森田実×大下英治 米自由化は細川首相でなければ実現不可能

1月23日(木)7時0分 NEWSポストセブン

 神輿に担がれ、すぐさま放り出し、悠々自適の生活──そんな「殿」のイメージは、今回の東京都知事選出馬劇における意外なまでの執着心と戦略性によって覆された。政界を長く取材してきた森田実氏(政治評論家)と大下英治氏(作家)2人が、政治家・細川護熙氏の本質に迫る。


大下:私は今回の出馬は当然のことと受け止めています。彼が熊本県知事時代に取り組んだのは水俣病対策をはじめとする環境問題。「グリーンイシュー」は彼の原点なんです。3.11の東日本大震災の後は瓦礫を利用して森の堤防を作るプロジェクトをやってきたし、もちろんその頃から脱原発を主張してきた。もっとも、小泉さんがいなければ出馬はしなかったろうけど。


森田:政治家として彼が一番やりたかったのは、もともと地方分権でした。1980年代の時点で彼はすでに、地方分権に関するしっかりとした内容の本を書いている。当時の彼は凄い勉強家。最近の政治家は人の話を遮るけど、彼はちゃんと話を聞いて、知識を貯め込んでいました。単なる神輿に担がれた「殿」ではない。


大下:総理大臣になった時も、彼が一番やりたかったのは行政改革だった。地方分権を進めて、自治体に全部任せれば霞が関の人が減る、と。小泉さんに先駆けて、郵政民営化をやろうとしたのも彼でした。しかし、どちらも一緒に連立を組んでいた社会党が反対したために実現できなかった。一方、小沢一郎さんの目的は政治改革で、細川連立政権は小選挙区制を実現させました。政治改革が細川政権の功績といわれることに、彼は複雑なんです。


森田:行革が思うようにできなかったという思いは残っているでしょう。だから、首相を辞めた彼が、あえて都知事選に出るのは納得がいく。出馬表明での「首相になってできることもあるし、できないこともある。知事だからできることもあるし、できないこともある」という発言はそういうこと。



大下:小泉さんは総理を5年5か月もやったから、もう“成仏”してるけど、彼は9か月しかやっていないから、成仏していないんですよ。その点では、1年で辞めた安倍さんと似ている。


森田:確かに。ただ、首相としての細川さんには米の輸入自由化を実現したという大きな功績がある。


大下:あれは細川さんでなければ、できなかった。なぜなら、天皇=米というほどに、皇室にとって米は重要な存在なんです。天皇は新嘗祭で米を神に捧げる、それは天皇にだけ許されたことなんです。だからこそ、細川さん以外の人が米に触ったら、右翼にやられていたかもしれない。


森田:彼は近衛家の娘である母親の家で育ちましたが、近衛家は藤原鎌足を祖とし、五摂家の筆頭として天皇とも血がつながってくる。細川家はその近衛家とつながったことで、格がグッと上がりました。その第一子の護熙氏ですから、彼は本質的には、いわば御簾の内側にいる宮廷政治家です。天皇家とつながりがある細川さんだから、米の自由化を実現できたわけです。


【プロフィール】

●森田実(もりた・みのる)1932年生まれ。政治評論家。近刊に『「橋下徹」ニヒリズムの研究』(東洋経済新報社)。


●大下英治(おおした・えいじ)1944年生まれ。作家。新刊に『小泉純一郎「原発ゼロ」戦争』(青志社)。


※週刊ポスト2014年1月31日号

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