとやりたかったから実際にやれてすごく楽しかったですし、映像に残ること自体が嬉しいです。通常のライブをやれないから映像で見せるしかないという状況だからこそ、映像でできる最大限の面白さを詰め込めたと思いますし。後から映像効果を増やせるという収録ならではの良さもありますけど、ライブならではの生感もしっかり出せていると思うし、それぞれのいいところを詰め込めているんじゃないですかね。

絢屋:同じ画面を通じて見ていただくのはライブならではの共有感覚ですし、メンバーに映像作家がいるわれわれだからこそできることを提起するようなライブセッションになっていると思うんです。それに、たとえオンラインであっても茉里ちゃんのようなフロントマンがいればバンドはちゃんとライブを成立させられますからね。

──DISCOMPO with泉茉里がライブをやるとなれば、「Another Century」のCGステージで一貫させるのかなと思っていたのでフィジカルなライブセッションをやるとは意外な展開でした。

Dr.Usui:ああ、なるほど。確かにそんなふうにも取れますね。あのCGステージでライブもガンガンやりたいという話もしていたので。あそこはあそこで、いつか違うライブを実現したいですね! でも今回はそうじゃないことをちゃんと発信しないとライブセッションを見る人が増えないかも(笑)。

──活動2年目の今年もシングルCDのリリースを皮切りに活発な動きになりそうですね。

Dr.Usui:そうですね。一発こっきりの企画ユニットだと思われているきらいがなくもないので、ウィズコロナ、アフターコロナの時代に向けて新たな音楽ユニットの在り方を模索していきたいです。21日にはライブセッション動画に合わせていつものZOOM会議のスペシャル版をやろうと考えていますし、いつかまたリアルでライブをやれるようにコツコツとやっていきたいですね。オンラインベースだけどオフラインの活動も見据えながら。

絢屋:できるときにできることはどれもしておきたいですよね。今のこの2021年1月の段階ではこれが今できることだし、また現場でライブができることが選択肢に入るときになればもちろんやりたいですし。絶えずそのときできることをどれも模索していく、どれも取り入れる活動をしていきたいです。あと、われわれはオンラインユニットだし、いま巷で開催されているオンラインフェスにもぜひ出演したいので、オファーをお待ちしております。

Dr.Usui:現時点ではまだ実動員は読めないけど、CDのオーダーリストを見ると全国に僕らのことを気にしてくださっている方々が点在してますからね。オンラインフェスの賑やかしにはなるんじゃないかと思います(笑)。

──このコロナ禍で音楽を生業とする人たちはみな苦境に立たされていますが、今できないことを逆手に取って面白いことを展開していくDISCOMPO with泉茉里の手法に刺激を受けてお手本にすればいいのになと思いますけどね。

Dr.Usui:確かに。僕は新しいことを思いついてやってみちゃうまではいいんですけど、だいたいは真似されてその人がうまくいくケースが多いんです(笑)。だけど誰かが旗振り役をやって引っ張っていかないと、全体が盛り上がりませんからね。今後みんなが僕らみたいなオンラインの手法をやり出してそれが定着したら、Wikipediaの「オンラインユニット」の項目に「DISCOMPO with泉茉里が発祥」と書かれるようになりたいですね。オンラインユニットを名乗ったのは僕らが最初で、あとはみんな真似ですよと(笑)。

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