名医対談 「がんは治る病気。年とるほど医学の恩恵受ける」

1月20日(日)16時0分 NEWSポストセブン

在宅医療とがん治療の第一人者、小笠原医師と垣添医師が対談(撮影/黒石あみ)

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 在宅医療の名医・小笠原文雄先生が人気テレビ番組『世界一受けたい授業』(日本テレビ系・1月12日放送)に出演し、著書『なんとめでたいご臨終』が売り切れ続出するほどの売れ行きを見せている。余命宣告を大きく覆して生きる人、大切な家族を笑顔で見送った人……信じられないような奇跡と希望のエピソードが満載の本書。どうして自宅ではそんなことが起きるのか。がんを知り尽くす名医で、がんで妻を亡くし、自身もがんを経験した垣添忠生先生と、いつか必ず訪れる「その時」の迎え方について語り合った。希望死・満足死・納得死をするために知っておきたいこととは──。


【プロフィール】

小笠原文雄(おがさわら・ぶんゆう)/1948年生まれ。名古屋大学医学部卒業。名古屋大学第二内科(循環器)を経て、1989年に岐阜市内に開院。現在は、小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長。在宅看取りを1000人以上経験。名古屋大学医学部特任准教授。


垣添忠生(かきぞえ・ただお)/1941年生まれ。東京大学医学部卒業。同大学医学部泌尿器科文部教官助手を務めながら、がんの基礎研究に携わる。1975年より国立がんセンター勤務。2002年、国立がんセンター総長、2007年、同センター名誉総長に。日本対がん協会会長。


◆がんや死とどう向き合えばいいか?


垣添:皆さん、まだ誤解が多いのは、がんは今や治る病気になっているということです。大体6割5分ぐらい治りますからね。それと、年間約100万人ががんになって、一生のうち、2人に1人はがんになるんですから、誰でも遭遇する可能性がある普通の病気なんです。


小笠原:特に血液のがんなどは、予後がすごくよくなっていますね。今後はがんになっても、年をとればとるほど、医学の日進月歩という恩恵に浴する可能性が高くなっていくんでしょうね。


垣添:それと早期発見というのも、ものすごく効果がありますね。国が指定している5つの検診対象がんは、早期発見をすれば大体9割5分以上治っちゃう。私も大腸がんと腎臓がんを早期発見しています。早期発見なら、身体的・経済的・時間的な負担もずっと軽い。IV期の進行がんで見つかって、たくさんのお金を使って亡くなるのとは大違いです。



 ただ、国が目指しているほどには検診率が上がっていません。これは日本に国民皆保険制度という素晴らしい制度があるため、国民はそれに甘えてるところがあるんだと私は思っているんです。アメリカだと、もし進行がんか何かになったら、本当にすさまじくお金がかかる。それがわかっているから子宮頸がんにしても乳がんにしても、アメリカの検診率は8割を超えているんですよ。


 私は国が指定する5つのがんで早期発見をしたら、患者さんの負担を1割減免して、2割負担にしてあげるといいと言ってるんです。お金が絡んだら検診率は間違いなく上がりますよ。厚労省に提案しているんですが、エビデンスがないとかなんとか言って、なかなか踏み切ってくれません。


小笠原:先生、それ、いいアイディアですよ!


垣添:私は今も2〜3年にいっぺん、古巣のがんセンターの予防検診研究センターでちゃんとお金を払って、濃密な検診を受けてます。国が決めてる胃がんとか肺がんとか大腸がん、それから前立腺がんもPSA検査でやってますから、仮になっていたとしても、早急に発見できるだろうと。 


 だから、私が死ぬときは多分、珍しいがんになって死ぬんじゃないかと思います。で、立場上、治る可能性があるうちは頑張りますけれども、どうしても難しいとなったら、もう点滴も何も断って、家に帰ってきて、家で死のうと思っているんです。しかしそのときに、かなり元気でないと家でなかなかひとりで死ねない。私は子供もなく、高齢単独所帯ですから。


小笠原:おっしゃるように、病気があっても、ギリギリまでピンピンしていて、その後に苦しむことなく、安楽にお別れを言って、ふっと亡くなることができたら最高かなと思いますね。それにしても、先生は本当にお元気です。


垣添:いえいえ、ひとりで家で死ぬためにはよほど元気でいなくちゃいけないと思って、運動はしっかりやっています。


小笠原:どれぐらい運動をしているんですか?


垣添:毎朝、腕立て伏せ100回、腹筋500回、スクワット100回、つま先立ち100回、かかと立ち100回などストレッチも含め約1時間の運動をしています。それから妻を亡くした悲しみを、新しいことを始めることで忘れようと思って、現役の頃からやりたかった居合も始めました。毎回1〜2時間、汗びっしょりになって稽古するんです。今日も夕方から三菱の道場に稽古に行きます。小笠原先生は?



小笠原:ぼくはゴルフをちょっとやるぐらいと、あと、あくび体操ですね。両手を上げて「あ〜あ」と声を出し、あくびをしながら手を下ろすんですが、あくび体操は、名古屋大学の総長も総長室でやっておられるかな?(笑い) それにしても、私はこれだけ奥様のことを思ってみえる男性は今まであんまり…。


垣添:私の妻は12才年上で、知り合った当時、既婚者だったんです。私の両親と激しいバトルになり、音信不通になりました。だから私と妻は、ふたりで助け合って生きていくという感じが非常に強かった。それだけに、すごい空虚感だったんですよ。妻が亡くなった後は、私はいつ死んでもいいと思って毎日生きています。


小笠原:それはやっぱり大事ですよね。メメント・モリ=死を忘れるな。死を見つめてこそ、今が輝きますし、しっかり生きることができる。


垣添:妻は78才で亡くなりました。だから私も78才までは生きようと思っていたんですが、この10年で男性の平均寿命が80才になって、じゃあ80才までは生きようと思い、今77才です。「そんなに元気なら80才ぐらい楽勝だよ」ってみんなに言われますけど(笑い)。


小笠原:楽勝でしょう。「いつ死んでもいい」というのが投げやりだったらダメですが、先生の場合は「覚悟」ですから。2018年にぼくのクリニックで在宅看取りをした84人のうち、ひとり暮らしのかたは14人いらっしゃったんですが、不思議なことに誰ひとりとして入院されずに希望通り、自宅で旅立たれました。


垣添:小笠原先生のようなかたがいれば、ひとりでちゃんと自宅で死ねるんですよ。


小笠原:お金があってもなくても、それほど覚悟がなくても、ひとり暮らしでも、これからはどんどん笑って旅立てる時代です。涙を浮かべながらも「笑顔でピース」で見送れる時代です。これぞ「なんとめでたいご臨終」ではないですか?


垣添:そうですね(笑い)。


※女性セブン2019年1月31日号

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