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美少女ゲームに希望はあるのか?minori酒井「業界の既存システムは死んだ。でも再編すれば新たな可能性が広がるかもしれない」

おたぽる1月24日(土)12時0分
画像:minoriの最新作『ソレヨリノ前奏詩』(2015年2月27日発売)
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minoriの最新作『ソレヨリノ前奏詩』(2015年2月27日発売)

 前編(http://otapol.jp/2015/01/minori.html)では美少女ゲーム業界におけるクラウドファンディングについてminoriの酒井伸和氏に考えをうかがった。後編では美少女ゲーム業界について改めて、社長とは異なる視点で話をうかがうことができた。ここで語られたのはBusiness Journalで語られたことや、前編ともまた違った実に興味深い話である。

——『ソレヨリノ前奏詩』が10月30日から予約開始となりましたが、開発状況はどうでしょうか。

酒井伸和(以下酒):2015年2月27日にリリース予定なんですが、いま若手に頑張ってもらっていますよ。

——昨年発売された『12の月のイヴ』は評判が良かったようですね。販売本数も目標に届いたのですか?

酒:目標には届きました。ただ、今のminoriは、『すぴぱら』(編注:2012年5月リリース)で得た教訓、つまり市場規模から見た販売絶対数としてはそこそこでも、内部的なコストのかけ方の問題で目標に届かないという不釣合いな状況を改善するために、目標の達成点をできるだけ低くしているんですよ。大成功はしないかもだけど、次の開発が許されるくらいの目標に届かせるにはどうすればいいのか、という作り方に切り替えたのです。

——『すぴぱら』が失敗したとはいえ、その後に出した『夏空のペルセウス』(編注:2012年12月リリース)も評判良かったですよね。

酒:『すぴぱら』の失敗とはあくまで内部的な問題であり、作品の質的な意味で失敗したわけではありません。事実、続編のリリースに対する意見は今でも多く頂きますし、それに対する回答は海外市場とリリースした通りです。

『夏空のペルセウス』については、プレイ時間が"短い"という否定的な声がありました。minoriの場合、一本のゲームに入るCGの枚数は他社さんのフルプライス作品のおおよそ1.5〜2倍です。これは現状の演出方針でいくならば、必ず必要になるので仕方ありません。それにも関わらずテキストは多少短めです。それはどこに予算を割り振るかの話で、minoriは画面という部分に予算を大きく割いてエンターテイメント性を確保しているからなんです。もちろん僕自身が、長大なものより密度が高くて切れ味のいいものが好き、という好みの問題もありますが。

——作品が長いと感じるか短いと感じるかは人それぞれだと思いますが、確かにネット上では「短い」という声が多かったですね。

酒:でも、『夏ペル』も言われるほど短くはないんですよ。テキスト容量で言えば1.1メガバイトあり、これはうちでいう『ef - the latter tale.』(編注:2006年12月リリース)とだいたい同じ容量になります。ですが、現実問題としてCGを増やして演出を細かくしたところで、そこはあくまで技術的な部分ですから、評価されることは少ないですし、本来は切り分けて評価する部分でもないんです。あくまでストーリーを見せるための技術であって、必要十分揃っていればいいわけですから。ですが、この必要十分のハードルが僕の考えと市場では乖離しているということです。

——具体的にどう乖離を感じるのですか?

酒:例えば、僕は目パチも口パクもしない作品はプレイしていて気持ち悪いと感じるのですが、そんなのは不要だという意見もあるでしょう。これはどっちが正解というわけではないです。これがメーカーの個性となる部分ですから、どちらでもいいんです。

 先ほどの話(http://otapol.jp/2015/01/minori.html)に戻りますが、ここで出資者が「ほかのブランドでは採用していないんだから、そんなもの不要だ。無くせ」と強硬に主張してきた場合、金銭的事情で従わなければならないことも出てきますよね。これが没個性化につながって、似たり寄ったりの作品ばかりになっていくわけです。皆が同じに似たりよったりの作品を作れば作るほど、消費は早まり、ユーザーが離れていきます。そして、魅力ある市場、作品群ではなくなり、当然ながら作者として業界を目指す人も減ります。そしてクオリティの低下が起きるという負のスパイラルから抜けられなくなります。

 minoriでは、テキストの容量に対してリッチな素材を用意していく制作方法をとっていいます。ゆえにリクープライン(編注:初期費用を回収すること)が高く、リスクも高いわけですが、そこをどんどん妥協していって没個性化し、多様性を失うのであれば、特にminoriで制作する必要は無くなるわけですから、組織を維持する必要はなくなります。

