小銭を借りて返さない50代女性上司。権力を振りかざしやりたい放題の彼女に、泣き寝入りしたくないと、直接対決へ!
2025年1月24日(金)12時30分 婦人公論.jp
(イラスト:オオイシチエ)
厚生労働省が発表した「令和元年版 労働経済の分析」によると、働きやすさ向上のために重要と考えている項目について、回答者の中では「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」が最も多い結果となりました。仕事と育児、もしくは仕事と介護の両立支援なども重要視される中、職場の人間関係で悩む人は年齢問わず多いようです。中嶋智子さん(仮名・福岡県・無職・73歳)は、損害保険会社に勤めていた頃、お金にセコい上司がいたそうで——
* * * * * * *
ゴマすり課長と猫かぶりの女性がやってきた
私が30代後半から勤めた九州の損害保険会社は、和気あいあいとした雰囲気で、楽しく働いていた。しかし20年ほど経った頃、吸収合併されることに。人事異動により、課長や主任も総入れ替えとなり、穏やかな雰囲気はガラリと変わった。
新たに赴任した課長は、この部署の業務に詳しくなく、私たちに注意することといえば「スカートを着用しなさい」とか、「丈が短い」など仕事以外のことばかり。しかも彼の上司が来ると「皆さん立って挨拶しなさい」とゴマすりに勤しむ。
この情けない課長にも嫌気がさしていたが、それ以上に問題なのは新しくやってきたAさんであった。
私より2歳ほど年上の彼女は、最初は猫をかぶっていたものの、半年も経たぬうちに本性をむき出しにした。私たちスタッフの何倍もの給料をもらっているにもかかわらず、面倒な仕事はすべて部下に丸投げする。
課長に次ぐ役職であるという権力を振りかざし、やりたい放題。それでも彼女に言わせれば「前は次長待遇だったのに! 給与も大幅にダウンしてがっかり」とのことらしい。
会社の備品が新しく導入された折も、担当責任者であるAさんは一切説明を聞こうとせず、業者に対して「少しは値引きしなさいよ」と言い放つ始末。コストダウンを自分の手柄にしたいと考えたのか、値引きを承諾しない業者と盛んに言い合う。
しかし業者は首を縦にはふらず、とうとう諦めた彼女は、不機嫌な表情で私のほうを見て、「操作するのはこの人だから詳しく教えておいてちょうだい。50歳をすぎてお歳だから覚えるのに時間がかかるわよ」と業者に言い捨て、どこかへ行ってしまった。
思えば、以前いた生え抜きの社員さんは、何て優しかったのだろう。ボーナス日には、支給されない非正規雇用の私たちに、近くのホテルで慰労を兼ねて美味しいランチをご馳走してくれた。
ほかにも、年末に取引先からカレンダーをいただくと、まず私たちから選ぶよう段取りをしてくれ、残りを自分たち社員が持ち帰った。ひとつひとつは些細なことでも、その細やかな気遣いがどれだけ嬉しかったか。
一方Aさんはというと、当然のようにいただき物は自らがまっ先に選び、残りを私たちへ与える。あらゆる言動から彼女の卑しさが感じられ、職場の空気は悪くなるばかりだった。
数百円のために嘘八百を並べたて
ある日、私は浮かない顔をしている同僚のBさんに声をかけ、昼食にでかけた。
「通勤中にAさんに会ったら言われたのよ。『あなた、この店でコーヒーを買って会社に来ているのね。私のぶんも買ってきて』と。Aさんもその店の前を通るのにと思ったんだけど、『私は忙しいから買う暇ないの』と言われちゃって……」
Bさんはしかたなく2つ買っていったものの、いざコーヒーを渡しても、「小銭がないからあとで」と支払わないそう。これまで数杯分はもらい損ねていると聞いて頭にきた。私たちよりずっと給料が高いくせに、借りたお金にルーズだなんて。Bさんだけでなく、泣き寝入りしている人は何人もいた。
お金にセコイAさんだが、自分への投資は惜しまないようだった。私の髪に白いものが1本でも交じっていると、「白髪頭なんてみっともないわ。さっさと染めなさい」という言葉とともに、自分が月に何度も美容室に通っていることや、愛用の高級化粧品などの自慢話を始める。数百円の支払いは渋るのにそんな話ができる神経が、私には信じられなかった。
