「高齢者は恋愛をするのか?」 その答え

1月21日(月)16時0分 NEWSポストセブン

田園調布学園大学名誉教授で臨床心理士の荒木乳根子さん

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 果たして高齢者も「恋愛をする」のだろうか? 子育てや仕事に疲れ気味の中年記者の私(55才・女性)は興味津々だ。そして老親(84才の母)がいる子世代としては、心配の種でもある。


 高齢者のセックス事情や介護施設でのセクハラ問題などで取り沙汰されることもあるが、親の人生最終章を見守る子世代は、やはりきちんと知っておくべき。またそう遠くない自分の問題でもあるのだ。


 長年、中高年・老年期の性について研究し、多くの高齢者の生の声も聞く田園調布学園大学名誉教授で臨床心理士の荒木乳根子さんに聞いた。


「高齢になっても恋をしたり、性欲がわいたりします。人間として、ごく自然なことなのです」と言う荒木さん。ただ男性と女性では、大きな違いがあるようだ。


「ひと言で“性”といっても、性行為能力、性欲、男と女という関係への関心…など、いろいろな意味合いがあります。女性の場合、女性ホルモンがガクンと減る閉経を機に、性欲が低下する人が増えます。


 これに対して男性は、加齢による性欲関連の男性ホルモンの低下が緩やかで、70代以上でも性欲はあり、人によっては受精能力も維持します。総じて男性はいくつになってもセックスをしたい。たとえ勃起しなくても、想念として夢見る。たとえば施設などで女性のお尻を触ったり、卑猥なことを言ったり、女性のベッドにもぐり込んだりと、行為に表れたりもします」


 一方、女性は性欲より恋愛感情の方が豊か。


「単なる好意を超えて、本当にときめいて好きになる。好きになった相手につきまとったり、その人がほかの女性と仲よくしていると嫉妬して、その女性に意地悪をしてみたりすることもあります」


 性行為がなくても、楽しく話し、異性と一緒にいてうれしいと思うだけでも、心身は活性化するという。


「いずれにしても性は、生きるエネルギーなのです。心身を覚醒させ、力を与えます。精神分析の創始者フロイトは、“生の本能はエロスである”と言っていますが、身近にも、高齢で足元がおぼつかない人が、リハビリの若くてやさしい療法士さんを好きになったとたんにシャキッと元気になり、いそいそとリハビリに通うようになるといった事例がいくつもあります」


 ちなみに日本最古の和歌集『万葉集』にも、老人の恋心の歌がいくつも見られる。いつの時代でも、恋をする心と老いは関係ないのだ。男性も年を追うごとに勃起力や快感は少しずつ衰える。性欲があるとはいえ、若い頃のような性行為は難しくなる。



「これもまた自然なことです。でも高齢になったら性行為にこだわるより、触れ合うことこそが大事なのです。抱き合う、性器に触れ合う、あるいは手をつなぐだけでもいい。肌を触れ合うことで“愛情ホルモン”とも呼ばれるオキシトシンが出て、気持ちがやさしく穏やかになり、幸せに満たされます」


 ある高齢者施設での事例を教えてくれた。


「高齢者の恋愛は、施設によっては肯定されないこともありますが、その施設は“死を意識した高齢者にとって、誰かを好きになり触れ合うことが、今この瞬間の生き甲斐になる”という考え方。入所者同士、本当に好きになって家族の了承が得られれば、夫婦部屋に入ることができます。


 この夫婦部屋で暮らしていた70代と80代のカップルが、本当に幸せそうだったのです。そしてほかの入所者も“私たちだって恋したいわよ!”と、意欲満々(笑い)。彼らを見ていて、人は、素敵だと思える人、自分を思ってくれる人が1人いれば、それだけで人生が楽しくなるのだと、理屈抜きに感じました。やはりいくつになっても恋する心は大切なのです」


※女性セブン2019年1月31日号

NEWSポストセブン

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