——しかし、ゲームの満足度という点で言えば、ユーザーは8,800円という高額な値段を払ってゲームを購入するわけですから、プレイ時間が短いよりも長いものを求める傾向にあるかもしれませんね。

酒:絶対値的な意味で値段が高いというのは理解できます。でも、価格決定のプロセスは需要と供給のバランスなので仕方ありません。あくまで標準価格ベースですが、8,800円をベースにして十分利益を得ていた時代もありました。その後どんどん市場が小さくなり、すでにその価格では従来のクオリティを維持してのリリースが難しくなってきています。今後もこの価格設定を維持するためには、素材量を削るか、そもそもの価格を上げるか、ということになってしまいます。

——価格は簡単に上げられないでしょうから、素材量を削るという流れになるのでしょうか。でも、コストを下げるために素材を削ったらユーザーの評価が下がりそうですよね。

酒:コストが最もかかる部分はCGなので、一時は増大傾向にあったCGも最近では減ってきました。でも実は、CGは極端に削らない限りユーザーの評価に直結しないんです。その代わりに、ユーザーの評価を落とさないために増えたのがテキストです。テキスト量はプレイ時間に直結しますし、コストとして全体に占める割合はCGより少ないので、投資効果が高いと感じてしまうからだと思います。

——確かに本も厚ければ読むのに時間がかかるように、テキスト量は多ければ多いほど、プレイ時間は長くなりますね。

酒:特に実際にプレイしていない人が他人の感想を得る場合、プレイ時間という実数の出るものを指標に語りたくなるのは否めません。ですが、テキスト容量が増えればシーン数が増えるわけですから、本来演出に必要とされる素材の量は増えるはずなんです。でも、増やせばコストが上がってしまうので、多くは立ち絵劇の時間を長くして回避しているわけです。そうなると画面の変化がなくなりますし、立ち絵だけでは表現できないことも多々あるので制約がきつくなって面白みが欠け、ユーザーはスキップしてしまうんです。それでも投資効果が高いと感じてしまう分、ユーザーが読もうが読まないが、テキストの水増しは横行するでしょう。

 ただ、素材を削るといっても、ゲームの根幹の企画だったり設定だったりする部分はソフトの規模によらず、一定の時間を割くことになるわけです。結果的に時間を削れるのは作業レイヤーになってからなので、実際には極端なコストダウンにはつながっていないんです。

——手の届きやすいよう安くしたくても、多くは売れないから値段は高めにせざるをえない。ブランドのジレンマですね。

酒:そうですね。価格を下げることで手が届きやすくなるかというと、恐らく実売価格で1,000円、いや、980円以下くらいまでハードルを下げないと手が届きやすくなったとは言えないと思います。でも今の国内市場の規模じゃ絶対に不可能です。

 ですから、Steam版の『eden*』は市場規模に応じて安い設定になっています。そもそも開発費は国内で回収済みで、かかった費用は翻訳費ですから、最低限ここを回収できればいいわけですし、市場規模に応じた売上げがあれば、さらに未来が見えるかもしれません。非常に低コストで実験を行えるわけです。その結果、ズッコケたら撤退すればいいだけですし(笑)。

■これまでの美少女ゲームの常識は一度忘れるべきだ

——その『eden*』(編注:2009年9月リリース)は比較的短い作品でしたが、立ち絵が一切ない美少女ゲームでは常識破りな作品でしたね。

酒:「映画はこうあるべき!」「マンガはこう!」みたいに、どのコンテンツにも、「●●は絶対にこうあるべきだ!」という"かくあるべき論"ってありますよね。もちろん美少女ゲームにもあります。立ち絵があってイベントCGがある。これが基本のフォーマットです。

