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想像以上に早く訪れた、松山ケンイチの変化。『A LIFE〜愛しき人〜』/第二回レビュー

messy1月24日(火)2時45分
画像: 『A LIFE ~愛しき人~』公式サイトより
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『A LIFE ~愛しき人~』公式サイトより

 『A LIFE〜愛しき人〜』(TBS系)第二回が1月22日に放送された。今回の放送で筆者が最も注目したいのは松山ケンイチ演じる、お坊ちゃん医師・井川颯太の変化だ。

 壇上記念病院の院長・壇上虎之助(柄本明)の手術を行うため、シアトルから急遽帰国した沖田一光(木村拓哉)。手術を成功させシアトルに帰ろうとする沖田を、親友であり壇上記念病院の副院長・壇上壮大(浅野忠信)が引き止める。壮大は、沖田の昔の恋人であり、現在は自身の妻である壇上深冬(竹内裕子)に脳腫瘍が見つかり、手術の担当を沖田に頼んだためだ。手術を引き受けた沖田は、壇上記念病院に留まることになり……というのが前回までのおさらい。

 今回は、井川が「宮内庁御用達」という和菓子職人・森本(平泉成)の大動脈瘤手術を、「VIPだから」という理由で引き受けるところから物語が始まる。無事に手術を成功させたと思われたが、術後、森本は職人にとって命ともいえる右腕の痺れと痛みを井川に訴える。「理論的にはありえない」として、森本の症状を心因性のものと決めつける井川。一方、沖田は痺れの原因を突き止めようと森本のカルテを求めるが、井川は「俺の患者ですから」と拒否し、「(森本が病院に来なくなったのは)心因性だと納得してくれたから」「クレーマーの相手をいちいちするのか」と言い返す。そんな井川に沖田は「医者失格だな」と言い捨てる。

 森本が安定剤を大量服用して自殺をはかったことで状況は一変する。医療ミスが原因だとして病院側を訴えようとする森本の家族に対して、経営第一主義の壮大や井川の上司である第一外科部長・羽村圭吾(及川光博)は、金を積んでなんとか穏便に済ませようとする。一億円を提示し、家族との和解が成立しかけたとき、沖田は森本の痺れの原因を突き止め、再手術を提案。しかし手術を提案するということは医療ミスを認めることになってしまう。壮大は「副院長として病院とスタッフを守る責任がある。これ以上波風たたせたら病院が持たない」と断るものの、責任は全て自分がとるという院長のひと言で手術は実施されることとなる(ちなみに沖田が必死に説得しているときの壮大の迷いは、彼にまだ「経営第一主義でいいのか」という気持ちがあることを示しているのだろう。今後どう変わっていくのか、注目だ)。

 手術は成功し、右腕の痺れが取れた森本から病室で和菓子を手渡された沖田が、「患者からいただきものは……」と静止する看護師を無視してその場で頬張り、他の医師にも和菓子を勧める、というところで本回は終わる。

 今放送では、前回で示されていた病院内の対立関係がより顕著になった。患者のことを第一に考える沖田や深冬、虎之助と、経営第一主義の壮大や羽村(そして日和見な他の医師たち)が、医療ミスへの対応方法で対立する。壮大は虎之助を院長の座から引きずりおろそうと画策しており、その背景には沖田への嫉妬と、深冬を奪われるのではないかという恐れ、虎之助に認められないという焦りを抱いていることが今回は前放送以上に分かりやすく提示されていた(虎之助も無神経にすぎると思うのだが、それは別の機会に書きたい)。羽村もまた同様で、親友である壮大が院長になった際の見返りを求めているのだろう、今回の医療ミスを週刊誌に垂れ込んだ当人だ。

