「大衆は素晴らしい」という論理批判できぬネットは自縄自縛

1月28日(木)16時0分 NEWSポストセブン

ネット上の意見は「自縄自縛」(呉智英氏)

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 ネットでは誰もが意見を発信している。また昨年は国会前で連日のようにデモが行なわれた。すべての人に発言権がある自由な社会の実現である。では、果たして、そこではどれだけ立派な議論が繰り広げられているのか。ネットニュースの専門家・中川淳一郎氏と、ネットに一切触れない評論家・呉智英氏が検証する。今回のテーマは「バカ」だったため、バカげた話から2人は開始した。


中川:まずベッキーの不倫についてはどう思います?


呉:ベッキーって?


中川:あ、呉さん、テレビご覧にならないですもんね。ベッキーというのは、品行方正で好感度ナンバーワンとされてきた女性タレントで、今までスキャンダルがまったくなく、CM契約も10本とかあったんですが、紅白歌合戦にも出場した「ゲスの極み乙女。」のボーカルと……。


呉:それはバンド名ね。


中川:バンド名です。そのボーカルの男と不倫していた。その男にはずっと支えてきた妻がいたんですよ。


呉:糟糠の妻だね。


中川:そう、そう。ラインでの会話までネットで流れていて、離婚届のことを“卒論”と呼び、ベッキーが早く卒論を出すようけしかけていて、その裏の顔にみんな仰天したんです。


呉:そんなもの公開しちゃってるの?


中川:で、ベッキーが出演していたCMのいくつかは他のものに差しかえられたんですが、リベラル気取りの擁護派が「降ろすなんてとんでもない。恋愛は自由だし、そんな契約は奴隷契約だ」、「女性の恋愛する権利を奪うのか」と騒いでいるんですよ。


呉:バカとしかいいようがないな。


中川:そう。だから、「お前ら、アホだ」っていったら炎上した(笑い)。


呉:恋愛だろうとセックスだろうと、やりたきゃやればいいじゃない。だけど、自分でその権利を売ったんでしょ。そういう契約をしたのなら破ったらダメだよ。


中川:それも、1本何千万円という単位の契約料をもらっているわけですからね。


呉:そういう自分だけが持ってる筋違いの理想論で、筋違いの批判をするヤツって、やっぱり多いよね。


中川:そうなんですよ。それで、ベッキーが可哀想だという連中がスクラム組むんですね。そうなると、周りがみんな同じ意見なので、世間もみんな同じだと錯覚して、「お前がいっているのは超マイナー意見だ」と噛みついてくる。これがネットの恐ろしいところ。


呉:そうだろうな。中川君も『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)で書いていたけど、みんなネットは素晴らしいというが、じゃあ、従来の言説を超える新しい文化が生まれるかといったら、とんでもない間違いなんだよ。


 たとえば、新聞投書ってホントにしょうもないものも載るけど、それでも最低限、掲載のハードルがある。雑誌の記事や単行本で出すには、さらにいくつものハードルを越えなきゃならない。だけど、ネットでは誰もが生の意見をそのまま出して、みんなの目に触れてしまう。


中川:そこなんです。


呉:これは大衆社会と連動しているわけですよ。だから、言論界にいる知識人は、それに対してなかなか批判をしないんだよね。


中川:みんなが自由に意見をいえる社会は素晴らしいという左翼的な文脈だと。


呉:だから、批判しにくい。


中川:それで、お前の意見は世間さまに見せる価値があるのか? って意見すると、「選民思想だ」って叩かれるんですよ。みんなが自由闊達に意見をいえて、そこで議論が生まれ、よりよい社会になるんだと。多様な意見を知ることは大事だという反論に負けちゃうんです。


呉:大衆は素晴らしい、すべての人に発言権があるという論理。これは、すべての人に価値があるという論理と同じだから、みんな批判できない。それで自縄自縛に陥っているんだよね。


※週刊ポスト2016年2月5日号

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