韓国史実最大の謎…『梟ーフクロウー』王朝実録に残された“怪奇の死”に迫る
2024年1月29日(月)19時0分 シネマカフェ
『梟ーフクロウー』© 2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & C-JES ENTERTAINMENT & CINEMA DAM DAM. All Rights Reserved.
朝鮮王朝時代の記録物<仁祖実録>(1645年)に残された“怪奇の死“にまつわる歴史的な謎に、新人監督アン・テジンが斬新なイマジネーションを加え映画化した本作。
映画は、朝鮮王朝実録に“薬物中毒で亡くなった”として記録されたソヒョン世子の謎の死から始まり、その死を目撃したのは盲目の鍼医だったという斬新なアイディアを取り入れることによって、これまでにない没入感満載のサスペンス・スリラーを誕生させた。
韓国では有名なソヒョン世子の死にまつわる謎は、朝鮮王朝実録に記述された次の文章が基となっている。
朝鮮に戻った王の子は、ほどなくして病にかかり、命を落とした。
彼の全身は黒く変色し、目や耳、鼻や口など七つの穴から鮮血を流し、さながら薬物中毒死のようであった。
ー朝鮮王朝実録ー
朝鮮王朝の第16代国王・仁祖(インジョ)の長男が昭顕世子(ソヒョンセジャ)。2017年公開映画『天命の城』(監督は「イカゲーム」ファン・ドンヒョク)でも描かれた1636年の丙子(へいし)の乱で清に降参した朝鮮は、清軍本営で仁祖が“三跪九叩頭の礼”という、3度跪き9回頭を地につける屈辱的な行為で清への忠誠を誓わされ、さらに、長男のソヒョン世子とその家族が人質として清に連れ去られた。
しかし人質として連れ去られたソヒョン世子にとって、清での暮らしは先進的な西洋の文明に触れる機会となり、大いに感化されたソヒョン世子は自分が国王になった際には、新しい文明を祖国・朝鮮にも持ち込みたいと考えていた。
そして、清に囚われてから8年後、解放されたソヒョン世子一家が朝鮮へ帰還すると、清に対し恨みを持つ仁祖は、清で新たな文化に溶け込み、清との友好関係を結ぶよう進言するソヒョン世子を敵視し、スズリを投げつけたといわれている。
やがてソヒョン世子は、上述のような謎の薬物中毒のような症状で亡くなった。その後、残されたソヒョン世子の家族も流刑や死罪に処されたことから、仁祖がソヒョン世子を毒殺したのではないかという説がある。
そんな韓国史実最大の謎、ソヒョン世子の謎の死から生み出された映画にさらに注目したい。
『梟ーフクロウー』は2月9日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開。