「父子の関係性の欠落感」に着目、香港の移民たち描く『白日青春』を監督が語る
2024年1月21日(日)17時0分 シネマカフェ
香港を代表する名優アンソニー・ウォンがワケあって息子と距離のある、孤独なタクシー運転手チャン・バクヤッ(陳白日)を演じ、台湾の第59回金馬奨で最優秀主演男優賞を受賞。
また、本作が初めての映画出演となるパキスタン出身で香港在住の少年サハル・ザマン。難民申請をしたパキスタン人の両親の下、香港で生まれた少年ハッサン(香港名:莫青春(モク・チンチョン))役を演じ、第41回香港電影金像奨最優秀新人俳優賞を獲得している。
実の息子とうまく関係を築けなかったアンソニー・ウォン演じるバクヤッがパキスタン人で難民の少年ハッサンとの心の交流を通じて、生きる意味を見出していく姿が静かな感動を呼ぶ本作。登場人物のほとんどが、祖国ではない香港で生きる場所を探し、もがいている人々である。
この度解禁するのは、「僕は漂泊する人々の一員だ。中華系マレーシア人四世で、大勢の人が機会を求めて海外へ出ていく中で育った」と、自身も18歳でマレーシアから香港に移住してきたバックグラウンドを持つラウ・コックルイ監督のインタビューを収めたメイキング映像。
本作で台湾最大の映画祭・第59回金馬奨で最優秀脚本賞と最優秀新人監督賞のW受賞の快挙を果たしたラウ・コックルイ監督が是枝裕和監督からトロフィーを受け取るシーンから映像は始まっている。
ラウ監督は「当初、香港の難民問題を脚本に書こうとした。逃亡する難民と追う警官」と明かすが、書き上げて困惑したと回想する。そこで脚本を見直して父と子という要素に気づき、「父子の関係性の欠落感を、共に逃亡する中で埋め合わせていくんだ」と話す。
「40年前に泳いで香港に渡った本土の難民と、庇護を求めて香港に来た今の難民。この二世代の難民が共に逃亡を図る物語だ」と付け加え、「この都市に対する僕の心情だね」と締めくくる。
第2の香港ニューウェイヴの到来といわれている昨今。新世代監督が香港の厳しい現実を描きつつ、そこに生きる人々が灯す小さな希望の光をスクリーンに映し出している。
『白日青春−生きてこそ−』は1月26日(金)よりシネマカリテほか全国にて順次公開。