 だけど、"かくあるべき論"はナンセンスなんです。本来フォーマットは1つではなく、いろんな表現方法があっていいわけです。ルールなんてあって無いようなもの。ルールが無いということは、制作者のエゴを反映させやすい自由な作品作りができるということです。だったらテキスト100キロバイトに絵素材のデータが莫大に入っている太く短いゲームがあってもいいわけです。

——『eden*』は実験的作風にも関わらず、それを裏付けるように成功しましたよね。

酒:発売当時には新しい試みを認めてくれる土壌がありました。だけど今は市場の衰退と共によりテンプレート化が進み、レビューが画一化し、自分の感性に合わないものを叩くことをあたかも一般論のように流布する"異物を認めないユーザー"が相対的に増えていますね。そこに美少女ゲームの終わりの始まりを感じました。

 これも"かくあるべき論"がナンセンスだという話と同じく、創作は多様性を認めることですので、「俺の好きなこれ、いいでしょ?」というお勧めをどれだけやっていけるか、それで盛り上がれるかが市場拡大のキーなわけです。かつては多様性を認めて、才能を掘り起こしてきた文化のはずが、今は多様性を排除して均質化を目指している滑稽な状態に陥ってしまったと言えるでしょう。

——確かに美少女ゲームはほかのゲームジャンルと比べて、制作する上での制約は限りなく少ないかもしれません。ならばゲームのプレイ時間やテキスト、CG、海外市場などの展開などを含めて、これまでの美少女ゲームの常識を見直すことが必要ということでしょうか。

酒:美少女ゲームの作り方はこうあるべきだ、売り方はこうあるべきだ、という考えは一旦置いておく時期に来たのは間違いないでしょう。前回(http://otapol.jp/2013/09/300.html)、僕は社長という立場で、ゲーム業界に対し、否定的ともとれる発言をしましたよね。しかしあれは、美少女ゲーム業界がこれまで培ってきた既存のスキーム(編注:計画や体系のこと)が終焉を迎えつつあるんじゃないかという一つの提示でした。もちろん人気があって右肩上がりのブランドもいくつかあるのは事実です。だけど一昔前なら爆発的な加速を見られたろうし、もっと景気がいい話も聞けていたでしょう。ちょっと懐古っぽいですけど(笑)。

——あのインタビューには賛否両論、様々な意見が飛び交いましたね。

酒:インタビュー後、「minoriのバカが美少女ゲームは終わったと言っている。余計なこと言いやがって」と同業者たちが発言しているのを耳にしたんですよ。実に残念な気持ちになりました。一度既存のスキームが崩れて通用しなくなってしまったら、再び始めることはできないんですか? 既成概念を捨てて、スクラップアンドビルドができないのであれば、足の腐った象と一緒です。「そこを考える時期なんじゃないか?」という提案として受けとれなかったということなんでしょうね。社長を辞めたいのも、日々の雑務に追われて時間が削られる現状を切り分けて身軽になりたいからです。儲かってる儲かっていないというキャッシュフローの問題はものすごく大事なので、どうしても社長はそこに注力する必要があるんです。

■美少女ゲームの持つ大きな可能性

——社長ではない立場としては、別の考えをお持ちなのでしょうか。

酒:既存のスキームが死に体なのはまぎれもない事実ですが、創作活動が死んだとは一切考えていません。今すぐ変えることはできないかもしれない。でも一旦落ち着いてこれまでのスキームを最初から見直せば、新たに何かが生み出される可能性があるわけじゃないですか。

——まだ美少女ゲームに希望はあるということでしょうか。

酒:美少女ゲームは創作の土壌としての可能性が非常に高いと言えます。シナリオライターがラノベに進出したり、アニメに進出してヒットを飛ばしたりしていますよね。原画家が一般誌でイラストを描いたりもしているわけです。ここのところ制作される映画やアニメは別途原作があったりするんですが、大多数の美少女ゲームは1つの会社内で、オリジナルで最初から作ります。出資構成が単純なのも利点だと思います。ここに美少女ゲームの可能性の高さがまだまだ眠っているということです。

——前向きなお話をいただいたところで、ここ最近アニメ声優ではなくて、美少女ゲームの声優になりたいと公言する若者が増えてきているようです。これは業界にとってポジティブなことだと思うのですが、いかがでしょうか。

