池上さんも知らなかった。仏教はこんなふうにできている

1月22日(月)11時0分 文春オンライン


『ごまかさない仏教 仏・法・僧から問い直す』(佐々木 閑,‎ 宮崎 哲弥 著)


 世界の人々がどんな宗教を信じているかの宗教分布図を見ると、日本は仏教に分類されます。全国各地に仏教寺院が存在します。でも、私たちは、仏教とはどんな宗教か、どれだけ理解しているでしょうか。


 キリスト教について知りたければ『旧約聖書』と『新約聖書』を読むこと、イスラム教を学ぶには『コーラン』(『クルアーン』)という聖典があります。しかるに仏教では?


 日本独自の仏教の各宗派が重視する経典は、それぞれ異なり、「仏教の聖典はこれだ」とはっきりしたものがないようにも見えます。


 日本に伝来した仏教は、日本で独自に発展(変化)しました。そもそも仏陀が悟り、弟子たちに伝えた内容とは大きく変容し、その結果、日本に住む私たちの多くは、仏教の内容を誤解してしまうことになりました。


 誤解が定着したままではいけない。この際、ごまかさずに仏教の本質を読者に知ってもらおう。この書は、その趣旨に基づいています。


 本の構成は、メディアで広く評論活動をしている宮崎哲弥氏が、仏教学者の佐々木閑(しずか)氏に仏教の基礎基本について教えを乞うという形式ですが、実際には、仏教について深く学び、仏教徒を自認する宮崎氏が、自分の認識を佐々木氏に問うものになっています。


 そもそも仏教は、キリスト教やイスラム教に帰依するのに比べて敷居が低い印象があります。日本において仏教とは、宗教というよりは文化や生活様式を規定する存在であるように見えます。


 仏教で大事なのは「三宝」つまり「仏・法・僧」です。佐々木氏は、「この三つの要素がそろった宗教活動のことを仏教と呼びます」と定義します。実に明瞭です。仏教を学ぶには、この三つから出発すればいい。そこで、三つについて順番に学んでいくという構成を取ります。


 仏とは釈迦のことであり、法とは釈迦が説いた教えであり、僧は四人以上のお坊さんが修行する組織のこと。つまりは「釈迦を信頼し、釈迦の教えに従って暮らすお坊さんたちが、修行組織を守りながら生きている状態」(十九頁)なのです。


 では、仏教の教えを知るための聖典とは何か。それは「阿含・ニカーヤ」と呼ばれる初期経典です。仏教経典は多数あるのに、なぜこれがオリジナルの仏教を知るのに重要なのか。ここで読者は、経典の位置づけをめぐる学術論争を知ります。


 この書は、仏教に関する私たちの勝手な思い込みを正すものにもなっています。仏教は清貧を説いたものではないこと。市場経済を否定するものでもないこと。本山なるものはなく、「ネットワーク方式の組織」であったことなど新たな知見を与えてくれます。私たちは仏教を理解していなかった。そんな「無知の知」を教えてくれる本です。




(池上 彰)

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