『名も無き世界のエンドロール』佐藤祐市監督インタビュー|「映画館で観ることでしか得られない没入感の中で、岩田剛典と新田真剣佑の青春を体感してほしい」

1月28日(木)12時30分 映画ランドNEWS

『名も無き世界のエンドロール』
佐藤祐市監督インタビュー


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』佐藤祐市監督

行成薫による同名原作を「ストロベリーナイト」「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」『累-かさね-』などで知られる佐藤祐市監督が、岩田剛典と新田真剣佑の初共演で映画化した『名も無き世界のエンドロール』が1月29日(金)より公開される。メガホンを取った佐藤監督に、製作の舞台裏や映画と小説における時間の概念の違いなどについてじっくり語ってもらった。(取材・文:渡邊玲子/撮影:ナカムラヨシノーブ)。


──緻密な構成とダイナミックな展開に唸らされるという意味では、監督が過去に手掛けれた「ストロベリーナイト」や『累-かさね-』などの作品にも通じる、佐藤祐市監督の真骨頂とも言える作品であると感じました。人気原作の映画化にあたり、監督が今回もっとも大切にされたことは何ですか?


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』 (C)行成薫/集英社 (C)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会 (C)エイベックス通信放送

佐藤監督:原作の構造が複雑なので、それをどうやって脚本に落とし込んでいったらいいのか、原作者や脚本家、プロデューサー含め、みんなで何度も揉みました。複雑な部分を複雑ではなくしてみたり、あえてもっと複雑にしてから、もう一回戻してみたり……みたいなことを、何回も何回も繰り返しやったんです。どうすれば観客に届けることができるのだろうかと、みんなで試行錯誤しながら作り上げていった感じですね。本当に難しかったです。


──冒頭から常に緊張感が感じられて、物語の世界に引き込まれました。


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』メイキング写真

佐藤監督:物語の主な登場人物は、キダ(岩田剛典)とマコト(新田真剣佑)とヨッチ(山田杏奈)とリサ(中村アン)の4人なんですが、彼らが生きていく時間をどう紡いだら最後まで飽きずに観てもらえるんだろうかというのが今回の僕の一番の課題だったので、現場でもそこに一番気を遣ったし、一番悩んでいたと思います。それぞれのシークエンスが、全体のストーリーの中でちゃんと生きているのかどうか考えるのが一番難しかった。だから正直、岩ちゃんにもマッケンにもお芝居の一挙手一投足に対する細かいことは、ほとんど言っていないんです。


──実年齢差がかなりある中で、岩田さんと新田さんと山田さんの3人が幼なじみの高校生を演じるというのは、かなり思い切った選択ですよね。


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』 (C)行成薫/集英社 (C)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会 (C)エイベックス通信放送

佐藤監督:最初は、岩ちゃんからも「高校時代も僕がやるんですか?」と驚かれたんだけど、この物語の性格上、高校時代も本人がやらないと彼らの関係性が成り立たないと思って、「そこはやってください。やらないとダメだと思う」という話をしたような気がします。この話はキダとマコトの友情物語というか、ある種、友情を超えた愛情物語のような側面もある。つまり「2人の男の生きざまを描いた青春映画」という捉え方をした上で、現場でも台本を何回も何回も読み直しながら、撮影を進めていったんです。年上である岩ちゃんをマッケンもちゃんとリスペクトしていたし、そうすればアンちゃんはアンちゃんで「自分も頑張ろう!」と思うから。なかでも今回アンちゃんに演じてもらったリサというキャラクターは、彼女にとってかなりの挑戦だったはず。でも挑戦するためにその舞台に彼女が上がってきた以上、それをしっかり引き出すのが僕の仕事。だから僕もアンちゃんに何回もダメ出しをしながら一生懸命演出しました。山田杏奈さんはすごく頭の良い子で「これってどういう意味ですか?」って、撮影前からどんどん質問してきてくれたんです。「初対面でオジちゃんにそんなこと聞けちゃう子なんだ!」と思って(笑)、「これはこういう意味だよ、ああいう意味だよ」って説明したら、「あ、わかりました!」ってすぐに飲み込んで。だから現場でどんな風になるのかすごく楽しみでしたね。


──裏の世界で暗躍する川畑役を演じられた、柄本明さんのお芝居も素晴らしかったです。


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』佐藤祐市監督

佐藤監督:柄本さんにはそれこそ僕が助監督だった時代からお世話になっているんですが、小道具としてテーブルの上に置いておいたペーパーナイフですら、柄本さんの手にかかればあんな風に使われてしまうわけですよ(笑)。あれも何回かテイクしているうちにだんだんああいう感じになっていったんですけど、柄本さんなりの遊び方をしていただけたんじゃないかなぁと思いますね。ただそこに柄本さんがいるだけでも、充分濃いんだけどね(笑)。


──近藤龍人さんによるエモーショナルな映像と、佐藤直紀さんによる抑えた旋律もとても印象的でした。


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』メイキング写真

佐藤監督:映像作品においては、テンションがものすごく高いシーンや、ローなシーン、ミッドなシーンをあれこれ組み合わせながら、メリハリを作っていくものじゃないですか。でも今作の場合は、いわゆるメリハリの利いた展開で見せていくよりも、映画を観終わって、あの2人が生きてきた「名も無き世界」というものの全体像が分かったときに、「観て下さった方々の心に何が去来するんだろう」「それを楽しんでいただけるような作品にしたいなぁ」という思いがありました。佐藤直紀さんとも20年近く前からご一緒しているんですけど、今回の企画を頂いたとき「絶対に直紀さんに音楽を書いてほしい!」と思って、すぐにオファーしたんです。完成した作品を観てつくづく「直紀さんに頼んでよかったな」と思ったし、近藤さんの画も本当に素晴らしいから、ぜひとも大きいスクリーンで観ていただきたいなぁと思いましたね。