酒:本来声優業をいわゆる「声のお仕事」とするならば、さまざまなジャンルがあってしかるべきですし、「声で食べていく」ということを主眼に置くならば、美少女ゲームを含め色々と挑戦して幅を広げたほうが、最終的に自分に返ってくるものは大きいと思います。

——声優というのは、いまや超人気職種です。しかし、想像以上に厳しい世界だと聞きます。

酒:声優といえば、テレビアニメや外画(編注:映画の吹き替え等)というのが相場でしたが、そこで活躍するには、早い段階で進路を決めて勝ち抜き戦に挑まなければなりません。所属する事務所によってどれだけ活躍できるかがほぼ決まってしまうわけですから、その仕事を供給できる事務所の養成所に入り、声優を目指すというレールに乗らなければならないわけです。

 ですが、多くの声優志望者はこのレールに乗れません。と言うよりも、そのレールに乗らなければならないと気づいた頃には手遅れになっていることがほとんどです。中学高校を出たばかりの子供に数年先を見通してリサーチして......なんて、周りに知っている人がいなければ無利難題です。ですから、せっかく魅力があっても、誰も見ていないが故に埋もれてしまって、結局仕事が無くて引退していってしまう声優さんはごまんといます。

 だけど、僕はそれが残念だなぁと常に感じています。ですから、minoriでは「こういう条件で出演できる人募集!」みたいに大小できる限り多くの事務所に声をかけますし、さらに、フリーの方がエントリーできるようにTWOFIVEさんに窓口になってもらっています。こうすれば、埋もれた実力者を発掘できる可能性が大きくなるんですよ。

——御社でやられているようなことをアニメの現場でも行えれば活性化しそうですね。

酒:残念ながらそれは無理です。もちろんすべてが不可能とは言いませんが、大多数のアニメは出資者が多岐に渡り、それぞれがそれぞれの分野で出資額を回収する構造になっている以上、難しいと言ったほうがいいでしょうか。

 つまり、声優人気で回収しなければいけない出資者が絡んでくる以上、プロモーション押しされた人気声優を使わなければならない事情が発生するわけです。なにも無名声優を使うより、全開で露出をして押し押しの声優をヘビロテしたほうが、投資効率がいいのは自明の理ですから、当然そのようになるわけです。何も悪い話ではなくて、それが回収への近道なんですから、ごく当たり前のことで、そこでリスクを取る必要性が無いから、そうなっているだけのことです。

——CDやBlu-ray販売などを含めたビジネスを優先させなければいけないですから、納得せざるを得ない事情ですね。

酒:でも、美少女ゲームはそこにしばられる必要性が薄いんです。なぜなら出資者が少ないからなんです。minoriの場合なら、minoriだけの単独出資、もしくは、数少ない支援社があるパターンだけと言うことがほとんどですし、さらに美少女ゲーム自体が、声優人気で売るメディアではないからです。美少女ゲームで一番重要なのはビジュアル、次がシナリオです。それ以外の要素は売上げに大きな影響を及ぼすほどではありません。もちろん貢献度ゼロとは言いませんが、付加価値であって、それが本筋になることないのです。

——ここでも"出資者の数"が重要な位置を占めるのですね。

酒:もし声優自身が「声の演技で食べていきたい」と思うのであれば、美少女ゲームには仕事があるわけですし、比較的ニュートラルに実力本位で選ぼうとする土壌もあります。

 ここらへんが声優界に少しずつ知れ渡って行った結果が、美少女ゲームに出演したいと公言する声優が増えてきた要因だと思います。実際仕事をしてみると、拘束時間が長い分ギャラも悪くないと思います。また、実力が知れ渡れば、息長く起用されますしね。

■まずは始めてみないと何も変えることはできない

——御社では声優をはじめ、新人のライターや原画家の起用にも積極的ですよね。

酒:新たな才能を見つけ、コストをかけて彼らを育てるのは業界の使命であり、業界への投資です。いま第一線で活躍している人たちは年齢的に40歳前後が多いと思うのですが、いつかは今、若い人たちが先頭に立つときがきますよね。そのときのために僕らは少しでも早く技術を継承しておかなければいけないし、お金をかけて育てておかなければいけません。技術継承をしなければ、その先にあるのは滅びでしかないんです。