 そんな中で、自らの立ち位置を決めかねているのがお坊ちゃん医師の井川である。



 井川は、父に医学会の権力者をもつエリートで、沖田が病院に来るまでは羽村の言うことをよく聞く、世渡り上手なお坊ちゃんだった。自身よりもレベルの低い大学出身の沖田に、「論文を書かないと偉い人たちに認められない」と言ったりもする。ある意味、非常に素朴で、問題が生じた際に真っ先に切られる役回りの人間でもある。実際、今回の医療ミスで羽村は井川に対して「大丈夫だよ」と言いながら、どこか他人事のようであったし、壮大は病院側の責任の取り方として井川を地方の病院に飛ばそうともしていた。

 一方で、若く、世間知らずであるがゆえに、変化の可能性を持つ人物でもある。それは第一回放送でも垣間見えていた。例えば、羽村と共に銀行員の接待を受け、帰り際のタクシーで、手渡された菓子折りから羽村が金銭の入った封筒を取り出したときの戸惑い(井川も受け取ったのかは定かではない。病院に帰った後に、菓子折りを手荒に扱っていたのが、自分が金銭を受け取れなかったための怒りか、病院の汚れに対する葛藤かはまだ不明だ)をみせるし、沖田の見事な手術に感銘を受けたりもする。病院の経営側が「(こちらの責任を認めることになるので)安易に『大丈夫です』といわないように」と指示を出したにもかかわらず、森本に「大丈夫です」と敢えていう程度に、若さと自信と情熱をもった人物だ。

 第一回視聴後「おそらく井川は、今後紆余曲折を辿りながら、沖田側の人物になっていくのだろう」と予想していたのだが、それは思った以上に早く訪れた。沖田が森本の右腕の痺れを解消しようとしている姿に反発していた井川だったが、医療ミスを起こし、誰も自身を守ってくれないことを知り、さらに森本が自殺未遂をはかったことで動揺し、態度を改める。沖田と共に、壮大へ森本の再手術を訴えかけ、院長からの承諾を得たあと「俺もオペに入れさせてください」と懇願。「医者失格って言ったろ」と一蹴する沖田に「俺の患者です!」と声を荒げる。

 ここまでは、自分のケツを自分で拭いただけと見ることもできよう。だが井川が、沖田側についたことを確信させる決定的なシーンがあった。

 前述の通り、壇上記念病院は患者からのいただきものは受け取れないことになっているようだ。沖田は気にせずそれを頬張ったし、沖田側であろう深冬、柴田由紀(木村文乃)は喜んで手に取る。一方、羽村ら他の医師が手を伸ばさない。この和菓子を食べるかどうかが、沖田側と壮大側のどちらかを分けるのだ。

 「すみませんでした。命さえ助ければ救った気になっていました。でも沖田先生を超えてみますから!」と鼻息荒く謝罪と挑戦状を突きつける井川。沖田は和菓子を差し出し、井川は「いただきます!」と言って、それを頬張った。筆者はここで、井川は沖田についていくのだろうと確信した。

 すでに書いたとおり、実は井川の態度がはっきりするのはもう少し先になると思っていた。好意を寄せる柴田が、沖田といい雰囲気(恋愛か、信頼かはまだわからない)なのをみて井川は嫉妬していたし、沖田に一種の憧れを抱いているようでしかし羽村にも追従している様子もあり、病院内の対立が深まる中で、徐々に沖田側につくものだと思っていたのだ。もちろん、今後、1度か2度、井川は揺れ動くのだろう。筆者は、柴田にいいところをみせようと暴走し、なんらかの大きなミスをしてしまい、沖田がそれをカヴァーするというパターンになるのだろうと予想していたのだが、今回の構図とあまりにも似ているため、また別の、例えば権力者である父親が関係する何かがきっかけになるのかもしれない。

 というわけで第二回では、思った以上に早く、しかし予想とはそこまで外れない形で、井川の変化が見れた。本ドラマはまだまだいろいろな側面から描けることがありそうだ。次回放送に期待したい。
(ドラマ班:デッチン)

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