佐藤愛子さんのエッセイ、大ヒットの理由を書店員が分析

1月25日(水)7時0分 NEWSポストセブン

佐藤愛子氏の著書が大ヒットの理由とは?

写真を拡大

 93才の佐藤愛子さんのエッセイ『九十歳。何がめでたい』が大ヒットとなっている。昨年8月の刊行からわずか5か月あまりで46万部を突破した。


 朝日新聞や産経新聞、毎日新聞のほか、数多くの紙誌書評で取り上げられ、佐藤さんにもインタビューの依頼が殺到。こうした「怒濤狂乱」の日々は、作家生活68年の佐藤さんにあって、初めてのことだという。女性セブン新年号に寄せたエッセイで、こう綴った。


〈だからいきなりこういう騒ぎになると居心地が悪くてしようがない。「どうしてこんなに賣(う)れるんでしょう?」と訊かれるが、「さあ? 買った人に聞いて下さい」と答えるしかない〉


 東京駅八重洲南口にある八重洲ブックセンター本店に行くと、本書をズラリ並べた上に貼られたポスターの〈めざせ100歳、100万部!〉という大きな文字が飛び込んできた。その下には<いまの日本にはこの人が必要だ! 平成のご意見番にして爆走老人、90歳を過ぎてますます意気軒昂の著者が描く、笑えて笑えて考えさせられる一冊です。>と書かれている。そんな大胆なキャッチコピーを考えたのは、商品企画部の内田俊明さん。


「書店で大きく展開するにあたって、愛子先生には100才を目指していただき、私たちはこの本が46万部といわず、いっそ100万部まで行くように頑張ろう、と(笑い)。なぜこんなに売れているかといえば、タイトルに『九十歳』と、初めて年齢が入っていたことが大きかったのではないでしょうか。


 昔からのファンでも、愛子先生が90才を迎えていたことに驚いたファンのかたも多かったようですから。それでも衰えずに元気にわが道を爆走する愛子先生は、他人を怒ったり叱ったりする人がいなくなった今の日本に必要な人で、若い人には新鮮に映り、高齢者には懐かしく映るのだと思います」


 とりわけ高齢者の支持を集める理由には、すっかり変わってしまった世相が関係しているのではないかと、書評家の温水ゆかりさんは分析する。


「現代は、人情という有機的なものより、法やルールなど無機質なものに規範を求める方が合理的で便利だとされる時代です。その中で、佐藤先生が書いているのは、昔はよかったと礼讃する『老人優越主義の繰り言ノスタルジー』ではありません。世の中、なんでこうもややこしくなったのかという茫然自失であり、日本人を日本人たらしめてきた美質が忘れ去られようとしていることへの悲憤慷慨です」


 日本人の美質、それは倹約・堅実・謙虚の3Kだと温水さんは言う。


「3Kの時代には『人に騙されても人を騙すような人間にはなるな』と教える美徳がありましたし、日本人は身ぎれいに生きることを好んでいましたが、今は違います。倹約した工夫と知恵のある暮らしは便利な道具に取って代わられ、堅実に生きていると負け組と呼ばれかねず、謙虚にしていると、声の大きな者にやり込められる。


 高齢者は自分たちが信じてきた価値観が通じない時代になって、自信をなくしています。だから佐藤さんの『私は時代に乗り遅れている年寄りだけれど、言いたいことは言いますよ』という毅然とした態度に拍手喝采を送り、元気や活力を取り戻しているのだと思います。怒るのにも実は体力がいって、その点、先生の文章には体力と気力が漲(みなぎ)っています。“私、怒ってます”の図で、読者を笑わせ、共感させるのはたぐいまれなセンスです。先生の芸に座布団100枚! もっともっと書いて、日本中に怒りと笑いの渦を巻き起こしていただきたいです」


 日々の生活に疲れている皆さんも、元気になること請け合いです。


※女性セブン2017年2月2日号

NEWSポストセブン

この記事が気に入ったらいいね!しよう

エッセイをもっと詳しく

BIGLOBE
トップへ