『嘘の戦争』と『カルテット』 火曜夜にセット視聴のススメ

1月28日(土)16時0分 NEWSポストセブン

『カルテット』番組公式HPより

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 そろそろ評価が揃い始めるタイミングである。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が、今季の見どころを指摘した。


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 ドラマ好きにとって、身もだえするような「曜日」が出現しました。それは火曜日。


 午後9時は草彅剛主演、SMAP解散騒動後のドラマとして注目を集める『嘘の戦争』(フジテレビ)。そして午後10時は『逃げ恥』後続の注目枠(TBS)、独特な滑り出しを見せる『カルテット』。


『嘘の戦争』と『カルテット』。 2つは、まったく違う風合いをもったドラマ。


 登場人物はかたや復讐に燃える詐欺師、かたやクラシック音楽の弦楽四重奏者。タイプも題材も違うけれど、そうした表面上のことだけではありません。言ってみれは、ドラマの作り方が「正反対」。それが、ドラマ好きにはたまらないのです。2作続けて見ればワクワク、ゾクゾク、ドキドキ。ドラマが持つ醍醐味というものが、ぎゅっと詰まった2時間はまさしく至福の時間。


 まず、『嘘の戦争』は、幼い頃、一家無理心中と見せかけ家族を殺された男の復讐物語。主人公・浩一は偶然真犯人と再会し、復讐の鬼と化す。自分の家族を陥れた人間に近づいてはじわりじわり、一人ひとり追い詰めていく。


 浩一演じる草なぎ剛の横顔は、修羅そのもの。鬼です。怖い。遠くを見る目の冷たさに背筋が凍る凄味を感じます。集中力も演技力も、際立っています。そうした主人公を中心軸として、動きを追っていく典型的な「ストーリーもの」。いったいどこまで相手を追い詰めるのか。手に汗を握りながら視聴者も一緒に「筋道」に乗っかって、ジェットコースターのように滑走していく感覚です。


 一方の『カルテット』は? 冬の軽井沢を舞台に、弦楽四重奏(カルテット)を組む4人の男女−−松たか子満島ひかり高橋一生、松田龍平。もちろん筋立ては用意されています。松たか子が演じる真紀だけが既婚で、しかし夫は失踪しているらしい。彼女が殺したという人もいるが真相は? とミステリアスな話が通奏低音となって響いています。


 しかし、それは「土台」に過ぎない。その「土台」の上に立つ、4人の役者たちが瞬間瞬間に作り上げる空気こそ、見物です。


 やりとり。言葉のからみあい。微妙なズレ。目つき、手つき。一瞬ごとに、相手のどんなリアクションが引き出されるのか。セリフの向こうにどんな唐突な関係がかいま見えてくるのか。ストーリーというよりも、各シーンシーンが鮮やかに立ち上がる。いわば、「言葉の即興劇」という風合い。


 脚本は坂元裕二氏。だからこそ、セリフに他には見られない特徴が。例えば「私とあなたは合わない」といったストレートな説明口調は排除されていて、かわりに「唐揚げにレモンをかけるってことは、不可逆。二度と元には戻れない」。その「レモンするかしないかで、(価値観は)分かれる」といった風に、常に「何かにたとえて」「置き換えて」人間関係を語る。


 村上春樹風レトリック。レイモンド・チャンドラー的言い回し。あるいは人生への洞察を端的な言葉に落としたアフォリズム集。凝った詩的な言葉を、感情を排した棒セリフでぶつけあう。


 かなり「異色」です。が、実はこうした手法、舞台芝居では時々お目にかかる演出。日常の中に非日常の空間を立ち上がらせるのにはうってつけ。しかし、テレビドラマにおいてはアバンギャルドな面白さ。


 画面で思いっきりやられたら、その斬新さにハマる人もいれば、馴染めずに引いてしまう視聴者も出てくるはず。その意味でまさに『カルテット』は、好き嫌いがはっきりと分かれる、個性的な仕上がりのチャレンジングなドラマです。


 と一見、対照的な2つの作品。オーソドックスなスタイルで、筋だてで引っ張っていく『嘘の戦争』と、アバンギャルドに一つ一つのシーンを切り出す、セリフ劇『カルテット』。火曜の夜、2つをセット視聴がオススメ。最強のドラマ世界が楽しめるはず。いかにドラマが多彩で豊かで楽しい娯楽かを思い知る、至福の時間になること間違いありません。

NEWSポストセブン

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