家族を捨ててもいいし、会いたくないなら逃げていい。/『カルテット』第三話レビュー

2月1日(水)21時30分 messy

軽井沢から千葉までって何時間だろう(画像:『カルテット』公式サイトより)

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 今週はすずめ(満島ひかり)の過去と秘密が明かされるらしい、と楽しみだった『カルテット』(フジテレビ系)第三話。いざ放送がはじまると、冒頭からある程度明かされちゃった、すずめの過去です。

 千葉の総合病院に入院中の年老いた男性(高橋源一郎)は、何の病気か知りませんが余命わずか。姪にあたる女性(中村優子)とその息子で高校生くらいの少年(前田旺志朗)が見舞っています。「あいつ、いつ来んのかなあ」とこぼす老男性に、少年は「おじさん、娘に会いたいの?」と尋ね、おじさんは「そりゃあ会いたいさ」と。この男性、すずめの父親なのです。

 父親とすずめは20年以上音信不通と聞き、少年は「その子、Facebookとやっていないの?」と現代の若者らしい提案をし、インターネットで即検索。お節介なほどの行動力を見せ、物語を動かしていきます。

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魔法少女から、魔女へ

 すずめの過去。それは、“超能力少女”として一世を風靡していたこと。もちろん超能力なんてあるはずもなく、父親が娘を利用し「偽超能力」をでっち上げ、テレビ出演させていたのです。すずめは「魔法少女」と呼ばれ人気になりますが、週刊誌に「偽」であることを暴露されました。当然のごとく世間では大バッシングが巻き起こり、すずめは「魔女」呼ばわりされ、テレビ局の人は自殺。父親が詐欺罪で逮捕されたため、まだ10歳前後であったすずめは、親戚の家を転々とすることになります。母親は随分前に亡くなっていました。

 動画サイトには当時の映像があり、幼いすずめはトランプの数字を当て喝采を浴びていましたwakuwakudougaなるサイトにUPされていた動画タイトルは<【90年代動画集③】超能力少女すずめちゃん(TBB「驚きSHOW TIME」)>だとさ。2003年6月18日投稿って……こういうテレビ番組の動画は、UPされては削除され、UPされては削除されのイタチごっこが常なので、UP日は比較的最近にしたほうがリアルなんじゃないかと思いましたが。この動画、息子は女性がすずめについて説明するのを聞きながら、あっという間に見つけていました。ちなみにすずめ、現在は「世吹(せぶき)」を名乗っていますが、以前は「綿来(わたらい)」という苗字だったようです。

 場面変わって雪深い軽井沢の別荘。朝寝坊のすずめは、司(松田龍平)が自分にあてた書き置きを見つけてにんまり。第二話の最後に「愉高(高橋一生)じゃなくて司が好きなんでしょう」と推理した真紀(松たか子)、正解でした。

 ほかの全員が外出し、暖炉の灯る暖かい部屋で一人のびのびしているすずめの元に、ライブレストラン「ノクターン」のアルバイト店員・目が笑っていない美女の有朱(ありす/吉岡里帆)がやってきて、お店で使わないから、と『美人を育てる秋田米』を手渡しました。せっかくなので上がってもらい、ショートケーキとペットボトルのお茶でおもてなし。唐突に「デートしないのか、何で彼氏作らないのか」を問う有朱に、すずめは「告白とか苦手で」と言葉を濁しますが、有朱は「告白は子どもがするもの、大人は誘惑してください」とレクチャーしはじめます。「誘惑とは人間を捨て、猫、虎、雨に濡れた犬のいずれかになること」と冷静に力説する有朱から、すずめは「猫」のレクチャーを受けます(3番目に好きって言っていたもんね)。有朱の戦法では「布団に潜り込んで、はぁ〜疲れちゃった→いつキスしてもおかしくないぞの距離を作るまでが女の仕事(顔同士の距離はペットボトル1本分をキープ)」。女からキスしたら男に恋は生まれません、とのこと。へえ……。

 そんな矢先、例の少年が、すずめを訪ねて「ノクターン」にやってきます。「カルテット・ドーナツホール」HPを見つけてここに辿り着いたようです。サーチは簡単でも、すぐ動いちゃう行動力はなかなかすごい。「あなたのお父さん、もうすぐ亡くなります」と単刀直入な少年は、父親が今日か明日亡くなってもおかしくない状態で娘(すずめ)に会いたいと待っている、だから今から僕と一緒に来てください、と呼びかけます。すずめはこれから仕事だと逃げ去りますが、動揺を隠せません。

 すずめは真紀の義母・境子(もたいまさこ)の指示で相変わらずリビングのテーブル裏にボイスレコーダー設置していましたが、洞察力に長けた女・真紀がテープ起こしの在宅ワークをするようになりボイスレコーダーを使用しているのを見て、慌てて片付けます。それがいいと思います。テーブルの裏って死角かもしれませんが、バレない保証はありません。今までバレずに済んできたのは運がよかったからではないでしょうか。ところで真紀の在宅ワーク、何らかのコネクションでもらった仕事かもしれませんが、もしクラウドワークス的なサイト経由だとしたら報酬、超安いのでは? 現役ライター的には余計な疑問がわきました。でも、真紀のタイピング速度、速いです。

