精神疾患患者の父 寝屋川監禁事件に「気持ちはよくわかる」

1月25日(木)7時0分 NEWSポストセブン

愛里さんが15年にわたり監禁されていた自宅

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 平屋の木造家屋の周囲には、高さ2mのベニヤ合板が張り巡らされ、玄関ドア、軒先、外壁の上と至る所に監視カメラが設置されている。郵便受けは内部から閉じられており、開くことがない。大阪・寝屋川市の住宅街に建つ一戸建ては、異様な外観で周囲から浮いていた。


「この家に娘さんがいたなんて、まったく知らなかった。ピンポンしても誰も出てこないし、郵便受けがこの状態だから、回覧板も回せない。中年夫婦が住んでいるのは知っていたけど、近所づきあいは皆無でね。まさか家の中でこんな悲劇が起きていたなんて…。近くに住んでいながら何もできなかった自分が悔しいです」


 塀下の献花台に手を合わせる近隣住人は、そう言って悔やんだ。昨年12月23日、この家で1人の女性が遺体で発見された。柿元愛里さん(享年33)。発見時の体重は19kg。自宅敷地内のプレハブ小屋で、衣類も身につけず眠るように死んでいたという。


「司法解剖の結果、死因は凍死。極限の栄養失調状態で、極寒の環境に置かれていたとされています」(全国紙記者)


 同居する両親が「娘が死んだ」と寝屋川署に自首したことで発覚したこの事件は、その後、衝撃の事実が続々と明らかになっている。


 愛里さんが過ごしたプレハブ小屋は、簡易トイレと給水タンクを備えただけのわずか2畳半の空間で、二重扉で仕切られ、中からは開けられない仕組みになっていた。


「室内にもカメラが設置され、愛里さんの様子を常時監視してDVDに映像を残していました。彼女の行動範囲はこの2畳半の空間のみで、食事は1日に1食。風呂にもほとんど入れてなかった。驚くべきはその期間で、愛里さんは15年前からずっと同じ生活を強いられていたことがわかっています」(前出・全国紙記者)


 監禁と保護責任者遺棄致死罪で逮捕された父親の泰孝容疑者(55才)、母親の由加里容疑者(53才)はともに容疑を否認し、「すべては娘のためだった」と供述しているという。捜査関係者が語る。


「閉じ込めた理由について、愛里さんが15才頃に発症した精神疾患が原因だと供述しています。暴れ回って家族に危害を加えることもあり、自傷行為も頻発していたそうです。すでに小6の頃から病の兆候があり、複数の病院で『統合失調症』と診断されたと話しています。監禁も“療養目的だった”と。


 父親はガラス工場に勤める工員で、プレハブ小屋の増築から二重ドア、監視カメラの設置まですべて自分でやったと供述している。ちなみに愛里さんは2人姉妹の長女で、次女はすでに独立し、家から出ていた。まだ不可解な点も多く、今は彼らが撮影していた監視カメラを詳しく分析検証している最中です」


◆誰にも相談できず、対応策も分からず…


 現代版“座敷牢”とでも呼ぶべき地獄の環境で亡くなった愛里さん。「人でなし」「極刑に値する」と、世論は両親へのバッシングであふれているが、違う視点で見ている人間もいる。



 和歌山県精神保健福祉家族会連合会の障害者施策推進委員長で、精神疾患患者の家族の支援活動を続ける大畠信雄氏が語る。


「寝屋川の事件には胸が締めつけられる思いでした。両親のやったことは決して許されることではありませんが、私自身、精神疾患を患う長男を持つ身として、家に閉じ込めようと思ったことがないか、と言われれば、ある。全国の精神疾患患者の家族は、誰もが一度は同じ思いに駆られているはず。それほどまでに、患者の言動に家族は苦しんでいるのです」


 厚労省が3年ごとにまとめる「患者調査」によると、2014年の精神疾患患者は392万人で、過去最高の数字を記録。前回調査時は320万人で、わずか3年間で70万人増えている。そのうち、愛里さんと同じ「統合失調症」と診断された患者は77万人。妄想、幻覚を筆頭に、自傷他害行動にまで発展するケースの多い同症は、いまだ発症のメカニズムや根本的な原因は解明されていない。


 長男が中2の時に統合失調症を発症した大畠氏もまた、われを忘れて激昂し、暴れ回るわが子を前にして、なす術がなかったと言う。


「殴られて目がパンダのように腫れたり、あばら骨が2本折れたこともある。教育方針が悪かったのか、遺伝なのか…と自分を責め続けながら、かといって周囲には相談もできない。他者に救いを求めるよりも“誰にも知られたくない”という思いが勝ってしまうんです。来客があるたびに2階に閉じ込めていた、という家族の悩みもよく聞きますが、この気持ちはとてもわかる」(大畠氏)


 医療機関に頼ろうにも精神疾患患者は自分が病だという自覚がなく、頑として通院しないケースが多いといい、大畠氏の長男も同様だった。


「私の場合、“眠れる薬をもらいに行こう”と言って、なんとか病院に連れ出しましたが、息子はもらってきた薬をその日のうちにすべて焼いてしまった。どうしようもなく、ただただ絶望するしかなかった。寝屋川の事件も同じ苦悩の延長にあったのではないでしょうか。誰にも相談できず、対応策もわからず、希望を見い出す術もなくなった結果、『閉じ込める』という行為以外残されていなかったのではないか。そんな気がしてなりません」(大畠氏)


※女性セブン2018年2月8日号

NEWSポストセブン

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