立川談志 亡くなってから見えてきた天才落語家の「素顔」

1月21日(日)7時0分 NEWSポストセブン

天才落語家の凄みを落語通が語る(時事通信フォト)

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 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の連載「落語の目利き」より、七回忌を迎えてなお存在感を増す立川談志の落語家としての素顔についてお届けする。


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 落語界の風雲児、立川談志。亡くなって6年以上経つというのに、その存在感は増すばかり。毎年のように新たな発掘音源や映像作品が発売されている。七回忌を迎えた2017年秋、また新たな「談志の商品」が登場した。


 まずは2枚組CD「家元の軌跡 談志32歳」(キントトレコード)。談志が自宅に保管していた音源を発掘してCD化する「家元の軌跡」シリーズはこれまで「談志30歳」「続談志30歳」が出ていたが、七回忌追善盤の第3弾は1968年8月31日に東宝名人会の余一会(31日に行なわれる特別興行)として開かれた「立川談志独演会」での高座を収録(『寝床』『宮戸川』『付き馬』及び漫談)。ネタ下ろしに備えて『小猿七之助』を自宅で稽古した録音がボーナス・トラックで入っていて、ファンにとってはライヴ音源以上に貴重なドキュメンタリーだ。


 NHKからは5枚組CDボックス「立川談志落語集成1964-2004」第1集が出た。順次発売で第3集まで出るという。


 談志生前に発売された音源・映像は、29歳で始めた紀伊國屋ホールでの「ひとり会」のCD全集を除けば圧倒的に50代後半以降のものが多く、躍動感あふれる40代の談志の高座を商品化したものが非常に少なかったのだが、没後数年してCD18枚組「東横落語会 立川談志」(小学館/2015年)、DVD8枚組「立川談志全集」(NHK出版/2015年)、CD14枚組「東宝名人会 立川談志大全集」(東宝ミュージック/2016年)等40代の談志の高座を豊富に収めた商品が続々と登場、ファンを喜ばせた。


 このNHKのCD全集もそれに続くもの。第1集には『黄金餅』『芝浜』『野ざらし』等、談志40代の高座が5席収められている。ディスク5に収められた先代正蔵との対談も貴重。


 DVD『落語とは、俺である。』(ポニーキャニオン)は談志が2007年にインターネット通信制大学で配信した映像講義「落語と文化・文明論」の商品化。竹書房より書籍版も刊行。落語とは何かを談志ならではの切り口で明解に論じている。


 生前はその破天荒な言動ばかりに注目が集まった談志だが、亡くなってからようやく「落語家」として客観的に評価されるようになった。「立川談志として生きる」ために彼が演じた強烈なキャラの向こう側にあった「素顔の談志」が見えてきたのである。


 談志は「歴史上誰よりも落語を愛し、深く考えた男」であり、「落語を滅ぼさないための闘いに人生を賭けた男」であり、何より「天才落語家」だった。彼が残した大量の音源と映像は、それを教えてくれる。


●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。


※週刊ポスト2018年1月26日号

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