 勘の良い真紀にいつバレるか気が気でないし、カルテットのメンバーと過ごすあの家は居心地が良く、ぶち壊しにしたくない。だからすずめは境子に「もうこういうのやめようかなあって」と切り出しましたが、境子は「ロッカーの鍵持ってんでしょう? お金欲しいんでしょう? 海が見えるところに移してあげたいんでしょう?」「あなたの経歴を見込んでお仕事頼んだの 今から行きます? みなさんにあなたの経歴を話しましょうか?」と脅し、報酬の入った封筒を握らせます。コインロッカーには大切な母親の遺骨が仕舞ってあり、「超能力詐欺」の経歴を誰にも知られたくないという弱みから、すずめは拒絶することができません。真紀の義母、怖いなあ。

 差出人が誰なのかは明らかにされませんが、その夜、カルテットのHPに掲載しているアドレスに一通のメールが届きました。メールには、件の動画(すずめが過去、超能力少女として出演している映像)のURLが添付されており、他の3人はスパムなんじゃないかと話し、まさかその少女がすずめだと気付いていない様子ですが、すずめの動揺は増幅するばかり。深夜、すずめが向かったのは司の部屋。ベッドに潜り込んで「猫」になり、ペットボトル1本分の距離を保ち、司を見つめます。戸惑う司は「どうしました? Wi-Fi繋がらないんですか? 部屋に虫的なもの出ました? ……お腹空いたんですね……(中略)」などと言って立ち上がろうとしますが、すずめは司にしがみつき、胸元に顔を押し付けます。猫云々ではなく、心細さに耐えられないのではないでしょうか。しかし司は戸惑いっぱなしで大した反応はせず、すずめ自ら司から離れ「すいません。Wi-Fi繋がらなくて……ごめんなさい急に、びっくりしましたよね。そういうことするつもりなかったんですけど」と誤魔化し、自室へ戻ります。そして翌朝の別荘に、すずめの姿はありませんでした。

家族じゃなくていい

 誰にも告げず、早朝に家を出たすずめは、チェロを持って軽井沢から遠く千葉の病院まで行ったのでした。病院の前まで来ても中には入らず、ストリートでチェロ演奏をはじめるなど、父の死に目にあう覚悟が決まりません。なけなしの小銭で花束を作り、境子の言っていた「ロッカー」に花を供え、手を振るなどしています。手を合わせるのではなく手を振っているのがすずめらしいと思いました。病院には、まだ、行きません。

 千葉の病院に駆け付けたのは、別荘で留守番をしていて「すずめの父、危篤」の電話を受けた真紀でした。カルテットのワゴン車で、軽井沢から千葉へ急行し、すずめ父の病室にたどり着いた真紀は、図らずもすずめ父の死の場面に立ち会ってしまうことに。すずめに会えないまま、父は息を引き取りました。どれほど親交があったか知りませんが、涙ぐむ少年が、真紀にすずめの過去を明かします。少年はすずめのかつての同僚が綴ったとみられるブログも発見しており、そちらは「偽・超能力少女」となったすずめの生きづらさが窺えるものでした。4年ほど前、小さな不動産会社に勤務していたすずめは、愛想はいいが同僚と必要以上に関わろうとはしない地味な女性社員でした。しかしある時、ひとりの同僚がすずめの名前を検索、「偽超能力少女」だった過去が社内に知れ渡ってしまいます。そういった経験は初めてじゃないのか、今まで通りに振る舞うすずめでしたが、同僚からのいじめが続き、退職。そんなふうにして、居場所を失う経験を繰り返してきたのでしょう。想像以上に重くて暗い、逃れられない過去をすずめは背負っていました。「すずめ」という珍しい名前も彼女にとっては迷惑だったことでしょう。元同僚のブログではつばめちゃん(仮名)となっていましたが、超能力詐欺事件のこと書いたらバレるでしょ。

 こうした話を聞き終え神妙な面持ちで病院から出てきた真紀は、ようやく病院前まで来たずずめとばったり。すずめは、真紀にすべてを知られてしまったのだと悟ります。とりあえず蕎麦屋に入り、動揺を隠したくてはしゃぐ素振りを見せるすずめに、父の死を告げる真紀。すずめは、父親の記憶を滔々と語り始めました。

「昔、父がすごくお世話になってた人がいたんですけど、お金貸してもらったり、たっくさん。ごはんもしょっちゅうご馳走になってた人で。その人があるとき、大怪我で入院したんですよ。なのに、父はお見舞い行かないでうちでテレビ見てたんです。なんで行かないの? ってきいたら、病院で風邪とかうつされたくないからって。ひどくないですか? あと、建築の仕事してたんですけど、30階建てで25階までつくったところで、父がなんか基礎の大事なところ手抜きしてたことがバレちゃって、全部やり直しになったんですよ。それでつぶれた会社とかもあって。でもその日父は、ラーメン屋さんで、スープがぬるいって言って作り直させたんです。ひっどくないですか? あと、母が——」

