小泉孝太郎に密着 「役者15年目の開眼」生んだ意識変革語る

1月25日(月)11時0分 NEWSポストセブン

『警視庁ゼロ係』の撮影現場での小泉孝太郎

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「『下町』、どうでした?」──俳優・小泉孝太郎(37)は、こちらの姿を見つけると、自分から感想を求めてきた。昨年の民放連ドラで平均視聴率1位となったドラマ『下町ロケット』(TBS系)で、小泉は主人公に立ちはだかる悪役・椎名直之社長を熱演した。本誌特集記事の「イラッとさせられたキャラ総選挙」でも断トツの1位になるなど、見事な嫌われぶりだった。


「“好青年”のイメージが地に堕ちてしまいましたね」と本人はおどけるが、自身も十分な手応えを感じた演技だったという。


「最初にオファーをいただいた時、『僕がキャスティングされた意味はなんだろう』と悩みましたが、視聴者に『あいつ嫌だ』と思われてやろうと、自分の中に数%ある闘争心とか野心を、絞り出すように演じました。椎名の場合、それが嫌らしい闘争心だから大変なんですけど」


 そして『下町ロケット』の勢いのまま撮影に臨んでいるのが、放送中の『金曜8時のドラマ「警視庁ゼロ係〜生活安全課なんでも相談室〜」』(テレビ東京系)だ。小泉は、主役の警視・小早川冬彦を演じる。


 プロデューサーの松本拓氏は「いい意味で期待を裏切ってほしい」と話す。主役の冬彦は、頭が切れるキャリア組でありながら、度を超えた「KY」。嫌味スレスレの直言を繰り返すので、「視聴者に愛して貰うのが難しい」(松本氏)という難しい役どころだ。


「小泉さんの持ち味は役の幅。目の動きは繊細ですし、日頃、好青年イメージの彼だから生まれるギャップはまさに我々の想像を大きく超えてきた」(同前)


 テレビドラマのプロたちが、小泉孝太郎という、キャリア15年、今年38歳になる俳優にかける期待はこれほどまでに大きいのである。


 昨年は『下町ロケット』をはじめ、『エイジハラスメント』(テレビ朝日系)、『ボクの妻と結婚してください。』(NHK BSプレミアム)、『死の臓器』(WOWOW)などに出演。『警視庁ゼロ係』は連続ドラマ4本目の主演作となる。


 順風満帆に見える小泉だが、「役者になったばかりの頃は自信なんてまったくなかった」という。


「20代の頃は、『主演なんてオレ、一生できない』と思ってましたもん。最初の頃はたったワンシーンの数行の台詞がうまくいえずに、落ち込んでばかりでした。だけど、中学、高校と野球部だったからなのか、生まれも育ちも違う人たちが集まってひとつのことをする“現場”が好きだった。撮影現場は楽しいけれど自信はない、という日々に悶々としていました」


 小泉に意識改革が起きたのは30歳を過ぎてからだった。彼は、食事から台本の覚え方に至るまで、「万全の準備」を徹底するようになる。20代の頃は、食べれば元気が出るとばかりに毎食腹にたっぷり詰め込んで現場に出ていたが、キーとなる役を演じるようになって、考え方を改めた。


「もっと自分の中の感覚を研ぎ澄まさなければダメだな、と思ったんです。それには普段の生活では使わないスイッチを入れないと無理だと気づいた。だから常に空腹な状態で現場に挑もう、と。そのほうが、五感が敏感になるんです」


 ストイックさは、体型にも表われた。みるみる痩せていく小泉に、マネージャーからは「そこまでしなくてもいいんじゃないか」という忠告もあった。しかし小泉は聞き入れない。「満腹だとハングリー精神もなくなってしまって、張り詰めているものが緩んでしまう」と、頑なに“腹五分目以下”を続けている。


 役作りに関しても、小泉のポリシーは変わらない。


「下町の時も、今回の『警視庁ゼロ係』もそうですが、撮影初日の前夜は一睡もできません。Aパターン、Bパターン……と、表現の方法を7〜8パターン用意します。ひとつしか準備しないと、監督に求められたものと違った時に対応できませんから。そうやって考えていると朝になってしまい、そのまま現場に向かうことになります」


 小泉は自身の役作りを、「人生で出会ってきた人と照らし合わせてキャラクターを固めていく」タイプだという。喋り方、リズム、表情……。


「嫌な出会いにも感謝しないと。『下町』の時は、実際に会ったある起業家を参考にしました。その方の笑顔って本当に苦手だったんです。笑顔なのに目が笑っていないし、常に人を見下している。でも、その人との出会いが役作りにも生きたわけですから」


『警視庁ゼロ係』ではあの名優を役作りの参考にした。


「僕が演じる冬彦はトム・ハンクスの持っている雰囲気をイメージしました。例えば『フォレスト・ガンプ』での、台詞がない時に人の話を聞いている佇まいを特に参考にさせてもらいました。ただ、同じような演技にしてしまうと物真似になってしまうので、そこが難しいのですが……」


 事前に考えてきたパターンは、「現場で顔合わせをし、演じてみて変えていく」という。


「原作小説の冬彦は嫌味で棘のある人物。だけど、このドラマで求められている冬彦像はちょっと違うな、と。皮肉屋ではなく、理想は『愛される天然』。その辺はあまり意識せず演じようとしています。意識して天然キャラをやってる天然なんていないですから(笑い)」


 小泉は今回のドラマで、初めて台本や演出に一歩踏み込んだ。「こうしたほうが良いのでは?」と自分の意見をぶつけたのだ。


「生意気かもしれませんが、監督と相談しながら、台詞を変更したり、削ったりと、自分の意見を取り入れてもらってます。アドリブも随分入れてますしね。こういう欲求が出てきたのは初めて。大きな挑戦をしているドラマですね」


 年末年始は父である小泉純一郎・元首相と酒を酌み交わした。


「『下町のあの悪役、いいじゃないか』といってくれたのは嬉しかったですね。今回のドラマも、きっと観てくれると思います」


 そういう小泉孝太郎の笑顔は、気負わず、自信に溢れていた。


◆こいずみ・こうたろう/1978年7月10日、神奈川県生まれ。2002年に『初体験』でドラマデビュー。2009年『コールセンターの恋人』でドラマ初主演。2013年、2014年には宮部みゆき原作の連続ドラマ『杉村三郎シリーズ』に主演。現在、バラエティ、CM、ラジオでも活躍中。


取材・文■角山祥道 撮影■江森康之


※週刊ポスト2016年2月5日号

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