世界的に見れば大学入試に偏向的な基準があるのは珍しくない

1月29日(火)16時0分 NEWSポストセブン

経営コンサルタントの大前研一氏

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 大学入試シーズンに突入した。昨年は、医学部を中心に、性別や出身地など、公にされていない基準で入試選抜が行われていたことが次々と発覚し問題になった。経営コンサルタントの大前研一氏は、今こそ、日本の大学入試を転換する好機であると考える。新刊『50代からの稼ぐ力』も話題の大前氏が解説する。


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 いよいよ大学入試が本格化する。


 昨年は東京医科大学をはじめとする医学部の不適切入試が大きな問題となり、文部科学省は医学部医学科がある全国81大学を調査した結果、女子や浪人回数の多い受験生を不利に扱ったり、卒業生の子供や地元出身者を優遇したりしていた9大学を「不適切入試」と認定した。


 過去の入試で合格ラインを超えていた不合格者の追加合格を認めた一部の大学は、今春の募集定員を減らす方針を示したが、文科省は受験生への影響を考慮して定員超過を特例的に認めると発表。追加合格者が44人と多い東京医科大を除く8大学は募集定員をほぼ当初のまま据え置くことになった。


 文科省に不適切入試と認定された大学側は「女性は年齢を重ねると医師としてのアクティビティが下がる」(東京医科大)、「医師や病床数が少ない地域の出身者を優遇した」(神戸大)、「現役のほうが伸びる」(昭和大)などと弁明しているが、なかには意味不明なものもある。たとえば順天堂大は「女子のほうがコミュニケーション能力が高く、男子を救うため補正した」というが、患者の立場からすれば、医師はコミュニケーション能力が高いほうがよいに決まっている。順天堂大の言い訳は、大学と一般社会の常識のズレを如実に物語っている。



 だが、今回の不適切入試問題は、日本の大学入試を世界標準に転換する好機である。世界的に見れば、入試に“偏向的な基準”がある大学は珍しくないからだ。


 たとえばアメリカの私立大学は、ダイバーシティ(多様性)の観点から、男女比率や白人、ラティーノ、ネイティブ・アメリカン、中国系、アジア系などの比率をコントロールしている。単純に入試の成績順に合格させると、人種構成が非常に歪んでしまうからである。


 一例を挙げると、私の母校のMIT(マサチューセッツ工科大学)の場合、何もしなければ理数系の能力に秀でたインド人ばかりになってしまうので、それを考慮して選考している。親が卒業生で寄付金が多ければ多いほど合格できる私立大学も少なくない。州立大学やコミュニティカレッジは地元出身者優先で授業料も安い。


 他の国でも同様だ。たとえばロシアの有名大学は、MITのインド人と同じ理由で、優秀な人材が多いユダヤ人の比率を密かに制限している。マレーシアの国立大学も、放っておくと中華系民族(華僑・華人)やインド系民族が多数になるため、マレー系民族(マレー人やその他の先住民族)を優遇する「ブミプトラ政策」によってマレー系民族を優先的に合格させている。


 日本も、私立大学の場合は、自分たちが欲しい人材を合格させればよいのである。大学が自校のカラーに合った学生や欲しい人材を集めるためには、単純にペーパーテストの点数で合否を決めるのではなく、そうしたバイアスをつける自由度があってよいと思う。


 ただし、入試のポリシーと合格基準をオープンにして透明性を担保しなければならない。


 たとえば私なら、理数系と語学の能力を重視するので、入試では数学と英語の得点を2倍にして他の科目は加点しない、といった基準を設定・公表する。それが嫌であれば、その大学を受験しなければよいだけの話である。



 その代わり、高校までは国語、歴史、地理、生物など全科目をカバーすべきである。それらをしっかり学ぶことは人間形成のために極めて重要だからである。


 そして究極的には、入試の合否の判定は大学の事務局ではなく、弁護士事務所や会計事務所などの第三者が、大学のポリシーと基準に従って行なうべきである。マッキンゼーは新社長を選ぶ際、ディレクター以上の役員の投票で決めるが、そのプロセスは会計事務所に委託している。大学入試も、それと同様の“神聖な仕組み”にしなければならないと思うのだ。総長や事務局などが恣意的に合否を操作するのは、もってのほかだ。


※週刊ポスト2019年2月8日号

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