固定電話、VHS、ガラケー……映画『リング』『着信アリ』で懐かしいガジェットに憑いた幽霊たち

1月21日(月)11時0分 文春オンライン

 平成が31年で終了。年数が昭和の半分以下であったし、国が文化的に進歩したゆえの頭打ち感もあって、強烈な変遷はない時代であったと思う。じつは景気がどんどん衰退していたという、現在の体感や未来のなさは絶望的だけれど、思い返せば平成の日本はなだらかなものだった。


30年前の映画を観て目につくもの


 他の娯楽に客を取られたり、劇場料金の高さで客足が鈍ったりという傾向などによって、映画は衰退の影が濃厚になり、本来持っていたはずの豪華さという特色は薄れてしまった。東京では公道での撮影許可がなかなか取れないし、予算の縮小で大規模な作品は自然と減っていき、こぢんまりとした映画はさらに縮小の一途を辿ってあまり芳しくない状況だ。興行成績のトップは実写映画よりも、特撮とアニメが占めるのが当たり前の時代となった。



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 そんな平成のなかで大きな変化があったのは、インターネットと携帯電話の登場だ。平成の初め頃の映画では、一般の人が気軽にパソコンを扱ったり、携帯で電話やメールをしたりするなんてありえないことだった。今、30年前の映画を観て目につくのも、まだ人々がガラケーすら持っていないことだ。パソコンがウィンドウズ98や、同じく1998年発売のスケルトン仕様のiMac辺りで人口に膾炙していったことを思えば、平成のはじめはまだ、人と連絡を取る手段は電話がメインだった。


「呪いのビデオテープ」と固定電話から貞子は現れた


 それがとても明瞭にわかるのは、じつはホラー映画だ。『 リング 』(1998年)で呪いが伝播していく際に使われたのは、VHSテープと家庭用電話だった。呪いのビデオテープを見たあと、固定電話にかかってくる不気味な電話を契機に貞子は現れる。今見ると、なんと懐かしいガジェットに憑いた幽霊であったことか。




ガラケーの普及で、霊も「足跡」が残るように


 その後の約20年で、幽霊の現れ方は随分と変化を遂げた。怨霊たちも新アイテムの台頭とともにツールの乗り換えを始めて、携帯が普及すると『 着信アリ 』(2004年)へと変わっていく。固定電話は留守電を残さなければ着信記録が残らなかったが、携帯電話によって、一度コールすれば着信は痕跡が残るようになった。霊も足跡が残るようになったのだ。



 VHSテープも、現在では実物を手にしたことのない若い世代も増えているだろう。そもそももはや、あの黒いテープを再生するための機器が自宅にない人がほとんどだ。『リング』シリーズは出演者や監督を変えながら、今でも続編が度々作られているのだが、近作では主人公たちはビデオを再生するために、まずは中古のビデオデッキを購入しに行くところから話が始まっていた。



幽霊たちが華麗に“対応”する鮮やかさに驚嘆


 心霊映画というのが、そもそもオールドスクールなのかもしれない。心霊動画が撮れたのなら、YouTubeにアップすれば人目を引ける時代だ。また幽霊の現れ方もやはり現代化していて、心霊スポットでの撮影時によく言われるのは、ビデオカメラが突然不調になる出来事だ。完全に充電したはずなのに、バッテリーが突然みるみる減ったり、現場は無音だったのに再生してみるとノイズが入っていたりという現象。平成に入って幽霊たちも、ろうそくの炎を掻き消すなんてアナログなことはせず、文明の利器に対応した登場の仕方をするようになった。



 ガジェットを乗り越えた心霊たちの現れ方。最近の低予算心霊ホラーでは、携帯メールで呪いが拡散していく現象が当然のように登場している。平成に入ってから、VHS、CD-R、DVD-R、メモリーカードと映像の保存の仕方が変わっていく変化の速さに、幽霊たちが華麗に対応している鮮やかさに驚嘆するしかない。



(真魚 八重子)

文春オンライン

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