 売るためのスキームは変わっていくでしょうけど、制作という意味で根本的な部分は変わることはありません。特にパーツという単位まで切り分けてしまえば、機材の進歩による技術革新はあるものの、大筋で変化があったかというと、長年変化はしていません。ですから、ここらへんは積み重ねの部分ですので、どんどん若手に伝えて、次世代を育成していかなければならないのです。ですから、minoriでは若い人たちに「金は出すし、技術は教えるから自分が売れると思う作品を自由に作ってみろ」と言っています。

——ずいぶん太っ腹ですね。

酒:おそらく、僕自身がそうやって育ってきた経緯があるからだと思います。この点において、社会に出てから非常に恵まれた生活を送っています。そういった意味で自身が上に立っている今が一番辛いのかもしれませんね(笑)。もっとも、投資した若い人たちが育ち、僕らには無い感覚で新しいものを作って、それが売れて稼いでくれるようになれば、僕らベテランはその甘い蜜を分けてもらえるかもしれないじゃないですか。

——少しずれるかもしれませんが、御社では電気外祭りなんかも主催していますよね。

酒:電気外祭りは出店側、ユーザー側の双方の参加費を無料にしています。これは、参加が無料ならばコミケに出店できない小さなメーカーもイベントに参加できるし、ユーザーだって気軽に来られるかもしれない、と考えているからです。これって業界の活性化に直でつながりますよね。本来だったら業界団体や流通さんが考えてやればいいんですよ。でも、誰もやらなかった。やらないうちに手遅れになるのが一番まずいパターンです。だったら、やればいいってだけの話です。

——しかしイベントを打てば時間を取られるし、何しろ場所代や人件費などお金が必要になります。実際行動に踏み切るのはかなり大変なことです。

酒:回収のスキームは後から考えるとして、とりあえず始めてしまわないと前に進まないですから、始めなきゃダメなんですよ。スポンサーは自分たちで探せばいいし、見つからなければ自分たちで出資すればいい。イベントを運営すると、妨害されたり、半ば脅しみたいなこと言われたりなんてこともあります。

 でも、そういったものに屈して、後進の芽を摘んでしまっては、結局後で苦労するのは自分たちです。自分たちの市場を広げないまま焼畑をやったらどうなるか、そこは単なる荒野になって、誰もいなくなるだけです。その前兆が見えたからこそ、色々手を打っていかなければなりません。もちろん、これを自分だけやるのは限界があります。ですから、協力は仰ぎますし、ポリシーに賛同してくれるブランドさんは協力してくれます。

 ここでポイントなのは、自社の利益は最後に回すことです。一番リスクを負って、一番利益を後回しにする。短期的に見るとそうなっていることが大事なんです。なぜなら、これにより自身の目指す方向性を明確にできるからです。リスクを負うからこそ、目的達成のために必死になれますし、利益が後だからこそ、必死に利益を生む方法を考える。自身がいい思いをしたときは、皆もいい思いをしているというのが理想ですから。

——コミケ前夜祭とまでうたわれるくらいに大きなイベントに成長させたのは大変すばらしいことです。しかし、実際はもう少し小規模で展開した方がコストもかからず、儲けも出せるのではないですか?

酒:確かにminoriはminoriだけで小さくイベントを打ったほうが収益は多くなるんだろうな、と考えることはよくあります。ほかのメーカーだってそれはきっと同じでしょう。でも、そうはしなかった。恐らく市場を拡大したほうが時間はかかるけれど最終的に自社の利益は大きくなるだろうと考えているからです。これが数年で撤退を決めているならば、その場しのぎの売り抜けをしたほうがいいんですが、そう考える前に一つあがいておきたかったし、周囲の同業者がどのような反応をするのかも知りたかった。そこらへんを知って初めて、悲観するかどうか決めたかったわけです。そうすれば、業界自体の変革がちょっとは見えてくるかもしれませんしね。

——新しい美少女ゲーム業界が始まるきっかけになれそうですか?

酒:どうでしょうか(笑)。でも何かのきっかけになれたらいいですね。
(文・構成/Leoneko)

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