天下の愚策・改正入管法、そもそもどの国から外国人が来るのか

1月28日(月)7時0分 NEWSポストセブン

人手不足は移民では解決できない

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 4月から施行される改正入管法(出入国管理及び難民認定法)により、農業や介護などの14業種で外国人労働者の受け入れが始まる。政府は5年間で最大約35万人を受け入れるという。しかし、日本総研主席研究員の藻谷浩介氏は、中国やタイなどアジア各国も少子化で人手不足になることから「そもそもどの国から労働者が来るのか」と疑問を呈する。


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 改正入管法による外国人労働者の受け入れ拡大は天下の愚策であり、人手不足解消の切り札どころか、その糸口にすらならない。2012年末から2018年6月末の5年半で、日本に住む外国人は60万人以上も増えている。それでも人手不足は一向に改善されていないのに、この先35万人を増やしても効果がないのは自明だ。


 しかも近い将来、日本人の働き手はさらに激減する。仮に就業率が2015年の水準のままであれば、就業者数は2015〜2020年に120万人減少し、2020〜2025年にさらに203万人減る。2025年までに計323万人も働き手が不足するのだ。これを補うのに、35万人程度の外国人では到底足りない。


 そもそも人手不足が生じたのは、アベノミクスの成功で雇用が改善されたからではもちろんなく、極端な少子化が原因である。


 日本は過去45年間で出生数が半減したため、新たに就職する若者の数が退職する高齢者を下回り、非正規を含む就業者全体の減少が避けられなくなった。



 第二次安倍政権が発足した2012年から2017年の就業者数を総務省労働力調査で年齢別に見ると、15歳から39歳の若年現役世代は、少子化の煽りを受けて113万人も減少。一方で65歳以上の就業者数は211万人増加した。40歳から64歳の現役世代も162万人増えたが、これは女性の働き手が増えたからだ。


“ひとり勝ち”とされる首都圏(東京、千葉、埼玉、神奈川)でさえ、住民票ベースで2013年に2346万人だった生産年齢人口(15歳〜64歳)は、2018年に29万人減った。一方で、2013年に778万人だった65歳以上は2018年に109万人増加し、そのうち75歳以上が77万人を占める。


 しかもこの先はボリュームの大きい団塊世代が75歳を超えてだんだん働けなくなり、5年間で100万人単位の人手不足が発生する。前述の通り、35万人程度の外国人を受け入れてもこのギャップは埋められない。


 どの国から労働者が来るのかという問題もある。政府は、中国、タイ、ミャンマーなどアジア9か国で、新たに設けた在留資格のために必要な日本語試験を行うというが、実は多くのアジアの国では日本同様に少子化が進んでいる。


 最たる例が人口14億人の中国だ。国連人口部の予測では、2015年に10.1億人だった中国の生産年齢人口は、2020年に9.9億人になり、1440万人減少する。その一方、2015年に1.3億人だった65歳以上は、5年間で3818万人も増加する。中国はこれから日本以上の「老人大国」になるのである。



 国内が人手不足になるのに、中国人が日本に働きに来るはずがない。それどころか、労働力が必要になる中国は、外国人労働者の受け入れに踏み切るはずだ。


 となれば、日中で外国人獲得競争が始まる。日本企業が本気で中国と争い、人手不足を外国人労働者で補うつもりならば、現行の技能実習制度のような奴隷労働は即刻廃止し、賃上げするしかない。それができなければ、潔く廃業して出直すべきである。


 少子化で人手不足になるのは中国だけでなく、韓国、台湾、タイなどアジア各国でもみられる。目立った人口増加国はインドネシアやフィリピンくらいだ。


【PROFILE】もたに・こうすけ/1964年、山口県生まれ。現職・日本総研主席研究員のほか、非常勤で日本政策投資銀行地域企画部特任顧問、NPO法人地域経営支援ネットワーク理事長を務める。『世界まちかど地政学』『完本 しなやかな日本列島のつくりかた』『デフレの正体』『里山資本主義』など著書多数。


◆取材・構成/池田道大(フリーライター)


※SAPIO2019年1・2月号

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