蟹江敬三 ロマンポルノで強姦魔を演じたときの感覚を語った

1月20日(月)7時0分 NEWSポストセブン

 舞台俳優として若き日の蜷川幸雄らとともに劇団を旗揚げした俳優の蟹江敬三は、映画やドラマ、にっかつロマンポルノなど多岐にわたって活躍してきた。故・勝新太郎の監督デビュー作に主演した当時や、「強姦の美学」とまで異名をとったロマンポルノ出演時の思い出について蟹江が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏が解説する。


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 1960年代終わりから1970年代初頭にかけ、蟹江敬三は蜷川幸雄の演出の下、アングラ演劇で若者たちから人気を博していた。その一方、映画やテレビドラマでは数多くの脇役・悪役をこなしていた。当時の映画スター・勝新太郎はそんな蟹江を高く評価しており、自らの作品に何度も起用している。勝の初監督作『顔役』(1971年)も、そんな一本だった。


「『顔役』が勝さんとの最初でした。素敵な人だと思いました。


 僕は殺し屋の役で、床屋でヤクザを殺すシーンがあったのですが、椅子に横たわっている人がいて、『その陰から顔を出してニッコリ笑え』と勝さんは言うんです。笑いながら殺すというのが新鮮でしたね。それから、印象的だったのは、『録音部を困らせる喋り方をしろ』ということです。いい声で明瞭にセリフを言うんじゃなくて、ボソボソっとね。録音部が『こんなセリフ、どうやって録るんだ』と言いたくなる喋り方をしろ、と。


 台本はなくてアドリブばかりでした。撮影をする日になって『このシーンはこうなっているけど、お前、なに喋る?』と聞いてくる。それで少しだけ打ち合わせをしたら、もう本番です。こちらは一瞬のうちに『こういうセリフを喋ったらどうかな』と考えるわけですから、瞬発力を鍛える訓練になりました」



 この時期、蟹江は「にっかつロマンポルノ」にも主役級の役柄で出演している。『犯す!』の「強姦魔」や『赤線玉の井 ぬけられます』のヒモ役などで強烈な印象を残している。


「テレビや映画をずっとやっていましたが、メインの役ってほとんどないわけですよ。ロマンポルノは割といい役が来ました。役者って、時にはそういう役をやらないとつまらないんです。


『犯す!』の長谷部安春監督はシャープな方でした。強姦魔を一人の孤独な男として捉えていた。演技は基本的には監督の指示です。あの時は、犯している時でも表情を出さないように言われましたね。僕がやるのは、そのシチュエーションの中に入って、衝動をどう表現するか、ということです。男の中に何となく存在するそういう願望を少しずつ膨らましていきました。


『赤線〜』の神代辰巳監督は勝さんと同じで意表を突く演出をしました。ベッドシーンがあって、台本には『乱暴に服を脱がす』としか書かれていない。どうやって脱がそうか悩んでいたら、神代監督は『足を伸ばして、足の指でボタンを外せ』と言うんです。こんなこと考えるんだ、とショックと同時に勉強になりました」


●春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。映画史・時代劇研究家。著書に『天才 勝新太郎』(文春新書)、『仲代達矢が語る日本映画黄金時代』(PHP新書)ほか新刊『あかんやつら〜東映京都撮影所血風録』(文芸春秋刊)が発売中。


※週刊ポスト2014年1月24 日号

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