児童相談所設立、治安の悪化が起こる可能性は低いとの見解

1月22日(火)7時0分 NEWSポストセブン

2015年度 児相に寄せられた相談種類別対応件数

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 年間13万3778件という過去最多の虐待件数をよそに、児童相談所の建設は反対された。東京・南青山、そして、大阪でも同様の反対も起こっていた…。


 2017年11月、東京・南青山の一角にあった約1000坪の国有地を港区が約72憶円で購入した。さらに約32億円をかけて「港区子ども家庭総合支援センター(仮称)」を建設し2021年4月の開設を目指す、一大プロジェクトがあることを発表した。


 施設には児童相談所のほか、子育て相談などができる「子ども家庭支援センター」や、養育が困難な母子家庭が入居する「母子生活支援施設」が併設予定である。


 しかし、それから約1年後の2018年10月、施設建設のために港区が開いた説明会で、反対派の住民が区の担当者に猛然と噛みついたのだ。この様子がテレビなどのニュースで取りざたされた。

 

 さらに2016年、大阪市北区にあるタワーマンション内に「北部こども相談センター」(児相)を開設する計画が持ち上がった。現場は梅田からほど近くて交通の便がよく、有名芸能人も居住する高級マンションである。


 大阪市は政令指定都市のなかで虐待相談件数が最も多いにもかかわらず、市内に児相は2か所しかなかった。そこで3か所目として、計画が出されたのだ。東京でも、大阪でも、反対派住民の大きな反対理由は、児相設立による「治安の悪化」と「資産価値の低下」だ。


 だが専門家は、いずれの要因も「現実に起こる可能性は少ない」と指摘する。元東京都児相相談員で心理司の山脇由貴子さんはこう語る。


「非行の子供について心配する人が多いのですが、一時保護された子供たちが児相で過ごすのは原則2か月のみで、その後は児童自立支援施設や児童養護施設などに送られます。 また、基本的に居住スペースには鍵がかけられているので、脱走は現実的に不可能です」


 保護された子供の心情を考慮しても、治安悪化は考えにくいと山脇さんは続ける。


「非行で保護された子供たちは、早く家に帰って仲間に会うためには、施設でおとなしくすべきだと知っています。下手に脱走したり暴れたりしたら、家庭裁判所送りになることもわかっている。児相による一時保護には非行を抑止する絶大な効果があり、非行に走った子供や虐待された子供を放置する方が、よほど地域の治安が悪化するのです」


 児相の一時保護所で過ごした経験を持つ漫画家の上野りゅうじんさん(38才)が、当事者としての意見を述べる。



「児相に保護されている家族は自分たちの問題解決に必死で、周辺住民に嫌がらせをしたり地域のイメージを汚したりすることまで考える余裕はありません。それに一時保護所は一般的に非公開で、簡単に出入りできる施設ではありません。地域に影響を与えることはめったにないように思います」


 不動産コンサルタントの長嶋修さんは「地価下落説」を一笑に付す。


「確かに南青山は都内でも有数の一等地で、不動産価値は日本トップクラスです。ただし一般的に不動産の資産価値が落ちるのは、におい、騒音、振動やトラックの往来などがあって日常生活に支障をきたす迷惑施設が周辺にある場合。例えば工場や葬儀場、鉄道や幹線道路などが該当します。しかし、児相はそうした迷惑施設ではなく、これまで児相ができて不動産価格が下がった事例は1つもありません」


 つまり、児相の建設に対する主立った反対理由は根拠を欠くものばかりだ。


※女性セブン2019年1月31日号

NEWSポストセブン

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