人生100年時代に蓄えておきたい「見えない貯金」とは

1月24日(木)16時0分 NEWSポストセブン

人生100年を稼ぎ抜く力とは?(時事通信フォト)

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 厚生労働省が1月15日に公表した「就業者長期推計」によると、高齢者人口がピークを迎える2040年には、就業者の4人に1人が60歳以上になるという。学生バイトの定番だったファミレスやコンビニでも、高齢店員が増えている。安倍政権は高齢者の就業を推進しているが、経営コンサルタントの大前研一氏は、これは「政府が年金政策の失敗のツケを国民に回そうとしているだけ」と指摘する。


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「70歳までの就業機会を確保する」──安倍晋三首相は自ら議長を務める「未来投資会議」の席上、こう述べた。『日本経済新聞』(2018年10月23日付)によると、65歳までの継続雇用を企業に義務付ける制度はそのままで、65歳以上の「シニア転職」を増やすのだという。会議では「70歳就業」に伴う年金制度についても話し合われ、現在65歳の受給開始年齢を高齢者が自ら選べる範囲を広げること(70歳以降に受け取るなど)も検討するという。


 だが、騙されてはいけない。これは「65歳以上になっても働き続けて社会保障費の抑制に協力しろ」「年金は当てにするな」というメッセージであり、言い換えれば、もう定年退職後は年金だけに頼っていたら生活していけない時代になる、ということである。要は、政府が年金政策の失敗のツケを国民に回そうとしているだけの話なのだ。


「高齢社会白書」(2017年版)によると、高齢者世帯(65歳以上の者のみで構成するか、これに18歳未満の未婚者が加わった世帯)の平均年間所得(2014年)は297.3万円。これは、それ以外の世帯(母子世帯を除く)の平均644.7万円の5割弱でしかない。しかも、高齢者世帯の68%は総所得に占める公的年金・恩給の割合が80%以上となっている。


 つまり、いま50代以下の人たちの大半は、この先、「生涯現役」や「雇用改革」を名目に年金の支給額が減額されたり受給開始年齢が引き上げられたりしたら、いわゆる「下流老人」になってしまい、場合によっては「老後破産」に追い込まれかねないのだ。



 そうなることなく、定年退職後の人生を豊かで充実したものにするためには、死ぬまで「稼ぐ力」が必要となる。「稼ぐ力」があれば「名札」と「値札」が付くから、自分が勤める会社では余人をもって代えがたい人材となり、他社からも引く手あまたになる。起業することもできるので“定年”という概念はなくなる。


 その「稼ぐ力」がないと、会社依存の人生、他人依存の人生、政府にいいように左右されてしまう人生になってしまう。だが、自分の人生は自分自身で操縦桿を握ってコントロールすべきである。


◆「稼ぐ力」は“見えない貯金”である


 そもそも人生は、働くためではなく、楽しむためにある。


 たとえば、イタリア人は人生をエンジョイすることしか考えていない。みんなそのために働いている。男性の多くは昼と夜に二つの仕事を持っているし、女性も子育てが終わったらせっせと働く。稼いだお金は貯金せず、人生を楽しむためにどんどん使う。夏のバケーションは1か月以上が当たり前で、長い人は2か月休む。最後は貯金がなくても年金があれば何とかなるさ、と考えているのだ。


 しかし、そういう割り切った発想は、日本人にはできない。重い病気になるかもしれない、年金だけでは生活できなくなるかもしれない、といった「漠たる将来の不安」から大半の人が消費を節約して貯蓄に励み、個人金融資産が1800兆円以上に膨らんでいる。だが、これは間違っていると思う。


 私は2004年に『50代からの選択』という本を書いたが、その要旨は、50歳までに出世していなければもう将来の見込みはないから、人生そのものをエンジョイしてハッピーに死ぬことを考えなさい、というものである。


 それに対して近著『50代からの「稼ぐ力」』で伝えようとしたメッセージは、50歳までに出世していなくても「稼ぐ力」さえあれば、自分の好きな人生を生きることができるという、より前向きなものである。「稼ぐ力」は、50代になってから勉強しても遅くはないが、できればもっと早く、40代までに身につけることが望ましい。


 定年退職後に限らず、どの年代でも「稼ぐ力」があるというのは、いわば柔道や空手の「黒帯」を持っているようなものだ。もし何らかのトラブルや転機に遭遇したとしても、黒帯の実力を持っていると余裕があるからビクビクしないで済み、人生が安定するのである。



 要するに「稼ぐ力」があれば、それが一番の「蓄え」になるのだ。いわば“見えない貯金”である。ふだんは使わなくてもよいが、いざとなった時は繰り出せばよいのである。「稼ぐ力」は皆さんの人生設計において、金利が雀の涙ほどもつかない貯金や全くあてにできない年金よりも、よほど頼りになるのだ。


※大前研一・著『50代からの「稼ぐ力」』(小学館刊)より一部抜粋


【プロフィール】おおまえ・けんいち/1943年福岡県生まれ。1972年に経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク入社。本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、1994年退社。以後、世界の大企業やアジア・太平洋における国家レベルのアドバイザーとして幅広く活躍。現在、ビジネス・ブレークスルー(BBT)代表取締役会長、BBT大学学長などを務め、日本の将来を担う人材の育成に力を注いでいる。

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