あるとき私が課長のお抱え運転手さんと雑談していると、通りかかったAさんに、「500円貸して」と頼まれた。財布はロッカーにある鞄の中で取りに行くのは面倒だから、と。私が知らんぷりを決め込んでいると、見かねた運転手さんが「僕が用立てておくよ、500円でいいの?」と財布を取り出した。
何度も頭を下げて、その場を離れた彼女の様子に違和感を覚えたが、何とものの15分も経たないうちに戻ってきたのだ! Aさんは運転手さんに返金して丁寧にお礼を述べ、そそくさと去っていった。
その姿を見て私は気づいた。彼女は私が運転手さんに、自分の日頃の行いについて告げ口していると思ったのだ。彼を通し課長の耳に入ったら大変と警戒し、今の一連のやりとりで几帳面さをアピールしたということだろうか。私はあ然とした。あからさまに人を立場で差別するとは……。
なるべく接触を避けていても、彼女は私がひとりの時を狙って「1000円貸して」と頼んでくる。もちろん渋ったのだが、あまりにしつこく言うものだから私も根負けして貸してしまった。ところが30分経ち、昼休みが終了してもAさんは返しに来ない。
同僚に事情を話すと、「彼女のことだから、借りてないわ、ととぼけるかもしれないわよ。返してもらいに行ったほうがいい」と背中を押され、すぐ彼女の席へ。Aさんは電話中だったので、私はそばで立って待っていた。電話が済むと、Aさんは私の顔をチラッと見て、「何の用?」と平然と言い放ったのだ。
私が「午前中にお貸ししたお金を返してもらいにきました」と言ったとたん、「私借りたかしら? そういえば100円だったわね」と、言うではないか! 人をばかにしているのかと腹が立ち、「100円でなく1000円でしょう。ちょっと前のことも忘れるようでは、あなたも終わりですね」と言い放つと、すごい形相でにらまれた。
ただ周囲の社員さんの視線を感じたのか、不機嫌な顔でお金を出し、「ありがとう」の一言もなく席を立った。
こんな貸し借りのバトルは3〜4年ほど続いたが、ゴマすり課長から本社生え抜きの課長に代わると、Aさんはあっさり左遷された。悪評が広まり、周囲の視線に耐えかねたのか定年前に退職した。たった数百円でも、その積み重ねで失った信頼は、お金には換算できないほど大きいものだったのだろう。
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働く人のメンタルヘルスサポート
中嶋さん(仮名)は、新しい上司との関係性にトラブルを抱えていましたが、周囲に相談したり、違う上司の登場により、働きやすい環境に戻すことができました。
ちょっとした人間関係のトラブルから、解決できずに大きな問題に発展してしまうこともあります。
2022年4月から新たに施行された労働施策総合推進法(パワハラ防止法)により、パワハラ防止措置がすべての事業主に義務化されました。
次の3つの要素をすべて満たす言動を「パワーハラスメント」と定義されています。
(1)優越的な関係を背景とした言動であって、
(2)業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
(3)労働者の就業環境が害されるもの
個人の受け止め方によって不満に感じる指示や指導でも、「業務の適正な範囲内」ではパワーハラスメントには該当しない場合や、上司から部下だけでなく、同僚や部下からのパワハラもあるのが現状です。
個人の問題ではなく企業全体が取り組む問題ですが、周りに相談できない、会社内に相談窓口がない場合は、国や都道府県が運営する相談機関があります。
職場の人間関係で悩んだ際には、ひとりで抱え込まず誰かに相談してみると、解決の糸口が見つかるかもしれません。
●政府広報オンライン「NOパワハラ なくそう、職場のパワーハラスメント」
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201304/1.html
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