木村佳乃の『後妻業』にアッパレ ブラックコメディの理想型

1月26日(土)16時0分 NEWSポストセブン

木村佳乃の突き抜けた演技が話題(番組公式HPより)

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 ストーリーが売りのドラマもあれば、役者の芝居が見物の作品もある。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。


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 いよいよ始まった期待のドラマ。木村佳乃が主演する『後妻業』(フジテレビ系火曜午後9時)です。初回(1/22)は関西地区平均視聴率が13.7%、関東地区も8.7%と数字もまずまずの好発進。


「西高東低」のスタートは、武内小夜子を演じる木村さんのコテコテ大阪弁セリフやド派手な衣装、ぶち切れた悪女ぶりに、関西視聴者の熱い興味が注がれている証拠かもしれません。


 後妻業とは、ご存じ遺産相続目当てで資産家の老人を狙う結婚詐欺女のこと。現実に起こった事件は衝撃的で、「近畿連続青酸死事件」は連日報道されました。当ドラマの原作である黒川博行著の小説『後妻業』が、事件を予言したのではと話題になったことも記憶に新しい。すでに映画化もされていて、物語の世界観は捉えやすい。


 テーマがインパクト大で、ストーリーもイメージできる。犯罪の手口にも複雑な謎解きはない。だとすれば……このドラマの見所は何といっても、「役者」そのものでしょう。


 初回が放送されると百家争鳴、さまざまな意見が飛び交い、好き嫌いがはっきりと分かれるクセの強いドラマであることが浮き彫りになりました。たしかに、木村佳乃さんの表情・役作りは半端ではない。


 美形の女優がここまでやるか、という振り切れ感。大股開きで舌を出し、結婚相手のお爺さんが倒れた時にはシャンパンを注いで大笑い。躊躇が無い。突き抜けている。小夜子の人生に陰はあれど、あっけらかんの悪女ぶり。


 木村さんの演技は「小夜子」という人物のエッセンスをがっちりと掴んでいて、芯がしっかりしている。だから、思い切り振り切れた演技も可能になる。ここまでいくと、爽快感。「悪役とは、演技にためらいがあってはならない」という教訓が見てとれるようです。


 昨今のコメディドラマの多くは、小手先でふざけて笑いをとろうとしたり、演技する側の「笑わせよう」という自意識が見え隠れするけれど、それほど白けるものはない。


 演技する側はとことん大真面目に役を突き詰めていく。その結果として、じわりと滑稽さが滲み出してきて、それが見ている人の笑いを誘う──ブラックコメディドラマの理想型ではないでしょうか?


 このドラマが本当に理想に届くかどうかは、今後お手並み拝見ですが、少なくとも「笑わそうという自意識が見えない」ほど役に没入している木村さんにアッパレです。



 もう一点、侃々諤々の議論が発生しているのが、大阪弁のセリフ。関西方面の視聴者からは、「下手で聞いてられへん」「せめて主役は関西出身の役者使ったらよかったのに」という厳しい意見も多く聞かれました。


 その一方、「下手な関西弁が独特の味を出している」「関西テレビ制作だからわからないはずない。意図して違和感をねらっているのでは」「完璧ではなく違和感を残す戦略」と深読みする人も。


 関西言葉がよくわからない東京人としては、今回の大阪弁がマイナスに作用するのかどうか判断できませんが、もしこれが東京弁にこだわった脚本だったら? やはり下手な東京弁を聞かされれば居心地悪くなるでしょう。


 要は、今違和感を抱いている人をも巻き込んで、今後のドラマの展開で「違和感」を「面白さ」が凌駕してしまうかどうか。そこにかかっています。


 一番びっくりしたのは「主役を常盤貴子と入れ替えろ」という意見。考えてみると、しかしなるほど一理あるかも。常磐さんは幼い頃関西育ち。今別局の弁護士役で張り切っていますが、実績を振り返ると関西弁の役にばっちりハマるはず。その上、あの美しい顔で思い切り年寄りを騙す悪女を演じてみるのも、また面白かったかも。


 ……などと、視聴者に熱心に悪役・悪女について考えさせ、セリフについて議論百出すること自体が、このドラマへの関心の高さであり凄味なのかもしれません。

NEWSポストセブン

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