東大改革「才能発掘には推薦入試より奨学金拡充が必要」の声

1月30日(木)7時0分 NEWSポストセブン

 東京大学が2016年度より初めて実施する推薦入試の詳細を明らかにした。「点数至上主義から脱却して多様な人材育成を目指す」というのが導入の目的だが、通常の学力レベルでは合格できない受験生たちに、よりチャンスが巡ってくるのかといえば逆だ。


 推薦入試の概要をざっと見渡すと、対象枠は全学部の入学定員3100人のうちわずか100人。各高校から男女1人ずつまでとなっている。また、法学部などでは「成績が学校の上位5%以内」と定められており、進学校といえどもトップクラスをキープしなければ受験資格すらない。


 さらに、TOEFLなど高い語学力や数学オリンピックの受賞歴、ソフトウエア開発経験ほか、より具体的な要件を課す学部も多い。


 11月に受け付けがは始まるこれら超難関の書類審査をパスしても、まだ合格通知は程遠い。その後、12月に面接試験を受け、翌年1月にはセンター試験も受けて8割以上の高得点を稼がなければならないのだ。


「前期試験の合格点とさほど変わらないのであれば、点数主義に変わりなく推薦といえないのでは?」(今年の東大受験生)との声が挙がるのも当然だろう。そもそも、学力以外でもこれほどの才能を持っている学生ならば、はじめから普通に東大を受験しても合格するだろう。


 受験情報に精通する大学通信常務取締役(情報調査・編集部ゼネラルマネジャー)の安田賢治氏が、東大推薦入試の“真の狙い”について話す。


「要するに、これまでとは毛色の違った学生が欲しいということです。近年の東大合格者は首都圏在住の学生がほとんどを占め、出身校も有名国立・私立の中高一貫校に偏っています。もっと地方に埋もれている公立校の“天才”や女子学生、留学生などを合格させて学内を活性化させたいのでしょう」


 ここ数年、国公立大学の人気は復活しているものの、「地方の学生は経済的な理由や安全志向から、東大を受験する頭脳を持っていても地元の国公立大に入る傾向が強くなっている」(安田氏)という。


 しかも、グローバル時代のいま、東大の国際的な評価や東大生の学力の低迷が盛んに叫ばれ、「わざわざ東大に行かなくても……」という風潮も出てきた。ある海外留学予備校の関係者がいう。


「東大の授業料や東京での生活費などを出すくらいなら、ハーバードやエールなど米国の名門大学に留学させたほうが子供の将来にとっていいと思っている親も増えています。これらの大学は学費も高いのですが、日本の大学より授業料免除や各種奨学金が充実しています。


 例えば、ハーバードでは世帯年収6万5000ドル(669万5000円)以下の学生は授業料が全額免除ですし、個別研究に対する企業からの献金・基金も多く入るので、手厚い支援が受けられます」


 日本では有利子で貸与するだけの奨学金も多い中、海外の大学は学生の将来に「投資」する意識が強いといえる。東大も推薦入試より“エリート奨学金”を拡充させたほうが、よほど専門性の高い学生が集まってくるのではないか。


「東大でも世帯年収400万円未満の学生は授業料の全額免除を行っていますが、日頃の成績や研究テーマに応じて奨学金を与えるような制度は乏しい。もっと国や企業が優秀な人材に金銭面でバックアップする仕組みが整ってもいいと思います」(前出・安田氏)


 果たして、東大は推薦入試でどれだけ多才な学生を集め、世界に通用する人材に育て上げることができるのか。

NEWSポストセブン

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