──美術や小道具にもすごくこだわっているのが伝わってきました。


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』メイキング写真

佐藤監督:撮影の近藤さんともあれこれ相談しながら、色調の変化にもいろいろ挑戦しているんです。俳優の細かいお芝居一つとってもそうなんですが、大きなスクリーンで観ることでしか得られない没入感の中で、キダとマコトの青春を体感していただきたいんですよね。


──まさにスクリーンで体感しないと分からない感覚を味わいました。観終わった直後はあまりの衝撃にすっかり打ちのめされてしまったのですが、一度観ただけではどうしても理解しきれない部分もあって、「いますぐは観たくないけど、どうしても気になってまた観たくなる」という、なんとも言えない不思議な鑑賞後感がありました。


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』メイキング写真

佐藤監督:きっと冒頭からいろいろなトリックが仕掛けてあって、「このシーンはあれから何年経っている」とか「さらにそれから何時間後」「今、彼はこれを目指していて、既にこれとこれは手に入った。でもこれはまだ手に入っていない」といったように、それぞれのシーンごとのキダやマコトの感情を、岩ちゃんやマッケンとその都度話し合いながら撮影したからだと思います。それらのシーンが全部つながって、この世界の構造がすべて分かったときにもう一度最初から2回3回と観直してみると、その時々のキャラクターの感情がひしひしと伝わってくるような、そんな作品になっているんじゃないかなと思いますね。


──既にストーリーを知っている原作ファンの方々が楽しめる仕掛けもありますね。


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』メイキング写真

佐藤監督:原作とはラストの描き方を含め、ところどころ違う部分もあるんですが、行成薫さんのお書きになった原作のハートみたいなものはしっかり受け止めて作ったつもりなので、原作ファンの方々の期待を大きく裏切ることはないであろうと自負しています。それこそ行成薫さんとも脚本づくりの段階で何度も打ち合わせをしたんですが、そもそも小説と映画とでは受け手の時間の概念が違うので、アプローチを変えないと成立しにくい部分がある。完成した映画をご覧いただいて、行成薫さんに納得していただけたのは本当に良かったです。


──小説と映画における時間の概念の違いとは?


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』 (C)行成薫/集英社 (C)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会 (C)エイベックス通信放送

佐藤監督:そもそも映像作品というのは観ている人が2時間なら2時間という同じ時間を体感するわけで、物理的に長くなったり短くなったりはしないけど、小説の場合は人によって費やす時間が変わりますね。読むのが早い人はパッと読めてしまうけど、人によっては何日もかけてじっくり読んだり、途中で「あれ何だっけ?」って戻ったりすることも可能なわけです。つまり、本には読む人が自分でゆっくり醸成する時間があるけど、映像作品はすべての人に平等なんです。そういった意味では、映像作品の観客はどうしても受動的になりがちですが、一歩前に出て「この登場人物はなぜいまこんな表情をしたんだろう?」とか「あの仕草には何の意味があるんだろう?」みたいに、ちょっと能動的に答えを探しながら観始めるだけで、観方がガラッと変わってくるんです。映画を観ながら「あ、なるほどそういうことだったのか!」「じゃあ、これは?」といったようにどんどん答えがつながっていくことで、知らず知らずのうちに作品世界にのめり込んでいけるものだと、僕は思うんですよね。


──今回dTVでも映画の半年後を描いたドラマが配信されるそうですね。


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「Re:名も無き世界のエンドロール 〜Half a year later〜」 (C)行成薫/集英社 (C)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会 (C)エイベックス通信放送

佐藤監督:詳細は明かせないのですが、映画の中で起きた出来事を経たキダたちが、その後の世界をどうやって生きていくのかをテーマにした、ある種の再生の物語でもあるんです。まずはできるだけ真っ新な状態で映画を観ていただいた後で、HPやパンフレットの解説を読んでもう一度最初から観直していただいたりしながら、dTVの配信版も楽しんでいただけるといいんじゃないかと思いますね。


──では最後に、佐藤監督がジャンルの壁を自由に飛び込えた映画やドラマ作りをされている理由とは?


名も無き世界のエンドロール
『名も無き世界のエンドロール』佐藤祐市監督

佐藤監督:僕自身もともと何でもやってみたいタイプというか、そうじゃないと自分の限界や仕事の向き不向きもわからないじゃないですか。映画やドラマ作りは、誰かに出会うことで自分も覚醒する仕事。人に会うから常に新しい何かが生まれるわけで「出会いがないと自分が新しくならない」と、僕は日々感じています。


──貴重なお話をありがとうございました!



映画『名も無き世界のエンドロール』は1月29日(金)より全国公開/オリジナル ドラマ「Re:名も無き世界のエンドロール 〜Half a year later〜」は1月29日(金)よりdTVにて独占配信


(C)行成薫/集英社 (C)映画「名も無き世界のエンドロール」製作委員会 (C)エイベックス通信放送


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