世界一ミネルバ大学に日本人4人合格「ここ以外想像できない」

1月29日(水)7時0分 NEWSポストセブン

親こそ“学び”が必要な時かもしれない

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 日本の教育システムや大学受験に疑問を感じる若者は少なくない。広い世界に出て学びたいと考え、海外に飛び出す学生もいる。世界中から2万人以上が出願するものの、合格率はわずか1.2%ほどだというアメリカのミネルバ大学がそれだ。


 世界中の成績上位者が集まる大学とあって教育関係者の間では注目の的だというが、ハーバード大学やイエール大学に比べれば、一般的な知名度は低い。


 しかも“大学”であるにもかかわらず、キャンパスは存在しない。すべての授業はオンラインで受講する。いったいどんな大学なのか。同大学の日本連絡事務局代表を務めた経験を持つ、山本秀樹さんが説明する。


「キャンパスがない代わりにベルリンやブエノスアイレスなど世界7都市の寮をまわりながら学生生活を行う、全く新しいスタイルの大学なのです。多国籍の同級生と異国で寄宿生活をしながら、学外の企業や研究所などでのインターンシップを通じ、実践を深めることができます。


 受験料は無料で、パソコンを使ってオンライン上で受けられます。大学進学適性試験であるSATや英語能力測定試験であるTOEFLのような外部試験も不要ですので、受験のための費用はほぼ必要ありません」


 学費は年間約150万円、寮費を入れても約300万円程度で、すべての学生が必要額に応じた財務支援制度を受けられる。


 山本さんによれば2019年は日本人4人の合格者が出たという。海外の最難関大学の合格者なのだから、幼少期から英才教育を受けてきたエリートや、日本よりも外国での生活の長い帰国子女かと思いきや、そうではない。


 今回、京都府の公立高校からミネルバ大学に進んだ1年生の梅澤凌我さん(19才)に話を聞くことができた。現在は、米サンフランシスコの寮にいるという彼は、幼稚園教諭の母と地方公務員の父を持つごく普通の高校生だったという。


「もともと、学校の中でも突き抜けて成績がよかったわけでもなく、むしろ中2の時にモチベーションを失って、学年ビリに近いところまで落ちてしまったこともありました。だけど、中3の時に学校の海外研修プログラムの一環で訪れたハーバード大学の様子に感銘を受け、そこから『何としてでも海外の大学に行きたい』と思うようになり、勉強するようになりました。その過程でミネルバ大学のことを知り、カリキュラムを調べると自分の求めていたものが詰まっていた。“ここしかない”と思ったのが高校2年の終わり頃でした」(梅澤さん)


 この「ここしかない」という気持ちは入学後さらに強くなった。


「もうこの大学以外にいることが想像できません。授業では常に『きみはどう考えるか』という質問が飛んでくる緊張感がありますし、授業はすべて録画されて、後から発言に対してのフィードバックもある。


 知識ではなく、世界で起きている問題をどうとらえているか、問題を細分化する力を伸ばそうとしてくれます。80か国から集まったクラスメートたちは多種多様な文化や価値観を持つ一方で、新しいことや自分のやりたいことに人の目を気にせず飛び込んでいけるような勇気と情熱があることが、共通している。


 勉強においてはもちろん、生活面でも面白いアイディアを思いついたらすぐに実行に移します。授業はオンラインですが、学生同士の交流も盛んです。サンフランシスコには日本人が経営するラーメン屋さんが少ないため、『クラスメートに本場の味を』とチャイナタウンで豚骨や鶏ガラを買い集め、一からスープを作ってふるまったこともありました」(梅澤さん)


 山本さんは彼らをこう評する。


「ミネルバ大学の学生は1年生であっても27〜28才の社会人のように感じるしっかりした人が多い。彼らのような学生が将来、私たちの上司になるのだなと感じたこともあります」


 新しい価値観を持って進学しようとする子供が増える一方で、自分たちの時代を引きずり、旧来の「大学受験」のイメージにとらわれる親や教員も多い。大学通信・安田賢治さんはこう言う。


「オープンキャンパスに親御さんがついてくるのは今や当たり前です。過保護といえばそうかもしれませんが、見方を変えれば、一緒に考えてくれる大人がいるともいえる。しかし、そのアドバイスが時代錯誤では意味がない。たとえば、『名前を知っている大学の滑り止めをたくさん受けなさい』などというのは親の受験時代の感覚。今はそんな時代ではないのです」


 梅澤さんも、「ギャップ」を感じた1人だ。


「高校の三者面談で『海外の大学に行きたい』と言ったのですが、前例がないようで先生にもまともに受け取ってもらえませんでした。『それより東大や京大はどうかな?』と言われるんですよね。こういうことはあちこちで起きているかもしれません。両親は同級生たちの進学先が決まり始めると心配になったようでしたが、最後まで応援し続けてくれました。結局、日本での大学受験はセンター試験だけにとどまりました」(梅澤さん)


 とはいえ、将来子供に後悔してほしくない一心で、口を出してしまいたくなるのが親心だ。自分が経験したことのない新しい大学受験を前に、親はどうあるべきか。山本さんはこんなアドバイスを送る。


「組織のリーダーシップを考えてみてください。かつての日本は終身雇用で“一生面倒を見てやるから、言うことを聞け”が通用した。しかし、今は違う。さまざまな考えの人に共通した価値観を持ってもらい、束ねていく。


そんな度量が必要な時代なのです。それよりも、子供が将来どんなところで、どういう生活をしたいのか、そのためにはどんなルートがあるのかを一緒に考えるのが親の仕事だと発想を変えた方がいい」


 2030年までに全体の3割の仕事がAIに取って代わられるという時代に突入しつつある今、これまでの価値観や勉強法ではとても社会で活躍できるスキルを身につけられないことは想像に難くない。


 根本から勉強し直さないとならないのは、もしかしたら親世代なのかもしれない。


※女性セブン2020年2月6日号

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