ビートたけしが語る市原悦子さんと樹木希林さんの違い

1月28日(月)16時0分 NEWSポストセブン

市原悦子さんの思い出を語る

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 先日、女優の市原悦子さんが82歳で亡くなった。新刊『さみしさの研究』も話題のビートたけし(72)が、市原さんと共演した思い出について振り返る。


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 芸能界でも「さみしさ」を感じる話題があったね。女優の市原悦子さんが82歳で亡くなっちまった。代表作の『家政婦は見た!』(テレビ朝日系)ってシリーズが有名だけど、普段の素顔も家政婦さながらに「気配りの人」だったようだよ。


 5年くらい前に、松本清張原作の『黒い福音』(テレビ朝日系)ってドラマで共演したことがあってさ。その中で主演のオイラと市原さんの掛け合いのシーンがあったんだよ。


 リハーサルの前に、市原さんはマネージャーにオイラの役をやらせて、ずーっと台詞合わせをしてたんだけどさ。それが、端から見てても真剣そのものなんだよ。


 女のマネージャーがオイラの役(刑事)をやってるんだけど、市原さんは「あなた、もうちょっと刑事らしく喋りなさいよ!」って厳しくてさ。そのマネージャーも必死に男の声色で読むんだけど、そりゃ無理な話でさ。


 で、遠目にそれを見てたらなんだか申し訳なくなっちゃって、市原さんのところに行って、「それならオイラがやりますよ」って申し出たんだよ。


 で、やってみると、市原さんは台詞を完璧に覚えててね。読み合わせは覚えるためじゃなくて、より役に入り込むための作業だったんだよな。恥ずかしいことに、偉そうに練習役を買って出たオイラの方がカンペ頼みで台詞をちゃんと覚えてなかったというオチなんでさ。



 だけど、市原さんと練習したお陰で台詞や役柄がけっこう頭に入ってきてね。結局、オイラが市原さんに稽古をつけてもらったことになっちゃった(笑い)。


 その時の集中力を見て、「やっぱり一流の役者は違うな」って思ったよ。この時期は『アウトレイジ』シリーズでいろんな名優に出てもらったころなんで、特にそれを感じたね。


 しかも市原さんの場合、リハーサルと本番でまた「スイッチ」が変わるんだよな。オイラとのシーンも本番でカメラが回るとまたグッと芝居が良くなってさ。そういうところは、この間亡くなっちまった樹木希林さんと似てるよね。


 だけど、2人は女優のタイプとしては対照的だったと思うぜ。


 2人とも演技中の「間」の取り方が上手いんだけど、その間の使い方がゼンゼン違う。希林さんは共演者が熱演していたら、わざとそこに台詞をかぶせるようにして間を詰めたり、逆になかなか台詞を言わないことで間を外すこともあった。そういうやり方で、相手に実力の差を見せつけるというかさ。


 共演者からするといいところを全部持っていかれちまうから、「怖い役者」だったと思うんだよな。


 市原さんはその逆で、相手の間に合わせるというか、「受け」を重視する役者という気がするね。相手の出方をよく見て、相手役の俳優の演技を引き立ててくれるというかさ。


 絶妙の間で台詞を入れてくれるから、相手も乗ってこれる。2人とも違った魅力だけど、市原さんと演る方がオイラは楽かもな。



 それにしても、日本の芸能界・映画界は替えがきかないいい女優を同時期に2人も失っちまったね。


 オイラもいつ死ぬかわからないんで、それまでにジタバタいろんなことをやっとかないとな。『「さみしさ」の研究』でも書いたけど、葬式で「死んでくれて良かった」って喝采を浴びるくらい、やりたい放題やってやろうかっての!


●取材協力/井上雅義


※週刊ポスト2019年2月8日号

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