高齢者がペット飼うには、事前準備や家族の介入が不可欠

1月30日(火)7時0分 NEWSポストセブン

介護支援専門員・上級愛玩動物飼養管理士の倉田美幸さん

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 高齢者がペットを飼えなくなる問題が多発しているといわれる今、記者の母(83才)もまさにその状況に陥った。しかも困ってから慌てて里親を探し、つらい別れをさせることになった。私自身、今も悔やんでいる。そこで高齢者介護とペット分野両方のプロ、倉田美幸さんに、高齢者とその家族が知っておくべきことを聞いた。


「ペットの癒し効果はいうまでもありません。動物をなでることで血圧の上昇を抑え、“幸せホルモン”と呼ばれるオキシトシンが分泌されることが知られています。ストレスを緩和し、孤独感を癒す効果もあるといわれています」と倉田さん。


 この効果を生かしたアニマルセラピーも知られている。


「そして介護の現場で見ると、世話をされる側の高齢者にとって“お世話する対象”の存在はとても大きいのです。かわいいもの、守るべきものは高齢者の心には強く刻まれます。私のいた介護施設でも、認知症で嫁や介護職員のことを忘れても、たまに来るセラピー犬のことは孫同様に名前まで覚えていて、反応する人が多かったですね(笑い)。


 ペットのために散歩に行かなきゃ、エサを食べさせなきゃと気持ちが前向きにもなります。認知症などがあると食事や起床時間がいい加減になりがちですが、ペットのおかげで時間軸がしっかりします。また、特に男性は近所づきあいができずに孤立することがありますが、ペットを連れていると気軽に声をかけてもらえ、交流が深められます」


 愛らしい動物たちの表情に心惹かれ癒されるのは、空前の犬猫動画ブームでも明らか。だからこそ、ペットを飼う現実が見えにくくなる側面があると倉田さんは言う。


「ペットはお世話される側。心は癒しても安全を確保してくれるわけではありません。特に高齢になってから飼い始めるのはリスクが高い。飼い主が病気になったり亡くなったりしたら、ペットは生きていけないのです。


 ペットショップなどで販売されている生後間もない子犬もすぐに成長し、世話や散歩などにかなりの体力が必要になります。エサ代、医療費などのコストもかかります。また今は公衆衛生の面から、しつけ、不妊・去勢手術、狂犬病などのワクチン接種を行い、最期まで責任をもって飼育することが高齢者にも求められます。


 最近は犬猫の寿命も延び、15年近く面倒を見ることもあるので、核家族の多い現代は飼い始める年齢も考えなければなりません。高齢者だけの世帯や独居の場合は、事前の覚悟や準備、家族の介入が不可欠です」


 確かに母が若いころには野良犬もいて、飼い犬との境目はもっと曖昧だった。勝手に近所に放つ“行ってこい散歩”もあったらしい。この意識の違いをフォローするには家族の援護は欠かせない。


◆しつけ、避妊、ワクチン。ルールの大切さを知って


 リスクを考えると高齢者がペットを飼うのは難しい。飼いきれなくなったペットが捨てられ、保健所で殺処分になっているというニュースも暗い影を落とす。ただ、「だから高齢者がペットを飼うのはNGだと、簡単に終わりにしないでほしい」とも、倉田さんは言う。



「数世代が一緒に暮らしていた時代なら、さして問題ではなかったのです。高齢化、核家族化の今は、家族はもちろん、地域が高齢者のペット飼育の支援体制を整えることが急務。介護とペットの各分野の専門家がもっと深い知識や情報を共有し、双方が連携してチームで高齢者や家族だけで解決できない問題に手を差し伸べられればと、体制作りを働きかけています」


 高齢や認知症になっても当たり前にペットと暮らし、愛情や意欲あふれる生活が維持できれば理想的だ。


「そのためにも飼う側がルールを知り、守ることも大切。以下は犬・猫の場合です。


●しつけ

トイレ、噛む・吠えるの抑制、飼い主に従うなど、基本的なことは一緒に暮らし始めたら必ずしつけて。初めてなら、トレーナーなどに教えてもらうのがおすすめ。


 しつけられていないと散歩先などでトラブルが起きやすく、また飼い主が通院、入院などで預けなければならない場合、選択肢が狭まります。新しい飼い主を探す際にも不利です。人と共生できる親しみやすい性格に育てることは、ペットを守ることにもなるのです。


●不妊・去勢手術

 不用意に動物の数が増えるのを防ぐためです。飼い主が見つからなければ、殺処分の可能性も。きちんと獣医にかかり、手術すれば、ペットの生殖器の病気を防ぐことにもなります。


●鑑札・ワクチン接種

 ペットを飼ったら居住地の自治体に届け出て登録します。そこでもらえる鑑札(飼い主を特定する証票)を首輪などにつけておけば災害時などに迷子になっても飼い主のもとに帰れる可能性が大。


 犬の狂犬病ワクチンは年1回の接種を。鑑札と注射済票の装着は法律で義務づけられ、ペットホテルなどは、注射済票、鑑札がないと利用できない場合が多いです」


※女性セブン2018年2月8日号

NEWSポストセブン

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