「一喜一憂はかっこ悪い」 ソフトバンクのドラ2・高橋礼の不動心

1月22日(月)11時0分 文春オンライン


ソフトバンクにドラフト2位で入団した高橋礼 ©高木遊


「夢が叶い感動した」「自然と涙がこぼれた」


 例えばそんな感傷的なコメントから遠い存在にいるのが、ソフトバンクの新人・高橋礼だ。ドラフト2位指名にも「早かったら2位で指名が来ると監督から聞いていたので、安心したって感じです」と当時の状況を冷静に話す。


 また「両親が一番喜んでくれました」としながらも、周囲の反響や変化については「そんなに変わらないです。昔からプロに行けると言われていたので、やっぱりなったんだという感じですね」と淡々とした口調は変わらない。


 担当した荒金久雄スカウトは指名あいさつ、契約交渉、新人合同自主トレといった新人行事を見た上で、その佇まいに感心したという。


「優しそうに見えるけど、動じないところがあって、自分のペースや雰囲気を持っていますね。僕はこうやりたいという良い意味の頑固さも見えます。何年かプロ野球やってきたような雰囲気でした」


 筆者も専修大の下級生時から取材してきて、同じような印象を受けてきた。それを高橋本人にもぶつけてみると「そうですね」と少し笑った後、真剣な面持ちで「いろんな経験をさせてきてもらったので、いい意味で動揺しないのかもしれません」とつぶやいた。


大型変則右腕が巻き起こした旋風


 188センチの大型アンダースロー右腕として、専修大1年時から活躍を果たした。浮き上がり、時に140キロを超えるストレートには、全国屈指のレベルを誇る東都大学野球リーグの打者たちも対応できなかった。


 1年秋に2部リーグで5試合32回2/3を投げて、自責点はわずかに4。1年生ながら原樹理(東洋大/東京ヤクルト)、黒木優太(立正大/オリックス)、戸根千明(日本大/巨人)らを抑えてリーグトップとなる防御率1.10の成績を残し、チームを2部リーグ優勝に導いた。入れ替え戦でも2試合に先発登板して試合を作り、1部昇格に貢献した。


 翌春も勢いは止まらず、1部昇格即優勝の快挙を達成。高橋も守護神としてチームの躍進を支えた。また夏には侍ジャパン大学代表にも選出され、ユニバーシアードに出場。中継ぎとして相手の反撃を許さない投球を見せて金メダル獲得に貢献した。


 当時の高橋の躍進を語る上で欠かせないのが、専修大でバッテリーを組んでいた時本亮(現東芝)の存在だ。プライベートでも仲良く「すべての面でお世話になりました」と高橋は語る。マウンドでも「時本さんの構えたところに投げていれば試合は作れると思っていましたし、コントロールに苦しむこともありませんでした。僕はマウンドで頑張るだけでした」とストレスなく、その能力を遺憾なく発揮していた。



苦しみ抜いた1年半


 だが3年生となり、時本に加え、ともに投手陣を引っ張ってきた大野亨輔(現MHPS)が卒業し、エースを任されるようになってからは苦しい投球が続いた。春は2勝3敗で防御率4.06。秋にいたっては0勝4敗で防御率5.83。ストレートを速く投げようと思うがあまり、走者を気にして速いモーションで投げようと思うがあまり、体が前に倒れる形になり、キレ・制球力ともに落ちてしまっていた。また、時本の後の正捕手もなかなか固定されなかった。


「これまでは(時本を頼って)自分で考えてやってこなかったので、高いレベルの対応をしてくる相手に追いつかない部分がありました。ストレートでガンガン押して変化球で勝負という投手だったのに、当時の映像を見ると、変化球でカウント取ってストレートで勝負ということが3年の時は増えていましたね」


 そう話すように投球の軸もブレてしまった。そして4年生となった春は0勝2敗、防御率7.58という過去最低の成績でチームに貢献することはできず、入れ替え戦でも高橋は白星を挙げられず、2部降格が決まった。


渡辺俊介さんのように


 だが、ドラフトを前にした昨秋に高橋は復活を遂げる。夏場には齋藤正直監督と藤田康夫投手コーチがブルペンでつきっきりとなり、1球ごとにフォームをチェックした。


 当然、これまで積み上げてきた方法論とは異なるアドバイスもあり、迷うこともあったと言うが、その試行錯誤の中で得られるものも多かった。


「まず“やってみた上でやりやすい方をやる”という考えもできました。また(打者出身の)監督からもアドバイスをもらうことで“打者からの目線で投球することも大事なんだな”と引き出しが増えました」


 そして一時期陥っていた「速く投げよう」「他の投手よりも良い投球を」といった邪念も消え去り、「そんなに良く見せようと思っても、それ以上の評価はもらえませんし、自分は自分の評価があって、他人は他人の評価がある」と開き直ることができた。2部リーグとはいえ5勝をマークし復活を印象付けた。


 また、「球速が出てなくても、空振りを取れたり、高めのボール球で三振が取れました。球速を出さずに打者を抑えるのができたことが収穫です」と最後のシーズンで確実な手応えを得た。


 この4年間、高橋自身の中で変わったことを尋ねると「全部変わりました。1人のバッターをアウトにする難しさを年々感じました」と話す。一方で「野球を楽しもうという気持ちは変わらずにやってこられました」とも言う。


「勝った時は当然楽しいですし、負ける時も理由があって負けているわけで、それを改善できたら楽しいですからね」


 そして、この4年間高橋を見てきて変わらなかったのが、負けた後の飄々とした態度だ。負けて泣いたことがあるかを尋ねてみると「無いですね。負けて悔しがるのを相手に見られるのが一番嫌いなんで」と力を込めた。



「一つひとつのことに一喜一憂したくない」と語る高橋礼 ©高木遊


 憧れる投手には同じアンダースロー右腕の渡辺俊介(元ロッテ/現新日鐵住金かずさマジック)の名前を挙げる。「表情に出さず淡々としているけれど、それで内心燃えている感じがカッコイイと思います。一つひとつのことに一喜一憂したくないですね。それは、自分としてはカッコ良くなく見えてしまうというか。キレイに見えないです」


 変則だが小手先ではかわさない。飄々としているが心は熱く。4年間で確立した揺るがぬ哲学や美学が、これからも高橋の原動力となる。


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(高木 遊)

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