 真紀は、じっと黙って聞いていました。その父親はひどいし、信頼できなくて普通だし、会いたくないのも自然ですよ。

 「病院……怒られるかな……。ダメかな家族だから行かなきゃダメかな 行かなきゃ」「父親が死んだのに行かないって……」と、本音と常識(=世間)に挟まれて揺れるすずめに、真紀は「行かなくていいよ」「いいよいいよ」と微笑みました。すずめの手をとり「すずめちゃん、軽井沢帰ろう。病院行かなくていいよ。カツ丼食べたら軽井沢帰ろう。いいよいいよ、みんなのところ帰ろう」。受け入れ難いもの(過去、家族)からは逃げればよい、目を背けておいてもよい。安心できる居場所にいていい。こうやって真紀が「帰ろう」と言ってくれたことで、すずめがどれだけ救われたか。

 浮世離れしているような言動が多いすずめの「家族だから」発言は、片想い相手の司が、父親の祝い事のために実家に帰らないと、と話していたことに影響された面もあったのでしょう。だけど司にとっての家族と、すずめにとっての家族は違います。きっと、誰もが違うんです。

 真紀とすずめの蕎麦屋の会話は、もう少し続きます。会話劇の名手、坂元裕二さんはまだ攻めます。

すずめ「(過去を)知られたらカルテット辞めなきゃいけないのかなーと思って。こういう人だとバレたら嫌われちゃうかなあって思って、怖くて。怖かった。みんなと離れたくなかったから」

真紀「(首を横に振り)私たち同じシャンプー使っているじゃないですか。家族じゃないけど、あそこはすずめちゃんの居場所だと思うんです。髪の毛から同じ匂いして、同じお皿使って同じコップ使って、パンツだって何だってシャツだってまとめて一緒に洗濯機に放り込んでいるじゃないですか。そういうのでもいいじゃないですか」

 すずめの「怖かった」「離れたくなかった」は30代にしては幼い発言ですが、これまでの人生において“誰かと仲間になって居場所を得る”経験が少なかった、あるいはまったくなかったのかもしれません。真紀の「そういうのでもいいじゃないですか」という言い回しに、好感を持ちました。「家族じゃないけど、家族なんだ」とかじゃなくて、よかった……。後者だったら、結局「家族は大切だ」に帰結してしまうから。



 軽井沢に帰る途中の車内で、すずめはチェロとの出会いを真紀に語ります。預けられた親戚宅の物置でチェロ(1700年代、ベネツィア生まれ)を見つけたすずめは、白ヒゲのおじいさんに弾き方を教わりました。音大進学したわけではなく(親戚宅をたらい回しにされていたのだから、大学進学という選択すらなかったかもしれません)、独学でチェロを覚えたのですね。何百年も前に生まれ人より長く生きてきたチェロに「ずっと一生一緒にいてね」と約束したこと。公式HPのすずめの紹介文に<すずめにとっては、チェロだけが家族であり友達。>とあるのですが、納得です。

 夜半、別荘に到着すると、愉高と司が建物外壁をクリスマスイルミネーションで飾っていました。一話、二話同様に、司が転倒するシーンもあって、もはやお決まりなのかしら。するとすずめ、司に駆け寄って手を差し出したかと思うと、あっという間にキス。真紀、愉高も目撃していますが、この大胆な行動が彼らの関係性にどんな影響を与えるのか……それはまた、別のお話なんでしょうね。

 第三話はここまで、と思いきや、次週へ続くラストシーンでは愉高がオソロシイ状況に陥りました。放送がはじまると最初から最後まで、とにかく全部目が離せない『カルテット』。まだ三話めですし、謎多き物語がどう転がっていくのか予測がつきません。すずめに限らず、4人は“変えられない過去(ついでに現実も)の自分を受け入れようとせず、逃れたがっている30代”。たとえば第二話で、司が結婚直前の同僚女性と一夜限りのセックスをするだとか、今回はすずめが結局父親に会わないとか、リアルでは「逃げるな」「大人になりきれていない」「人生損している」「いつまでも昔のことにこだわって」「成長していない」「面倒くさい人」とか言って切り捨てる人の多そうな行動ではないですか。

 真紀の「行かなくていい」=逃げていい、大人にならなくていい、受け入れなくていいは、そんな息苦しい世間に一石を投じるものともいえます。むしろ「逃げること」から逃げず、「受け入れないこと」を受け入れ、しかし「イヤなことに目を瞑って常識に従うこと」には抗い、感情から目を背けないことの必要性を、このドラマは学ばせてくれるのかもしれません。そんなわけで、次回以降もひじょ〜〜に楽しみです。本筋から逸れるので触れませんでしたが、ランジェリーとしてのパンツを一枚しか持っていなかった愉高が、急遽調達したNEWパンツがバック部分に「ウルトラソウル」の文字がプリントされたもので、パンイチのお尻を高橋一生さんが突き出すシーンは皆さんの目に焼きついたのではないでしょうか。そんな高橋一生回になるであろう第四話、早くも待ち遠しいですね。

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